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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築
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「誰が私の世話をするのよっ!」

-トントン-

日の出とともにイーリンの部屋の扉がノックされた。 もちろんイーリンは起きず、うるさそうに身じろぎしただけだ。


-トントン-

今度は少し大きな音でノックされた。


「起きなさい。朝ですよ。もう起きる時間なんです」


シスターヴァネッサは 少し大きな声を上げた。 そろそろとドアを開け イーリンを見ると ぐっすり眠っている。 シスター・ヴァネッサは眠るイーリンの体に触れ 優しく揺さぶった。


「起きなさい。もう起きる時間ですよ。起きてください」

「うるさいわね! 私に触らないでよ! 私に命令するんじゃないわよ! あっちへお行き! ムチで叩かれたいの!!」


シスター・ヴァネッサーは困った。そして 修道院長に相談に行った。


「私はどうしたらいいのでしょう?」

「放っておきなさい」

「でもそれでは……」

「朝食を食べられないのも水を飲めないのも あの子はだらしないからです。 あなたが手を貸す必要はありません。命令です。手伝ってはいけません」

「はい、わかりました」


シスター・ヴァネッサは 修道院長の部屋から 日常の仕事に戻った。


イーリンが起きたのは 太陽が高く昇った頃だった。


(体の節々が痛い。 喉が渇いた。お腹も空いたわ)


いつものように呼び鈴で人を呼ぼうにもそんなものはありやしない。


ヒステリックにイーリンは喚いた。


「誰か!誰か来てよ! 喉が渇いたのよ!私の世話をしなさいよ!!」


しばらく叫び続けた頃にシスター・ヴァネッサがやってきた。


「イーリン。どうしたのですか?」

「喉が乾いたわ。お茶を頂戴。 それが終わったら着替えを支度なさい」

「ここではお茶なんてありません。 それにまあ 昨日の服のまま寝たのですか? ちゃんと寝巻きが置いてあったはずです」

「着替えさせてくれる人がいないんだからできるわけないじゃないの!」

「これからは自分で着替えるのですよ」

「あなたがやってよ!」

「私には私の仕事があります」

「じゃあ誰が私の世話をするのよっ?」

「あなたです。 私は致しません」


話し合いの途中からイーリンは声を荒げ始め シスター・ヴァネッサに物を投げつけようとしたが 投げつけられるようなものがない。 ベッドに置かれたままの 昨日の湿った手ぬぐいだけだ。


「これが修道女服です。では一人でお着替えなさい。 終わったら 外に出ていらっしゃい。 私は自分の仕事に戻ります」


イーリンは癇癪起こし喚きに喚いた。 だがいくら騒いでも 喉が乾くだけで 誰も来やしない。 昨日着てきたドレスも、もう寝汗がついて湿っぽい。 嫌だったがシスターヴァネッサが持ってきた修道女服に着替えた。 着替えなど一人でしたことがないので、かなりの時間がかかった。


ますます喉が渇く。お腹も空く。


やっとのことで外に出て また大声を出した。


「シスター・ヴァネッサ!きなさいよ! 水はどこ!?」


「できましたか?」

「水はどこなの?」

「水は外まで汲みに行くのですよ」 シスターヴァネッサは 水瓶を一つイーリンに渡した。


「この水瓶が今日からあなたの水瓶です。 修道院の外の庭に 井戸がありますからそこまで汲みに行くんです」

「なんで私がそんなことをするの ?」

「水を飲まなくてもいいのですか?」


イーリンは 何も言い返すことができなかった。


重い陶器の水瓶を持たされ 井戸まで案内された。


「ここの修道院の井戸は ポンプがついていてとても楽なのですよ」


シスター・ヴァネッサは水瓶を地面に置き ポンプを押して 水の汲み方を教えた。


「この一杯だけ先に飲みなさい」


シスターヴァネッサが汲み上げコップの水を イーリンは奪い取りゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。 口の端から水が溢れていた。


「さあおやりなさい」

「なんで私がそんな重労働しなきゃいけないのよ?」

「水が飲みたくないのですか?」


ポンプを押してみた。 貴族令嬢として育ったイーリンば、 本より重い物を持ったことがない。 たちまち音を上げた。


「できないわ」

「できないでは済まされません。力一杯やるのです」


イーリンは力が尽きるまで ポンプを押して押しまくった。 まだ喉は乾いている。お腹も空いた。力が出ない。 もうボロボロで動けない。イーリンはとうとう地面に座り込んでしまった。


「だいぶ水が溜まりましたね。 このぐらいでもういいです。 ではその水を自分の部屋まで運びなさい 」

「こんな重いものを?無理だわ」

「ではどうするのですか?」

「あなたが持ってよ!」

「それは私の水ではありません」 「分かったわ」


空腹でふらふらしながら 時々 足をもつれさせたりしたが、 なんとか無事に部屋まで水を持ってくることができた。


イーリンと共にシスターヴァネッサが入ってきた。


「あなたは朝寝坊が過ぎます。 日の出とともに起きると言ったはずです。 私が起こそうとしたら鞭で叩くとまで言ったのです。まずすべきことは 天気の良い日は窓を開け換気をする」


シスター・ヴァネッサは言葉通り窓を全開した。少し涼しいが爽やかな風が入ってきた。


「寒いわ!」

「このぐらいがちょうどいいのです。これから布団を干します」

「何で布団なんか干さなきゃならないの?」

「布団は夜のあなたの汗を吸って ベトベトしていますから虫がわきやすいのです。 こうしてお日様にあてることで 殺菌にもなり気持ちよくも眠れるのですよ」


(嫌がらせの嘘っぱちだわ!そんなことするもんですか!!)


イーリンは信じなかった。


「そして掃除を始めます」

「掃除って何なのよ?なんで私がそんな事をしなきゃいけないのよ!?」

「この部屋はイーリンの部屋だからです。 そして 次はお部屋の掃除です 部屋の隅の小さな物置の中に掃除道具が入っています。 このほうきで 板の向きに合わせてソッと床を掃きます。乱暴にするとホコリが散乱しますから。最後に一ヶ所にゴミを集めて このちりとりに入れるのす。それから こうやってゴミ箱に捨てるのです。 ゴミ箱を棄てる場所は後で教えます。それから雑巾がありますか、その雑巾で 棚のあちこちを拭きます。でその次は……」

「待って!まだあるの!?」

「これはほんの短時間で終わることです。始めての掃除には時間がかかるでしょうから、昼食前にまた来ます」


イーリンはむすっとしたまま答えない。

若い時に現れる一過性のものは普通ですか、それ以降も継続するナルシシズム病的です。 特に「魔法の思考」は認知能力を歪めます。 鏡を見て「世界で一番美しい」 そう言う白雪姫のお母さんは 実は病的な方なのかもしれませんね。

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