台所仕事は辛いよ~(泣)
玉ねぎの皮を剥き終わった 4人は、次はサラダにする菜っ葉を洗いに行くように言われた。
噴水の脇に移動してコリンが言った。
「いいですか? 土を落とすのはもちろんですけれども 虫がついてないか よく見てくださいね」
さっとイーリンが青ざめた。
「えっ?!虫がいるの?私虫が嫌いよ! 怖いのよ!!」
マリーが言う。
「私は虫なんてほとんど見たことがありません。 だから怖いかどうかは…」
ナタリー が言う。
「私は田舎育ちで畑もやってたから 虫は大丈夫です」
3人の意見を聞いて コリンが言った。
「虫が食べるということは健康な野菜だということです。 虫が食べるぐらいに元気なんですよ。さあ、 怖がらずにやってみましょ」
やがてイーリンが悲鳴をあげた。
「きゃあーっ!!」
「「「どうしたの?」」」
「虫が虫が虫がぁーっ!!」
ナッパの上に鎮座していたのは5cm ほどの 芋虫だった。
「こういう時は、その部分だけ チョチョイとちぎればいいんです」
コリンは 手慣れた 仕草で虫のついている部分だけ葉っぱをちぎった。
「コリン、 あなた 怖くないの?」
イーリンが震える声で言った。
「この虫は噛みつくわけじゃないし 毒があるわけでもありません。それにさなぎになってからは可愛らしい 白い蝶々になるんですよ」
「いくら チョウチョになるって言っても足がたくさんあるものは嫌ぁー!」
イーリンにはちょっと泣きが入っている。
「まぁ、そのうち なれますって」
コリンは朗らかに笑った。
「私はあんまり苦手じゃないみたい。 いつか 可愛い蝶々になるんならきっと大丈夫」
マリーが言う。
「私はもちろん大丈夫ですよ」
笑いながら ナタリーも言う。
その後も イーリンだけが騒ぎながら 黙々と 菜っぱ洗いは終わった。
「野菜洗いは、こんなに疲れるのね」
そういうイーリンはグッタリしていた。
厨房に戻ると玉ねぎを刻む音がして皆忙しく働いていた。
「さああなたたちは 並べたお皿に一口大に千切った菜っぱを並べて、その上にミニトマトを載せてちょうだい」
あっちが少ない こっちが多い 盛り付けはこういう方が綺麗かな。
あれこれ話しながら 配膳をするのは4人にとって楽しいことだった。
ジャーという音がした。
同時に 香ばしい匂いが立ち込める。
それから 何とも言えない美味しそうな香りが漂ってきた。
『ぐーっ』
誰かのお腹が鳴り響いた。
イーリン マリー ナタリーはハッとした。
イーりんは背筋を伸ばした。
マリーは深呼吸を始めた。
ナタリーはお腹を押さえている。
「あなたたち 働いたからお腹が空いたでしょう。腹が減ったら戦はできぬ。 もう少ししたら厨房は戦争になるから今のうちに食べておきなさい」
厨房長に言われて、 お盆によそってもらったランチを厨房の片隅で4人で食べた。
昼食は玉ねぎとチーズのリゾット 新鮮なサラダ そしてミルクだ。
「「「「美味しい!」」」」
玉ねぎの甘みを吸い込んだライスにチーズがコクと深みを出している。
何とも言えない 優しい 味が 口の中でとろける。
新鮮な野菜が爽やかだ。
とでもとても幸せな時間だった。
「自分で手伝ったお料理ってこんなに美味しいのかしら」←ほとんどしてない。
「厨房長の腕がいいんですよ」
コリンがニコニコした。
「とても優しい味ね。こんなに美味しいリゾット 食べるのは初めて」
感激したようにマリーが言う。
「私も初めてです」
ナタリーも嬉しそうだった。
「ところでさっきお腹を鳴らしたの誰?」
「私です」
コリン の問いに ナタリーが恐る恐る 口にした。
「そういう時は背筋を伸ばしてお腹に力を入れるんですって」
「私は深呼吸するのがいい と聞きましたよ」
イーリンとマリーが言う。
「腹持ちのいいものをゆっくり食べるのが一番いいんですが、ちょっと軽くつまんでおくといいですよ。 でも 腹の虫が鳴ったって 誰も気にしては しませんけどね」
とても愉快そうにコリンがケラケラ笑った。
さて 修道女たちの昼食の時間だ。
リゾットは慣れた料理人が盛り付けている。
その上に少しだけ パセリを散らして サラダ と牛乳と一緒に トレイに乗せてカウンターで渡すのが4人の仕事である。
食前の祈りが終わり 食事の時間が始まる。
あちこちで美味しいと舌鼓を打つ人の声を聞きながら 娘たちは 満足していた。
昼食が終わると持ってきたトレーを一人ずつ受けてる。
「ごちそうさまでした 美味しかったわ」
笑顔で 言われることが嬉しい。
「さて お嬢さんたち、これからが本番です!」
全員が退出した後、腰に両手を当てた 厨房長が声を張り上げた。
「まず食べ残しをバケツに捨てて!皿を積み重ねて 洗い場に運んで 水につけてちょうだい!!チーズがこびりつくとなかなか落ちないんですからね。 くれぐれもお皿を割らないでね!!」
皆は皿を、そして一番 ドジなイーリンは木のトレイを抱えて洗い場に持ってった。
「この皿を洗い桶の水につけて。タワシで綺麗に洗ってね! 洗い残しがないように 一枚一枚 丁寧に洗ってちょうだい!」
マリとイーリンは2人で洗い出す。
他の厨房員は鍋や 台所道具を洗い、 食堂のテーブルを拭き 掃除をしている。
「そこっ!汚れが残ってる!もっと綺麗に洗いなさい!!」
頑張らなきゃと思っても心が折れる。
コリンはコップ洗いでナタリーはトレイを拭いた。
終わった時にはもうイーリンとマリーはヘトヘトだった。
「食事をつくるのって戦争なのね」
「そんなようなものですよ。でも だんだん慣れてきますって」
「これに慣れる…」
イーリンとマリーは顔を見合わせて げっそりした(笑)
キャベツの中に芋虫がいる度に悲鳴をあげるのは私です(笑)




