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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築

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シスター・ヴァネッサの紅茶教室

「さぁ、皆さん。今日は紅茶の淹れ方をお教えしますね」


「「「はい!!」」」


意欲満々の少女たちが一斉に応える。


『大切な誰かの為の一杯を』その言葉は確かに少女たちの胸に響いたのだ。



場所は厨房。昼食と言う戦争が終わった修道女たちはひっそりと賄いを食べている。その片隅を借りた紅茶教室だった。


「世界には数え切れない程の種類の茶葉があり、春夏秋に収穫した茶葉の味わいもそれぞれ違います。ブレンドも様々で、スパイスのブレンドがお好きな方もいらっしゃいます」


「「「ええっ?!」」」


「ん? イーリンは何度もお茶会に出ているはずですが?」


「私は主催者の方にに勧められた普通のアールグレイが多いですから」


「前回喜ばれたものを覚えていてまたお出しする。立派なおもてなしですね。でも毎回同じではなくファースト、セカンド、オータムンの違いはあったと思いますよ」


「わかりませんでした」

イーリンはちょっと青くなった。


(みんな同じ味に思えたわ。それにもしいつか私がお茶会を開いたら、人の好みを全て頭に叩き込むの? できるわけない!)


「この国で一般的に飲まれるのは、たっぷり牛乳を入れたミルクティーです。これはミルクに負けない香りの茶葉で、例えばアールグレイで淹れます。

でもストレートとして飲むならば茶葉本来の味わいと香りを大切にします。

柑橘類を垂らせば鮮やかな色に変わり爽やかさが楽しめます。

ジャムを入れて飲む方もいます。

皆さんはどんなお茶がお好きですか?」



「お茶の時間にはお菓子とストレートで、寝る前にはちょっと甘いミルクティーを淹れてもらいます」


「ミルクティー以外は飲んだ事がありません」


「私はミントやレモングラスやローズヒップのお茶を淹れてました」


マリーの言葉に我が意を得たりとシスターが頷いた。


「紅茶にはドライフラワーやドライフルーツを混ぜることがあります。スパイスを入れたものは好みがあるから機会があったらにしましょう」


(((紅茶の世界は奥が深い)))

三人娘は思った。


今までなんとなく飲んでいた紅茶にこれ程の勉強すべきことがあるとは。


「昨日はスコーンに合わせた甘さ控えめのミルクティーをお出ししました。お菓子と紅茶が合わさって口の中が蕩けるようだったでしょう? もっと甘いお茶菓子ならストレートがいいかもしれませんね」


三人娘はひたすら聞き入るのみである。


「さぁ、本番です。紅茶を淹れる上で一番大切なのは火傷をしないこと。熱湯は危険です。わかりましたか、イーリン?」


「はぃっ! でも何故私だけ??」


「イーリンが一番そそっかしそうだからですよ」


「ひどいです! 私はそそっかしくないです!」


マリーとナタリーはクスクス笑い、イーリンは頬を膨らました。


「でも本当に気をつけてね」


「……はい」



「そしてポイントは三つ。

勢いよく入れた汲みたての水を使うこと。

沸かしたてのお湯を使うこと。

最後に濃いお茶は薄くできるけど、薄いお茶は濃くならない。これが一番大切なことです!!」


「「「はいっ!」」」


「それでは皆さん。私が指導するから早速淹れてみましょう! 水は汲んでおきました。ヤカンを火にかけますね!」


皆でヤカンを観察する。


「さぁ、耳をすませて。ヤカンから少しずつポコポコする音が聞こえてくるでしょう?」


「わぁ! 本当だわ!」

イーリンがビックリした。


「そうしたらもう湧いているお湯でポットとカップを温めます。充分温まったらこちらのお湯は捨てます」


ヤカンの音が大きくなってきた。


次にシスター・ヴァネッサは素早くポットに茶葉を入れた。


「そしてボコボコと一番大きな音になるのを待ちます。さぁ、今です。ポットをヤカンの側に持っていく。ヤカンを傾けてポットに注ぐ。火傷に気をつけるのよ!!」


シスターはポットをテーブルに運びカバーをかけた。


「紅茶の温度を下げないようカバーをして、茶葉に合わせた時間蒸らします。茶葉の状態で3分から10分くらいです」


「シスター! 何故そんなに蒸らす時間が違うんですか?」


「細かい茶葉は3分でも良いけれど葉が一枚そのまま入っていたら5分ではまだ足りないわ。今日は細かい茶葉ですよ」


蒸らし終わった紅茶を茶こしを使ってカップに回しながら注いだ。


「シスター! 何故回しながら注ぐんですか?」

興味を持ったマリーがきいた。

 

「良い質問です、マリー。濃さを同じにする為です」


そしてシスターはティーカップに紅茶を最後の一滴まで注ぎ切った。


「紅茶の旨味は奥の方に隠れているんですよ。最後の一滴がゴールデンドロップです」


そして三人娘の前に置いた。


「まず香りを楽しんで下さい」


「……いつもの香りよりキツい」

「……いい匂いだけど濃い」

「……薬みたい」


手元のティーカップからは確かにいい匂いがする。しかし濃くて渋そうで苦そうだ。


(((これを飲むの?)))


「こちらにお湯用ポットがありますからね。まずは紅茶に好みの濃さになるよう足します」


少女たちが一口飲んだ後にシスターは小皿を取り出した。


「そしてこちらはバタークッキーです。お茶うけにどうぞ」


「クッキーだけならくどいけど、紅茶でさっぱりするわ」

「甘いクッキーです」

「美味しいです」

イーリン以外の二人は甘いお菓子などそうそう食べたことはない。香ばしいバターの香りや、サクサクしながら舌に載せると蕩けるような食感に夢中になった。


「二人とも子供みたい」

パクつく二人を見てイーリンがクスリと笑った。


「あらあら。イーリンはもう大人だからクッキーなんて子供っぽいものは要りませんね?」

「意地悪です、シスター! 私も子供だからクッキー要ります!!」


シスターが用意したバタークッキーは三人娘によってあっという間に空になった。


「どうですか? いくらでも食べてしまえるでしょう」

空の器を見ながらシスターが笑う。


みんなのティーカップが空になったのを見たシスターは、カップを片付け、次のミルクティーを淹れた。甘みは仄かに、それからドンっとマグカップに入れて。


(((これがいいのよ)))

皆の顔が綻ぶ。


「やっぱりチマチマ飲むのはのは性に合わないわ」

「あらあら、イーリン。あなたは貴族令嬢ではなかったかしら?」

「もう、ここに慣れてしまったわ。それに帰る時に一夜漬けするからいいのよ」


イーリンの言葉に皆が笑った。


「次は皆さんで院長に淹れてみましょう」


「「「え〜っ!!」」」


一斉に抗議の声をあげた三人娘。それはハードルが高すぎるだろう。


「冗談です。お互いに淹れて練習する所から始めましょう」


「お願いですから心臓に悪い冗談をサラッと言わないでくだい」

口に出したのはマリーだが、イーリンとナタリーもお願いをしていた。


「せめてもう少し慣れるまで」

「いえいえ。自分たちが納得できる一杯を淹れられるまで」


「わかりました。来週の礼拝堂の床掃除の後に、修道院の皆様に振る舞いましょうね」


ニコニコとシスターは去って行った。


「えっ! 皆様って誰?!」「皆様って修道女全員?!」

「無理無理無理〜!!」


後に少女たちの絶叫が響いたとか何か。

紅茶を書くのは難しいですね。


ジャンピングは日本の造語と書いてある文献を読んだら、ちょっとどうしたらいいかわからなくなりました。


飲み方は水出し紅茶やインドのチャイなどもありますが、濃く淹れてお湯や牛乳で割るというのが世界的なシステムらしいです。


まぁ、とりあえず火傷をしないことが一番です。


私が今飲んでいるのは和紅茶で、いつか高地栽培の高級品にもチャレンジしてみたいなぁと思いました(笑)

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