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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築

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28/35

袋叩きは公開で

残念描写か残酷描写があります。

ガラントの裁判は王城前広場で行われた。傍聴人は多く普通の裁判所では入りきれない。裁判の経過によっては暴動が起きる可能性もある。群衆の最前列には紐が張られ、あちこちに騎士が配備され物々しい雰囲気である。


一段高く作られた裁判席の周りには、更に幾人も騎士たちが配置されていた。


そこにガラント夫妻が連行されてきた。身体を拭い衣服を整えていても、そのやつれは隠せない。更に縄で縛られた姿に観客は少し溜飲を下げた。世論の力は強く、ガラントへの憎しみが民衆の中で募っていたのだ。


一方ガラント夫妻は津波のような群衆に、そしてその群衆から放たれる悪意に顔色が変わった。


「なんでこんなにたくさん人がいるの!?」

「落ち着け! 俺達は無実なんだ!」


厳しい表情の初老の裁判長が小槌を鳴らした。


「静粛に!! これより元ガラント商会会長夫妻の裁判を開廷する。被告人は無罪を申し立て、原告は無期懲役を求刑している。まず原告側の主張を」


痩せた中年男性が立ち上がりガラントを非難する弁論をした。


「次に被告側の主張を」

「ありません」


ガラントの弁護人が言った。


これに慌てたのはガラントだ。


「待てよ! それは裁判じゃない! 単なる断罪だ! 弁護人がやらないなら俺がやる!!」

「そうよ! 不公平よ!!」


裁判長が鋭くガラント夫妻を見た。


「被告人からの異議申し立てを認める。では被告側からの主張を」


「裁判長。俺は無罪です」


聴衆からブーイングが起きた。


「うるせぇっ!! 俺は商売人だ! 金を稼いで何が悪いっ!?」


「静粛に! 法廷は無法地帯ではない。沈黙できない者は退場処分とする。被告人は野卑な言葉を使わないように」


「……わかりました」


威圧と恫喝を得意としてきたガラントには、はっきりと苦手な舞台だった。


次々と待機していた証人たちが進み出た。


それに答えるガラントの声には弱く力ない。徐々に旗色は悪くなり焦るばかりである。


「古参近衛隊 サム近衛隊長」


その名に進み出たのはサムだ。


近衛騎士のロイヤルブルーをまとい、凛としたサムの姿に聴衆がざわめいた。


反対にガラントはカッとなった。


「この野郎! 下男の振りなんてしやがって俺を騙したなっ! 忌々しい! てめぇがいなけりゃ!」


ガラントの胸には悔しさが溢れていた。


サムが最初から騎士服を着ていたら、自分たちは引き下がった。


院長が王族だと教えてくれていたら、丁寧な言葉を使い決して暴言など吐かず引き下がったはずだ。


それは妻も一緒である。


「この豚野郎っ!!」

独房の中で恨みつらみを募らせていた。


その対象がやっと目の前に現れたのだ。


縄で縛られていることも忘れ、思わず飛びかかろうとしてすぐに転んだ。


それを見た聴衆は嗤った。


その嘲笑に更なる屈辱感が増す。


「罪人たちよ。お前たちは人を見ず、服に頭を下げるのか?」

朗々と響く静かな声でサムが語る。


「人を尊ぶ気持ちはないのか? 我が子を愛する心はないのか? 殴られた相手が傷つくこともわからぬのか? 傷つけられた者たちは、未だ生々しく傷口から血を流しているというのに?」


声は次第に大きくなり人を責める口調になった。


これは断罪の場だ。


正義を体現する騎士が罪深き者を裁くのだ。


耳をすませる聴衆は一人残らずそう信じた。


「この期に及んでその態度。お前たちには自らを省みる心はない」


サムは裁判長に目を合わせた。


「裁判長。私はこの目でマリーを脅し連れ去ろうとするガラント夫妻を見ました。怯えても逃げることを許されないマリーを、庇おうとするティベリア殿下を見ました。私が止めなければ殿下は殴られ傷ついていたでしょう。ためらわず弱者をいたぶる者達を許してはなりません。

裁判長。どうか厳正な裁きをお願いします」

「裁判長。俺は悪くない」

「裁判長。私達は無罪です」


裁判長が小槌を叩いた。


「判決! 被告ガラント元商会会長夫妻を有罪とする」


ガラントは息をのんだ。


罪状は児童虐待、保護責任者遺棄罪、騒乱罪、暴行未遂、未成年者略取誘拐罪、不敬罪。

そして商会の不正が加えられだ。


「被告人ガラント夫妻を鞭打ち100回、終生の護岸工事従事とする。なお判決と執行は即時行われる」


サムが視線を送ると、騎士たちはすぐに二人の背中を聴衆に向け手首を固定した。


「何をするんだ?! 止めろっ!!」

「私を誰だと思ってるのっ!! 止めなさい!!」

いくら喚こうと誰の耳にも届かない。


サムは聴衆に向き直ると声を張り上げた。


「我らは古参近衛隊。修道院長たるティベリア殿下をお護りする近衛隊である。

私は隊長のサム・レイノルズ。

来る日に、この罪人二人は、徒党を組んで修道女を脅かし、殿下を侮辱し、殿下の庇護する少女を誘拐せんとした。

全て我ら古参近衛隊が防いだが、このようなことが二度とあってはならぬ。

余罪も数多ある。

皆の者! その目でとくと見よ!!

人の痛みを喜びとする者は、自ら破滅の痛みを味わうといい!!」


歴戦の古強者が高らかに正義を叫び悪を断罪するのだ。


脛に傷持つ者や裏社会で生きる者達はゾッとした。


「始めよ!!」


烈帛の気迫が地獄の始まりを告げる。


ビシッ!!

「うぉぉぉぉぉ!!」


ビシッ!!

「きゃぁぁぁぁぁ!!」


ビシッ!!

「痛い! 止めろっ!!」


ビシッ!!

「痛いっ! 痛いわっ! 止めて!!」


ビシッ!!

「止めてくれ! 許してくれ!!」


ビシッ!!

「もうしないっ! もうしないから助けてぇ!!」


ビシッ!! ビシッ!! ビシッ!!


痛みを訴える悲鳴も、許しを請う哀願も、助けを呼ぶ声も、もはや執行者たちには届かない。


これは裁きなのだ。


執行人は粛々と任務をこなすのみ。


犯罪者二人は、鞭打ち100回が終わる頃には、ただ意味不明のうめき声を漏らすだけの頭陀袋のようになっていた。


捕縛された日に着ていた豪奢な服はビリビリに千切れ、殆ど肌着だけの姿に肌はミミズ腫れが埋め尽くしている。


声をあげる者すらなく、聴衆は水を打ったように静まり返っていた。


「心して聞け! 弱きもの、力なきものを虐げる輩は我らの怒りを買うであろう。また、非道な仕打ちに泣く者は我らに訴えよ。必ず耳を傾ける。我らは、正義を奉じる王家に忠誠を誓う者たちである!!」


気圧された広場のあちこちから一つ二つと拍手が始まり周囲に広がり続け、歓喜の叫びと万雷の拍手となった。


「「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」」


『古参騎士』を讃える大声があちこちで叫ばれ、最後にシュプレヒコールとなる。


サムは、応えるように片手をあげた。

鞭打ちはよく聞きますが、『カバ丸』でマジックハンドの代わりに使われてたイメージしかありません。調べました。


普通に売っているのは乗馬鞭で、皆さんの思い浮かべる鞭はネットの片隅に5500円で売ってます。


痛そうに見えません(汗)


動画を見ました,鞭学習動画です。


更に痛そうに見えません(汗)


見世物なら面白いけど武器としては?


ダウンジャケットを着るから、ちょっと私に打ってくれないだろうか?


トゲ鞭というのもあるそうですから、実際に刑罰に使うなら種類が違うのかもしれませんね。


囚人服は薄いから傷つかないように厚着して、公衆の面前で下着姿になってください。暴力をふるい慣れている人間は痛みに弱いという話を聞いたことがあるので、それを活かしてちょっとヨレてます。


引用文献


 「この豚野郎!」ソフィア・ローレンの映画

 「判決と同時に量刑は即時執行される」ハインライン

 「他人の苦痛を喜びとする者は、破滅の訪れを見るがいい」もじりで『魔術師の帝国』だったような。



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