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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築

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24/35

ヒーローたち登場!!(ちょっとマリー視点)

「「サムっ!!!」」

私と一緒にイーリンも叫ぶ。


私が打たれるのを止めた、逞しい腕はサムだった。


いつの間に部屋にいたのだろう?


入ってきたことにすら気付かなかった。


今のサムは、ズングリした父よりずっと背が高く大きく立派に見える。


普段は気づかなかったが、サムの立ち姿一つには一分の隙もない。


巌のように確かな存在感があった。


いつも皺深い顔に優しい笑顔しか見たことがないので、始めは別人かと唖然とした。だがそれは、イーリンも同じだったようだ。


サムのこんな顔を見るのは始めてだ。


力無き者への暴力など許しはしない。


そんな気迫に溢れている。


サムは掴んだ母の手を無造作に振り払った。


「きゃぁっ!!」

さして力を込めたようには見えなかったが、母は吹き飛んで尻もちをついた。


「妻に何をするっ!! 卑しい下男風情がっ!!」


青筋をたてた父はサムに殴りかかった。


サムは、いつも畑仕事で見かける野良着だった。


両親は外見だけで、サムを下男だと判断したんだ。


私の世界の中でサムは最高に素晴らしい人なのに?


たかが服だけで?


最高の笑顔と、最高の知識と、最高の心でマリーに相対してくれたのに?


両親への価値観がピキピキと音をたてた。


私も使用人たちも両親から殴られることに慣れてる。


だから、必要最小限の被害で済むように受け身を心がける。


だが、抵抗しない人間ばかり殴ることに慣れてた父は違う。


武道の心得一つない父は、サムの軽い手刀を受けて崩折れた。


「ぐぐっ! 痛い…。腕がっ! 俺の腕がぁ!!」


「安心しろ。骨は折れてない。数日冷やせば元に戻る」


(……無様だ……)


「この俺に下男が手をあげるなぞ……お前など牢屋行きだ!! 背中の皮一枚剥がれるほど鞭で打たれたらいい。手当てもされなんだぞ! 傷が腐っていく痛みにずっと苦しむがいい。一生日の当たらない場所で、自分の愚かさを反省するんだなっ!!」

口元に泡を蔓延らせながら父親が言う。


(……醜い……)


「それは、こちらが言うことだ。お前はあまりに世間知らずで、牢屋がどういう所かも知らないようだな」


「五月蝿いっ!! もうすぐ金で雇ったゴロツキ共が来る! 多少爺が強かろうと多勢に無勢だ。若い者達には勝てまい! 邪魔な女諸共ズタボロにしてくれるわっ!!」


(……私だけじゃなくて、ここにいる全員を殴るの?……最低だ……)


サムの視線に殺気が交じる。


「修道女たちに、そんな非道を働いて、ただで済むと思っているのか? 牢屋に行くのは自分たちだろう」


「乱暴狼藉を働くのは、あのゴロツキ共だ。俺じゃない。俺は行方不明の娘を取り戻したいと願った哀れな親だ。俺達は単に娘を躾ようとして下男に暴力を受けた被害者だ!」


「法の裁きの下でも同じことが言えるのか? それが信じてもらえるとでも?」


「俺には名前と権力がある。こんなこともあろうかと、役人にたっぷり鼻薬を嗅がせてあるさ!」


「ほう? どこの小役人だ?」


「お前如きに言う必要はあるまい。せいぜい首を洗って待つがいい」


父親の顔は復讐心と、それが満たされるであろう愉悦に歪んでいた。


母親の顔は増悪と侮蔑に歪んでいた。


眼前のサムを侮り、どうせ勝つのは自分達だと信じている。


(……こんな人たちを、親だからって慕ってたんだ……)


いつものマリーなら怯えるだけだった。


だが今はサムが助けてくれる。


サムは、とても怒っていた。


両親に向ける威圧が、その背からも感じ取れる。


だが、その背中は誰一人傷付けまいと守り抜く意思に溢れている。


(……安全なんだ。……私は安全なんだわ。私を守ってくれるサムを信じる。私を守ってくれる院長やイーリンを信じる。……私は信じるわ!……)



「もう、いいでしょう。サム隊長」

サムの背中に院長が語りかけた。


「はっ! 殿下」

その声にサムが一歩引いた。


(……殿下って誰?……隊長って何?……)


「もう出ていらっしゃい、ルドルフ副隊長!」


いつも優しい院長の口調は少し厳しかった。


その言葉と共にゆっくり扉が開かれ中年の男性が歩み出た。


「ルドルフ伯爵っ!!」

イーリンが小さく叫んだ。


ではこの人が私を妾に欲しがった人?


ちょっと視線が冷たくなるのは致し方ない。


「私はロリコンじゃないっ!!」

マリーとイーリン二人分からの冷気を感じたのか、伯爵は慌てて言った。


(そういえば、それは単なる口実だとクレメント様から言われてたのに忘れてたわ)


マリーはちょっと反省した。


「ルドルフ伯爵!? あなたのせいだっ!!」

だが、それで収まらない父が叫んだ。


「マリーを妾にするからと、支度金の他に商会の優先契約を結んでくれる約束だったはずだっ!!」


「それは部下の舌先三寸で、実際の約束はしてないはずだ。私は良心に恥じることなど何一つしてない」

押し殺したような静かな口調でルドルフ伯爵が言う。


「あの時の書類は正式なものとして法的機関に提出し受理されている。金貨しか見なかったのか? マリーの親権は既にあなた達から離れている。書類にきちんと書いてある。あなた方もサインしたはずだ」


(じゃあ、じゃあ。もう、あんな人たちを家族と思わなくていんだ!!)


「マリーは私がお腹を痛めて産んだ娘よ! 一生懸命に躾た私の娘なのっ!!」

「そうだ! 俺の娘なんだっ!! どんなに教育に金をかけたと思ってんだ! あんな端金で取られてたまるかっ!!」


床を尻もちをついたままの母と、腕を押さえて苦痛の表情を浮かべながらがなりたてる父。


わずかに残っていた両親への思慕が音を立てて崩れ落ちた。


「入って来なさい。アーノルド」

扉を振り返ったルドルフ伯爵が声をかけると、ちょっとだけ大人になった、でも変わらず穏やかそうな青年が現れた。


「……アーノルド叔父様! 叔父様! 会いたかった! ずっとずっと会いたかった!!」

マリーは駆け寄って飛びつき抱きしめた。


その傍らでイーリンがもらい泣きしていたのは言うまでもない。


「マリーの支度金を払ったのはアーノルドだ。給料をコツコツ貯めてな。今のマリーの親権はアーノルドにある」


ルドルフ伯爵が高々と掲げた書類には、確かにアーノルドの名前があった。

あなたの望むヒーローが書けたでしょうか?


何故こうなったという答え合わせは次回です。

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