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手を繋いで一緒に行こう  作者: 那由他
イーリン 心の再構築

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10/35

トラウマと復讐心と破壊衝動

3回書き直してみました。

畑に苗を植えてからイーリンは自分の周りを改めて見渡した。今までただ生きていくことだけに無我夢中で、周囲のことなど何一つ見えていなかった。


中庭に出ると、かぐわしい薔薇の香りが鼻をくすぐった。香りをたどって歩き出した先にはいつも使う噴水があった。周辺には春咲きの薔薇が、色とりどりに咲き始めていた。


(ここは小さな薔薇園になっていたんだわ。私の家と比べたら貧相だけど、見られないこともないわね)


しばらくあちこちの赤や白やピンクの薔薇を見ていた。そしてふとその中にオレンジの薔薇を見つけた。


(……エスターの好きな薔薇……)


夢遊病者のようにフラフラと、イーリンは薔薇の元に歩み寄った。


イーリンの頭の中で、思い出したくもない嫌な記憶が断片的に写し出された。




-エスターと初めて会った日-


馬車の中で幼い自分に父が語りかけている。


「いいかい、イーリン。今日訪ねるのは僕の兄上の屋敷だ。兄上には綺麗な奥様と二人の子供がいる。アーチーボルトとエスターだ。エスターはイーリンより一才上で年も近いから仲良くなれるね」


三時間以上かけて到着したその舘は、イーリンの屋敷よりずっと大きかった。


ずっと美しかった。


ずっと広い庭に鮮やかな花々が咲き乱れていた。


紹介された従妹は綺麗な銅色の髪をしてた。


フリルだらけのイーリンのドレスよりも、ずっとセンスの良いドレスを着ていた。


貴公子のような兄がいた。


エスターと兄は仲良く笑っていた。


イーリンは一人娘で、甘やかしてくれる兄などいない。



今まで世界一幸せだと思っていた砂糖菓子でできたイーリンの箱庭が、ガラガラと音を立てて崩れていった。


(私は世界で一番幸せじゃない。この子は私よりずっと幸せなんだ。世界で一番可愛いんじゃない。いい家に生まれたからってだけで、この子は全部手に入れて、こんなに恵まれて……)


あれほど誇りに思っていた家も庭も両親に溺愛される自分も、全てエスターに劣るものでしかない。そう考えると全てが色褪せて見えた。


(お父様の爵位が低いから私は劣るものしか持てないんだ)


素敵な兄がいるのが妬ましかった。


自分より美しいエスターの顔も妬ましかった。


上質な生地を使ったシンプルなデザインのドレスは大人っぽく見えて、フリルのついた子供っぽい自分のドレスをイーリンは嫌悪した。実際にはよく似合っていたが。


イーリンはエスターの全てを嫌った。


だが、父や母の見ている所で嫌いだと騒ぐ訳にはいかない。精々愛らしく挨拶した。


「始めまして。イーリンです。仲良くして下さいね。アーチーボルトお兄さま、エスターお姉さま」


それからイーリンはよく癇癪を起こしてメイドにカップを投げつけたりするようになった。




-王家主催の茶会でフリードリヒに恋した日-


王太子と年の近い令息や令嬢達が数多く集められていた。側近や婚約者にというよりも、先ず子息達が場に慣れる練習場である。


だが、地位を望む者は数多い。


未来の側近候補に選ばれたい。栄達を望む者は緊張した。令嬢達は我こそが未来の婚約者にと頬を染めて興奮にさざめいている。


イーリンもその一人だった。


フリードリヒはまだ11才だが、既に王族としての気品を兼ね備えた完璧な王子さまだ。金茶の髪にマリンブルーの瞳に端正な顔立ち。いつも穏やかな笑みを浮かべている理想の王子さまだ。フリードリヒを手に入れたら高い地位も名誉も富も全てが手に入る。


イーリンも、人垣をかき分け王太子フリードリヒに近づこうと一生懸命だった。


(欲しい。欲しいわ。私はフリードリヒが欲しい)


フリードリヒの目が一瞬イーリンと合い、すぐに視線は逸らされた。


(フリードリヒ様が私を見て下さった)


イーリンは歓喜に震えた。




-婚約者決定の知らせに打ち砕かれた日-


フリードリヒと会えることを楽しみにしてきた。


婚約者候補にと選別された令嬢達一人一人と会っているらしいが、すぐに自分の順番がまわってくる。


自分を目にすればわかるはず。


先日のお茶会で見初めた少女だと、


見つめあえば、きっとすぐに恋に落ちる。


(あの時は人前だったから私に声がかけられなかったのよ。私以外を選ばないわ。だって私を待っていて下さるんだもの)


そんなイーリンの耳に、エスターが婚約者に選ばれたとの知らせが入った。


イーリンの目の前が真っ暗になった。




-フリードリヒの婚約発表のパーティ-の日-


まさかまさかと思いながら来たイーリンが見たのは、フリードリヒに寄り添い頬を染め嬉しげなエスターだった。


イーリンの世界は、またも粉々に砕け散った。


(家の爵位がエスターと同じくらい高かったら隣に並んでいたのは私だった。私の方が愛してる。私の方が相応しい。たかが地位に負けたんだわ。……悔しい。妬ましい。ただただ憎い)


妬んで、妬んで、妬んで……


……妬み以外の何も見えなくなって……。


(何も見えない。何も聞こえない)


目に写るのは嫉妬という名の業火だけ。


復讐と破壊をと叫ぶ怨念の声だけ。


(壊してあげる。あなたが持っている全てを壊し尽くしてあげる。フリードリヒ様は私のものよ。必ず返してもらうわ)

一回目は花の咲く時季を間違ってボツに。

二回目はいい雰囲気になったけど、if 修道院ルートのエスターになってました。

イーリンが表面的に改善したように見えても、根底にトラウマがあれば必ずフラッシュバックして、その時の精神状態に戻るでしょう。

洗脳して抑え込んで上書きするのは楽ですが、心が歪になり社会性も損なわれますね。

ナルシシズムとパラノイアを隠し味(隠してない)に入れました。

精神科医の定義するモラハラ加害者の心理基盤を表現できたでしょうか……。

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