結婚するのは誰やねん?
まずは、お父様の外出許可の説得からと思いレオン君を引き連れて本邸の応接室に駆け込んだ。
ノックと共に足を踏み入れた私とレオン君に応接室で談話中のお父様とレオン君のご両親の視線が向けられる。
「お父様! お願いがあります」
「どうしたマリア。そんなに慌てて」
そう言うお父様に訳を話そうとした所で後ろから追いついたアンドレお兄様が割って入ってきた。
「マリア! ダメだ! そりゃ僕だってレオン兄は本当の兄のように慕ってはいるが、それとこれとは話が別だ。例え、マリアがレオン兄の事を好きでも結婚はまだ早い!その手を離しなさい!」
そう言うとレオン君と繋いでいた手を引き離した。
け、結婚?
「なに?! 結婚だと?! それはどういう事だ!」
いやいや~それは私のセリフだよ!
どっから湧いたその結婚話?
結婚願望が強すぎてとうとう幻聴が聞こえるようになったか?
「レ、レオン、どういうことなんだい? マリアお嬢様と結婚なんて」
ヘンリーさんが困ったようにレオン君を見ながら言った。
「そ、それが、マリアお嬢様に僕のこの先の人生を下さいと言われて…」
「まぁ、そんな熱烈なプロポーズをマリアお嬢様がうちの息子に?」とリンダさんが目を丸くする。
ぷ、プロポーズ?!
な、な、な、なんで?!
ちがーう!!
誤解だよ!
「それと、僕のそばを離れないとも言われました」
げげっ
た、確かに言った。言ったよ!
キャー
改めて聞くとすごいセリフだ。
待って、待って、さっき私、何て言ったけ?
『あなたの人生私に下さい。どんなに嫌がってもそばを離れないのでそのつもりでいて下さい』
わお!
本当だ、熱烈なプロポーズに聞こえなくもない。
しかも、『どんなに嫌がってもそばを離れない』なんてヤンデレ発言にしか聞こえないではないか。
嫌いな奴から言われたら鳥肌モンだ。
「ち、違います! 誤解です! あれは、プロポーズじゃないんです」
だって、レオンさんの気持ちを奮起させるために言った言葉なんだから。
「じゃあ、先程僕に言った言葉は嘘だったと言うわけですか?」
「いえ、嘘では無いです。そばを離れないと言うのはレオンさんを毎日観察するためなんです」
「僕の事を毎日観察って…」
うん、観察。データを取るためにね。
「それって…まさか…」
わかってくれたかな?
「…僕はペットあつかい?」
うんなわけあるかい!
美少年に首輪をつけて喜ぶ趣味はないぞ。
「マリア、さすがにレオン兄をペットあつかいは酷いな。ペットならもうシュガーがいるじゃないか」
だから、ちがうんだってば!
ヘンリーさんとリンダさんの視線が痛すぎる。
愛する息子を弄ぶ悪女認定されてます?
「あのですね、全部、誤解です。プロポーズもしてないし、ペットあつかいもしてませんから!」
そう私が言うと、すかさずお父様が嬉しそうな声で割って入ってきた。
「そうか。マリアからレオンへのプロポーズはなかったと言うわけだな。うむ、わかった。無かったんだな。よって、マリアは嫁には行かない。いや、行かせない。だいたいまだ子供なんだ。早すぎる。大人だったとしてもダメだ。マリアは嫁になんて行かなくて良いんだ」
な、なんか私の結婚への道が遠のいたように思えるのは私だけだろうか?
お父様の介入により、プロポーズの件はうやむやになり、アンドレお兄様も落ち着いたようだ。
ふぅ、疲れた。
さあ、本題に入りましょう。
私の落ちた名誉を拾い集めなくては。
「あの、お父様、外出の許可を下さい。レオンさんの義手を作成した錬金術師に会いに行かせて下さい」
私の言葉に、その場にいた大人3人はポカンと口を開けてこちら見ていた。
ああ、そうかこれじゃあ伝わらないか。
「えっと、今のレオンさんが着けている義手は錬金術で作られたものです。本物と見紛うような完璧な作りですがこれは錬金術で作られた物なので動かすことが出来ないんです。でも錬成術なら自分の思い通りに動かすことが出来ます。義手をゴーレム化するんです」
「義手をゴーレム化する? それはすごい発想だな。いやだが、理論的にはできるか…しかしそれを請け負ってくれる錬成術師を捜せるかが問題だ。難解な古代文字が解読でき、なおかつそれを使い複雑な魔法陣を構築出来なければ実現不可能だ」
「あ、それは大丈夫です。錬成術師はここにいます。正確に言うと、錬成術師のたまご未満ですが」
そう言いながら、私は自分を指差した。
「「「は???」」」
その場にいた皆さんの声がかぶった。
それからは怒涛の自白タイムが始まった。
気分は取り調べを受ける犯人だ。
両脇をお父様とお兄様に挟まれるという暑苦しい中、私がルメーナ文字が解読出来ること、そのためにはこの義手の製作者にまずは錬金術を教えてもらわなければいけないことを説明した。
「ちょっと待ってくれ、マリアはルメーナ文字が解読出来るのか? いったいどうして?」
「えっと、勉強したから? あははは…」
まさか、『界渡りの乙女』のことを言うわけにはいかないので屋敷の図書室にこもって地道に勉強していたことを話し魔法陣も構築することが出来ることも話した。
そしてみんなの見守る中、前にクマのベリーチェを使って実験したことをもう一度やって見せたのだ。
ルメーナ文字魔法陣の紙を頭に載せ、今回はすぐに落ちないようにリボンで頭に括り付けるとベリーチェに向かって声をかけた。
「ベリーチェ、ここまで歩いておいで」
するとベリーチェはすくっと立ち上がり私の元へとトテトテと歩いてきた。
ペパーミント色のドレスの裾を揺らしながらヨチヨチ歩くピンクのクマはなんともラブリーだ。
うおっ! 可愛い!
私の足元にたどり着いたベリーチェを抱き上げてお父様達に目を向けると皆さん目を丸くして言葉を無くしていた。
その中でレオン君だけはキラキラした目で食い入るように見ていた。
少しでも希望を見いだせたなら良かった。
「しかし、マリアを王都の外れまで行かせるのは心配だな。そうだ、その錬金術師に手紙を書いてこちらに呼び寄せたら良いんじゃないか?」
「お父様、教えを請うのはこちらです。それを呼び寄せるだなんて礼儀としてどうかと思いますけど?」
まぁ、それは建て前で遠出をしてみたいと言うのが本音です。
初めての遠出だ。
ワクワクする。
結局、お父様が折れて私とレオン君の外出は認められた。
それから、この事は周りに公言しないようにと箝口令がしかれた。
何でもルメーナ文字を習得できる人は貴重らしく、私はまだ子供なので誘拐などの心配があるとのこと。
「ルメーナ文字が使えることってそんなに珍しいの? 辞書見ながら地道に勉強すれば誰でも習得出来ると思うんだけど?」
そう言いながら首を傾げる私にアンドレお兄様が頭を撫でながら説明をしてくれた。
「ルメーナ文字には、文字自体に魔力があるのは知ってるよね? そのためか、文字が使う人を選ぶと言われているんだ。どんなに勉強をしても一日経つと忘れてしまうんだ。だから貴重な存在なんだよ」
うっそ!
そ、そうなんだ。
これは我が身の安全のためにも機密事項でお願いします。
そう思ったのは言うまでもない。




