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婚約者が決まった?……ジークフィード視点

いつも誤字報告ありがとうございます。


 新年の祝賀会が三日後に迫っている中、俺はマリアの護衛としての職務を全うすべく、ルーベルトと中庭で剣術の訓練に没頭している。


 体を動かしていないと、余計なことを考えてしまうからだ。

 ナンカーナ皇国でのマリアの爆弾発言により、エリアスからは距離を置かれている。

 一緒に帰国するのも嫌だったのか、彼はナンカーナ皇国にラインハルト殿下とアンドレ殿とともに残った。


 そして、顔を合わせるたびにリシャール総団長から絶対零度の視線を向けられる現状に戸惑うばかりだ。


 あのときのマリアは誰が見ても酔っていた。

 そして、明らかに自分の発言を覚えていない。

 だから……た、たぶん、マリアが俺のことを、す、好きだというのは、なにかの間違いなんだ。

 うん、きっとそうにちがいない。


「おーい。ジークさん。足が止まっているけど、休憩にする? 考え事しながら剣を持つのはやめた方が良い」


「あ、ああ。すまない。少し休憩しょう」


「わかった」


 ルーベルトと一緒にベンチに腰を下ろす。


「えっと、ジークさんの頭を悩ませているのは、マリアのことかな?」


「な、な、な、何言ってるんだ!」


 ルーベルトの直球の質問に思わずベンチから飛び上がってしまった。


「はい、はい。慌てないで。座って。マリアはさ、本当にジークさんのことを好きなんだと思うよ」


「……し、しかし、あのときの発言を覚えていないようだった」


「でも、話をする時間を作ってほしいって言われていたでしょ。あの子はさ、真っ直ぐな子だから、ちゃんとジークさんの目を見て自分の気持ちを伝えたいんじゃないかな」


「そう……なのか?」


「きっとそう。そこで、重要なのは、ジークさんの気持ちだよ。マリアのことをどう思っているのかな? ああ、この際、エリアスの気持ちとかは考えないで。あいつは本気でマリアのことを想っているけど、オレにとっては、マリアの気持ちが一番大事。マリアには、誰よりも幸せになってもらいたいんだ」


 もしや……ルーベルトもマリアを?


「あ、オレも、もちろんマリアのことは好きだよ。でもそれはなんていうかな、妹のような友達のような? ほら、オレは昔から可愛い物や人が好きだから。初めてあの子に会った時から大切な存在なんだよ。だから、あの子を不幸にするやつは、許さない」


「そ、そうか。俺の気持ち……俺は、マリアのことは、大切に想っている。でも、それが恋愛感情なのかはわからない……なんせ、今までこの瞳のせいで令嬢から関心を持たれたことがないからな」


 初めて出会ったときに、この瞳を見て綺麗だと言ってくれたマリアのことは、やはり特別な存在だと思う。


「大切で特別な存在が、俺にとってのマリアだ。だが、まだ子供だ。おそらく、俺への感情はいっとき盛り上がったものじゃないかと思うが……なにせ、俺は彼女より10歳も上の25歳。こんなおじさんよりもエリアスの方が……」


「子供じゃないよ。もう今年で15歳になる。成人にはまだ3年あるが、婚約、婚姻にはなんら問題がない。それに、25歳でおじさんなんて、絶対にランさんの前で言ったらダメだよ。まあ、ジークさんの今の気持ちが聞けて良かったよ。オレはこれからもマリアを見守るつもりだ」


 そう言いながら、ルーベルトは立ち上がり満面の笑みを浮かべる。

 男でも見惚れそうになる美貌だ。

 こんな専属護衛がいつも一緒なのに、マリアはどうして俺なんかに?


「ジーク様、こちらにいらしたんですね。トライアン侯爵家からお手紙が届きました」


 そう声をかけてきたのは、先程話題になったマリアの専属侍女のランさんだ。

 そういえば、S級冒険者のデリックさんとの結婚を控えてますます綺麗になったと使用人の間で評判になっていたな。

 それを考えると……25歳でおじさん、おばさんというのは……違うのか?

 物思いに沈みそうになった瞬間に、ランさんから言われた言葉にハッとする。


「トライアン侯爵家から手紙? ああ、悪いな。わざわざすまない」


 毎年、この時期、トライアン家は王都のタウンハウスに滞在しているが、わざわざ手紙をもらうのは初めてだ。


 今すぐに、王都のタウンハウスに来いだと?

 何か、急用だろうか?




 **********




 トライアン家のタウンハウスに行くと、有無を言わさず馬車に乗せられて王城に連れてこられた。


 いったい、これから何が始まるのだろうか?


「おい、本当にこの呼び出しに心当たりはないのか?」


 そう言いながら、俺の背中をバシバシと叩くのは兄上。

 目の前には困惑気味の父上と母上の顔が……。


 新年の祝賀会の準備で王城は沢山の女官や文官、警備隊が行き交う中、我々、トライアン侯爵家の面々は王城のサロンに案内された。


 従者が開けた扉から陛下が入ってきた。


「おお! 久しいなエセルバート! 奥方も元気そうで何よりだ。ああ、そのままで。堅苦しい挨拶はなしだ」


 父上の名前を呼びながらソファーに腰掛ける陛下。

 暴君ではないが、かなりの策士である陛下が上機嫌なんて嫌な予感しかしない。


「トライアン侯爵家を呼んだのは、他でもない。ジークフィードの婚約者が決まった」


 え?


「ああ、これは、王命だから、断るなんて無理だぞ。新年の祝賀会で発表する。ジークフィードはそれまで王城預かりとする。以上! はい、解散!」


 ええっ?!

 何だそれ?!




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