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新年の祝賀会

 ナンカーナ皇国からシャーナス国に無事帰国。


 ラインハルト殿下とアンドレお兄様は、なんだか皇国でやることがあるそうで一緒に帰国しなかった。


 何故かエリアス先生も出発間際に、残ると言い出して結局そのままナンカーナ皇国に。


 たぶん、イリス関連の後処理だと思う。

 ほら、『誓約の呪縛』ってやつであちらの皇族はイリスを処罰できないらしいからね。


 そして、私は、何故かエメライン様のお茶会の記憶が後半すっぽりと抜けてるんだよね……。


 なんか、やたらと皇太子殿下とエメライン様から謝られけど……なんでだろう? なぞだ。


 それに皇帝陛下と皇后陛下ときたら……。


 帰国前に、お父様と一緒にご挨拶に伺ったときにお二人にとっても真剣な顔で、好きな人は誰なのか問い詰められた。


 国のトップ相手に、恋バナとかして良いのだろうか?

 そんなことが頭をよぎり、まごまごとしていたら、なんと両陛下から思わぬ一言が発せられ思わず悲鳴をあげてしまった。

 だって、『ラインハルト殿下ではないのか?』なんて、冗談にも程がある。


 思わず、『私が好きなのは、ジークフィード・トライアン様です!』と、叫んでしまった。


 その場に一緒にいたお父様が、膝から崩れ落ちた。


 当の本人であるジーク先生には、まだ告白できてないというのに何故かお父様に知られてしまうなんて恥ずかしさに悶絶だ。


 でも、ジーク先生には、帰国して落ち着いたら私との時間を作ってほしいとお願いをしてあるから大丈夫。

 そのお願いをしたとき、少しジーク先生の目が泳いでいたような気がするけど気にしない。

 気にしたら負けなのだ。

 もう後悔しないと決めた私は、無敵なのだ。


 とりあえず、『新年の祝賀会』に向けての準備に忙しいので、それが落ち着いたらと思っている。

 何と言っても、私の『異世界の神の加護』が公表されたら、ジーク先生とエリアス先生の王命による護衛(監視)の任は解かれるだろう。

 そうしたら、もう頻繁に会えなくなるからね。




 久々に学園に顔を出した時は、大変な騒ぎだった。

 みんなに囲まれて質問攻め。


 なんとか、かんとか説明を終えて開放されたかと思えば、一ヶ月近くも休学していたつけが、補習授業と宿題という形で私を襲った。


 冬の長期休みに入るまでの、二週間は、寝る間もないほど忙しかった。


 そして、いよいよ明日は『新年の祝賀会』だ。

 結局、ジーク先生への告白は実現せず、今に至る。


 だって、聖獣となったベリーチェ達のお披露目もすると通達があったため彼らの服の作成やら、一緒に転移ゲート設置で表彰されるガイモンさんの礼儀作法のレッスンやらと、なにかと忙しく時間が取れなかったのだ。


 しかも、なぜか、三日前からジーク先生の姿が見当たらない。

 所用で出かけているそうで、明日の祝賀会に合流するということだ。


 そして、ジーク先生と入れ替わるようにナンカーナ皇国から、アンドレお兄様とエリアス先生が帰国した。


 なんだか、エリアス先生の元気がないように見えるが、きっと明日の表彰式のせいで緊張しているのだろう。

 ガイモンさんも、心ここにあらずの様子で盛大にお茶をこぼしていたものね。





 **********




「き、緊張する……」


 表彰式の控室で、ため息を付きながら呟いたのはガイモンさん。

 ビシッと濃紺の正装に身を包み、普段はおろしている前髪を丁寧に後ろになでつけている。

 どこから見ても貴公子だ。

 その隣に寄り添っているのは、清楚なオリエンタルブルーのドレスに身を包んだナタリー。

 本日は、ガイモンさんの婚約者ということで、表彰式に参列予定。

 もちろん、妹であるメアリーちゃんも一緒。

 エイベル君から贈られた真紅のドレスがとても良く似合っている。


 私も赤いドレスなんだけど、メアリーちゃんのドレスよりも明るめで銀色の刺繍とブルーのクリスタルの装飾がふんわりと広がったスカート部分一面に施されている。

 なぜか、王城から届いた一級品だ。

 多分、報奨の一部なのかな。

 遠慮なく着させていただきました。


 すぐ近くでは、エリアス先生がご家族と一緒に談笑している。

 口数は少ないようだけど、久々に家族に会えて照れているのかもしれない。


 そして、私はなぜだかお父様に見つめられている。しかも、涙目だ。

 そんなお父様に困った顔を向けるアンドレお兄様。


「父上。いい加減に観念してください。王命なんですから」


 え? まさか、この期に及んで叙爵の話を拒んでいるってこと?

 もう、往生際が悪いぞ。


「もう、お父様ったら。ほら、笑ってください。お祝いの場なんですから」


「祝いの場……マリア……そ、それは……」


「皆様、ご入場のご準備をお願いいたします」


 お父様のつぶやきと案内係の声が重なった。


「マリア、ここは僕に任せて。ほら、行っておいで。ベリーチェ達も後で連れて行くから」


 アンドレお兄様の言葉にうなずいてガイモンさんと、エリアス先生とともに案内係のあとをついて行った。




 滞りなく、表彰式は終わり、我が国の軍事拠点が転移陣で繋がったことに列席者達は、歓声を上げた。

『異世界の神の加護』については、界渡りの乙女の存在が浸透している国柄なのか皆さん概ね好意的でホッとした。


 ガイモンさんは報奨に男爵位を叙爵され、金一封と王城魔導師団の特別団員の資格も授与。


 エリアス先生は、赤の賢者の子孫ということが改めて発表され、過去に封印された『ブラッドフォード・ジャクソン』の家門を復活することに。

 エリアス先生の血縁者は『ジャクソン』の姓を名乗り、そして子爵位を叙爵された。もちろん、金一封もね。


 そして、私も金一封を頂いた。

 なんだか、私の報奨の品はもうひとつあるみたいで、それは後ほどくれるらしい。

 何をもらえるのか楽しみだ。


 続いて行われた新年度の叙爵式では、先程ごねていたのが嘘のようにさっそうとお父様が登場し、会場中の女性の視線を独り占めしていた。

 どうやら腹をくくったらしい。


 ベリーチェ、シュガー、クラウドの聖獣のお披露目も無事に終わり、これから舞踏会が開催される。

 それにしても、ジーク先生はどこにいるんだろう?

 おかしいな? 会場で合流すると聞いていたんだけどな。

 ルー先生に聞いてもわからないと言われ、エリアス先生に聞いたら、走って逃げて行ってしまった。冷たいではないか。




 会場に王族が勢ぞろいして、いよいよ舞踏会が始まった。


「さあ、新しい年の幕開けだ! 今年一年の開運を願い、共に祝おうではないか!」


 国王陛下の一声に、会場中が拍手に包まれた。


「今年は、第一王子、ヒューベルトが立太子の儀を迎える。それと同時に婚儀も行う予定だ」


 その言葉にまたまた拍手が上がる。


「それと、もう一つ報告がある。マリアーナ・リシャール公爵令嬢。ここへ」


 へ? 私?

 何がなんだかわからないまま、お父様のエスコートで壇上へ。

 あ、もしかして……もう一つの報奨の品の授与かな?


「この度、異世界の神の加護持ちで三聖獣の主人であるマリアーナ・リシャール公爵令嬢の婚約が調った。ジークフィード・トライアン侯爵令息、ここへ参れ」


 な! な、な、なんで?!


 あんなに探してもいなかったジーク先生が、会場の割れた人垣の中から現れた。

 ビシッとシルバーブルーの正装に身を包んだ姿は息を呑むほど麗しい。


 で、でも、めっちゃ、動揺してますよね?!

 ええ、私もです!


 ま、まさか、もう一つの報奨の品とは、婚約者のことですか?!

 国王陛下?!

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