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導きの女神 黒の騎士団長 セブルス・ウオーヘン視点②

「セブルス団長、総団長のご子息とご令嬢をお連れしました」


 ジークがセドリックの子供達を連れてきたようだ。

 息子の方は何度か会ったことはあるが娘の方は初めてだな。

 そんなことを想いながらジークに入室を促した。


「おう、入ってもらってくれ」


 息子の方は金髪の巻き毛にエメラルドグリーンの瞳の美少年。

 娘の方はピンクゴールドのサラサラの長い髪に深い緑色の瞳。

 さながら妖精のように可憐で儚げな美少女だった。

 なるほど、確かに亡くなった奥方の面影があるな。


 俺は挨拶するために立ち上がった。


「黒の騎士団長のセブルス・ウオーヘンだ。ご足労願って申し訳ない」


「リシャール伯爵家が長男、アンドレ・リシャールです。父がお世話をおかけしました」


「マリアーナ・リシャールと申します」


「父は僕達が連れて帰ります」


「アンドレ? それにマリアまでなんでここに?」

 自分の息子の声に反応したセドリックが顔をあげた。


「帰りましょう、お父様」


「マリア・・・すまなかった。君の屋敷での状態に気づいてあげられなかった。私は父親失格だ」


「お父様は何も悪くありません」


「いや、実際アメリアが亡くなったあと現実を受け止めきれない私は仕事に逃げたんだ。あの悪魔達のいる屋敷に君を残して。私はどうしようもない馬鹿者だ。謝っても、謝っても、謝りきれない。君まで失っていたらと思うと震えが止まらないよ。マリア、私は君からお父様と呼ばれる資格なんかないんだ」


 セドリックのこの言葉にマリアーナ嬢は例え話をして父は悪くないのだと訴えた。


 そして自分達の人生があんな奴らのせいで暗くなるのは許せないと、自分達は幸せにならなきゃいけないのだと。


 力強いその言葉にはっとする。

 これは、この子は儚げな妖精なんかではない。


「マリアーナ・・・」

 マリアーナ嬢の言葉に先程まで絶望の色を宿していたセドリックの目に力が戻ってきた。


「私達は生きているんです。未来は無限に広がってます。明るく生きるのも、暗く生きるのも自分達次第なんですよ。だったら明るく生きていきましょう。私、お父様とアンドレお兄様を必ず幸せにします」


 とても10歳の子供とは思えないしっかりと前を向いた言葉にセドリックも息子も笑顔を見せた。


 そうか、この子は周りの人に希望の光をもたらす導きの女神なんだ。


 そう思っていたら隣で同じ様に親子の様子を見ていたジークが小さな声で呟いた。


「導きの女神・・・」

 一瞬、俺の心を読んだのかと思ったがどうやら違うようだ。


 子供の頃、誰もが親から聞かされるおとぎ話。


 心優しい物語の主人公が絶望の底に居るときに進むべき道筋を指し示し導く女性。


 それはある時は商人の妻、ある時は農夫の娘、ある時は貴族の妹だったりと多岐にわたるが話の流れは同じ。


 そうして導いた先には希望の光が満ちていて必ず幸せになると言う。


 妻、娘、妹をそれぞれ看取るときに天から神が舞い降りてきてこの子は自分の娘だから迎えに来たと言う。


 そこで初めていつも自分の隣に寄り添っていた女性は女神だったと気づくと言うおとぎ話だ。


 この話を母親から聞かされた時、俺はひねくれたガキだったもんで女性を大事にしろと言う戒めの話かと思ったが違ったんだな。


 清く正しく生きてきた者には手をさしのべてくれる女神のような存在が現れるという教訓の話だ。



 この子がセドリックのそばにいるなら大丈夫だ。

 きっと親子三人で幸せに向かって突き進むだろう。

 何か困難なことにぶつかっても何度でもこの子が希望の光へと導くだろう。


 そんな事を想いながら休憩室を後にした。

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