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バレた!

 皇帝陛下に呪詛の術をかけた犯人達が、帝国人ということが濃厚となった今、エレウテリオ殿下達は、再度大聖女様の護衛をしていた三人と、侍女の出自について調べ直しているようだ。


 その調査にエリアス先生もお手伝いという名目で参加。 

 そして、私はこれから来るお客を待っているところ。

 この場にいるのは、私の他にエメライン様とラン、ナタリー、ジーク先生、ルー先生とベリーチェ。


 例によって、シュガーとクラウドをオズワルドさんにお任せし、ヨランダさんには昨日からお休みを取ってもらっている。


 ヨランダさんにはごねられたが、働き詰めは良くないし、これは私のお世話をしてくれているみんなにお願いしてることだと言い聞かせた。

 

 まあ、極めつけは、ベリーチェの一言だったんだけとね。

 

 『ベリーチェ、ヨランダしゃんとおそろいのふくがほしいでしゅ』の言葉に、ヨランダさんは嬉しそうに破顔し、速攻で帰っていった。

 

 今頃、部屋で制作活動に勤しんでいることだろう。

 

 

 

 

 トントン。

 

 ドアの外を確認をしたナタリーが、声をかけた。

 

 「マリアお嬢様。お三人がお見えになりました」

 

 来た!

 

 ドヤドヤと部屋に入ってきたのは、元エメライン様の聖騎士だった三人の若者だ。

 

 赤い髪に濃紺の瞳のダレル・アンブラー。

 淡い水色の髪に薄茶の瞳のマイルズ・ブロック。

 そして、金髪に青目、美貌のシリル・エアトン。

 

 今回の騒動で、神殿から除名された三人。

 そこを、私の護衛として就任させてほしいと、エレウテリオ殿下に頼み込んだのだ。

 

 『シャーナス国の国王が……』とかごちゃごちゃと言っていたが、私が、皇帝陛下の呪詛を浄化したので狙われる確率が高くなったこと、その恐怖で眠れないと訴えたら渋々了承してくれた。

 

 まあ、私の護衛というのは建前で、エメライン様の護衛をしてもらおうと思っている。


 彼らは、神殿の関係者の顔を知っているので、不用意にエメライン様に近づく人を排除してもらえる。

 今、神殿に危険分子がどのくらい潜んでいるのか皆目見当もつかないからね。


 私のマナー講師ということで、彼女も危険な目に遭う可能性があることを見越しての行動だ。

 

 私には、ジーク先生、ルー先生、エリアス先生もいるし、ランもナタリーも冒険者ランクC級の戦闘侍女なのだ。


 おまけに存在自体に強固な守護力があるベリーチェに、シャーナス国、王家の紋章入首輪をしているシュガー、体の大きさを自在にできる飛竜のクラウドが揃っているので、守りは万全だ。

 私にも少しは、攻撃力もあるしね。

 

 

 

 

 「あんたが、俺たちを指名した令嬢か。ああ、悪いが俺達は平民上がりなので礼儀を知らない。だから、言葉遣いもこのままだ。嫌ならこの話はなかったことにしてくれ」

 

 応接間のソファに腰をおろした途端に、向かいの席から声がかかる。


 三人のなかで、一番スラリとしてたおやかな雰囲気のシリル・エアトンだ。


 美貌の青年が、口にする言葉は辛辣だ。 

 あ、私の後ろに立っているジーク先生とルー先生から殺気が。

 抑えてください。

 

 たぶん、私を大聖女気取りのわがまま令嬢と思っているんだね。

 わざと、乱暴な言い方をして嫌われる作戦ですね。

 

 「言葉遣いはどうぞそのままで。私は、マリアーナ・リシャールと申します。よろしくお願いします」 

 

 「言っておくが、俺たちは、ある御方に忠誠を誓った。今回は皇室からの要請だから、この場に来たが、あんたが俺たちに理不尽な要求をしたときは、即、退任するつもりだ」

 

 自分たちが忠誠を誓ったのは、エメライン様だけなんだという気概をヒシヒシと感じる。

 

 なんだか、懐かない猫みたいで思わず笑ってしまう。

 

 「なぜ笑う? 俺たちが何を言っても、自分に従わせる自信があるようだな。あんたみたいな貴族令嬢を嫌というほど見てきたよ。でも、俺たちはそんなものには屈しない。他の者達と違って、守りたい者もいないからな。脅しは効かない」

 

 シリルのその言葉に頭の中で何かが引っかかった。

 あれ? なんだろう? 

 

 「どうした? 自分が思っていたのとは違う展開に言葉もでないか?」

 

 はっ!

 いかんいかん。

 とりあえず、護衛の件を話さなければ。

 彼らには、エメライン様の正体を明かして協力してもらうつもりなのだ。

 

 「いえ。全部想定内の展開です。あなた達三人に護衛を任せたいのは実は私ではなく、こちらのご令嬢です」

 

 そう言いながら、部屋の片隅に立っていたエメライン様に視線を向ける。

 それに倣って、三人の若者もそちらに顔を向けた。

 

 怪訝な顔の三人の前に近づいて、腰を折るエメライン様。

 今は魔道具で、髪の色と瞳の色を変えている。

 彼女は、三人が見守る中ゆっくりと魔道具の指輪を外した。

 

 ガタガタ!

 三人が驚きでソファーから転げ落ちた。

 

 「「「エメライン様?!」」」

 

 そこからは、大騒ぎだった。

 三人からの質問の嵐にエメライン様が答え、再び会えた喜びで四人とも泣き笑いだ。

 これで、エメライン様の護衛の件も一安心だ。

 


 バン!

 

 そこへ、いきなり部屋のドアが開いた。

 

 「ベリーチェ! おそろいのワンピースができましたよ!」

 

 ええ! ヨランダさん?!

 

 ま、まずい!


 時すでに遅し。

 しっかりと自分の足で立っているエメライン様と、ヨランダさんの目が合った。

 

 バレた!

 

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