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ちがーう! そうじゃない!

 皇帝陛下御一家とのお茶会から一週間がたった。


 皇帝陛下の病状に関するニセ情報もいい感じで広まり、大聖女様から面会の申請が来ているそうだが、今の所お断りしている状態だ。

 只今、大聖女様の五人の聖騎士と専属侍女の身元調査中なのでね。


 そして、エレウテリオ殿下は一年半前に起きた元婚約者さんの馬車の事故を再調査中。


 それに、エリアス先生も同行して協力している。

 なんと言っても、王城魔導師団の魔導師だからね。

 新しい発見があるかもしれない。



 そして、私は、色とりどりのお花が咲き乱れる皇宮の温室で皇后陛下主催のお茶会に出席中です。


『女神が招いた聖女』である私のお披露目会の前に、この国のご令嬢たちと事前に顔合わせをしたほうが良いと言う皇后陛下のはからいだ。


 そして、話題性ということで、ベリーチェも一緒。

 私とおそろいの深緑色のドレスを着て、隣にちんまりとおすわりしている。

 その隣には、ヨランダさんがご令嬢仕様で座っている。

 彼女は、ナンカーナ皇国の伯爵家のご令嬢だそうだ。

 本日は私のシャペロンとして出席している。

 皇子殿下達の乳兄妹であり、皇族専属の侍女であるヨランダさんは、顔が広いのだ。


 六卓ほど配置された丸テーブルに五人から六人が席に着く。

 皇后陛下がご招待をしたのは、15歳から23歳のご令嬢。

 皆さん、お綺麗な上に品も良い。


 同じテーブルのご令嬢たちを、ヨランダさんが紹介してくれ、私もそつなく自己紹介をする。


 ベリーチェもペコリと頭を下げなら自己紹介。


「ベリーチェでしゅ。よろしくおねがいしましゅ」


 それを見たご令嬢たちから『可愛い』と声が上がる。


「本当におしゃべりができるのですね」


「なんて、可愛いのでしょう!」


「リシャール伯爵令嬢、このようなゴーレムはシャーナス国では普通に流通しておりますのでしょうか?」


「どうぞ、気軽にマリアとお呼びください。ギルドや商会では、荷物運搬用のゴーレムを普通に使用しております。ですが、ベリーチェは特別です。ゴーレムではなく、私の友達ですもの。作成者や製法は秘匿となっております。ご容赦くださいませ」


「申し訳ありません。そのように皇帝陛下の御触れにございましたね。あまりに可愛らしくて思わずお聞きしてしまいました」


 同じテーブルのご令嬢達が同意するように頷くと、近づいてきた皇后陛下が声をかける。


「ふふふ。わかるわ。わたくしもベリーチェのようなお友達がほしいと思いますもの。さあ、マリアちゃん、そろそろあちらのテーブルの方々にお声をかけていらして。ヨランダ、お願ね」


 皇后陛下の司令にヨランダさんは、ベリーチェを抱き上げて立ち上がった。

 全部のテーブルを回るんですね。

 はい、わかっております。新参者ですものね。

 初対面のご挨拶は肝心です。


 次々とテーブルを移りご挨拶をする。

 ようやく最後のテーブルで落ち着いてお茶を飲むことができた。


 はあー疲れた。

 よく考えたら、私はこの一連のゴタゴタに片が付いたら自分の国に戻るんだから、この国の貴族令嬢の名前は覚えなくても良いんじゃないかしら?


「あの、マリア様。こちらにいらっしゃるときは、護衛と侍女は今いらっしゃる方々をお連れになるのでしょうか?」


「? ええ。いつもそうしております」


 本日はランとナタリーとジーク先生には、エレウテリオ殿下の元婚約者の様子を見に行ってもらっているので不在。


 婚約解消後に実家に戻っていたご令嬢は、最近近くの神殿で治癒のお仕事をしているとの情報があったので。


 これは、冒険者のデリックさん情報だ。

 冒険者の間で、怪我が綺麗に治ると評判らしい。

 なので、今日はルー先生ひとりが私の護衛としてこの温室に同行している。


 あ、オズワルドさんは、シュガーとクラウドのお世話をしてもらっている。


 今頃、騎士団の訓練場に行っているはずだ。


 何気なく、温室の片隅にいるルー先生に視線を向けると、私に気がついて、白い歯を見せてニッコリと笑った。


 とたんに同じテーブルのご令嬢から『ほおー』とため息がもれる。

 温室だけに、赤とピンクの薔薇がバックを飾っているではないか。ものすごい破壊力だ。


「マリア様。マリア様の護衛のお三人は、ご婚約者はいらっしゃいますの?」


 向かい側に座っているご令嬢の言葉に、その場の皆様が息を詰めて返答を待っている。


「まだ、いないですけど。それが何か?」


「「「きゃー!!」」」


 一斉に上がる黄色い声。


「で、では、マリア様がお輿入れの際は、あの方達もご一緒にこの国にこられるということですわね!」


 はい? お輿入れ? 誰が? 


「? あ、あの、何のことでしょうか?」


 私の言葉に、その場の皆様が微笑む。


「そうですわね。まだ、正式に発表されておりませんものね。でも、ご心配は無用でございます。皇帝陛下のご病気を治した女神が招いた聖女様ですもの。歓迎いたしますわ」


「エレウテリオ殿下とも、仲がよろしいとお聞きしておりますわ。エレウテリオ殿下のお飼いになっているスティングリーの背に乗って、飛行をお楽しみになったそうですわね」


「まあ! さすがマリア様ですわね。エレウテリオ殿下のペットは気難しくて、女性は乗せないと言われていましてよ」


「空でデートだなんて素敵ですわ」


 え? え? え?

 それって、検問所に行ったときだよね?

 デートとは程遠い状況だったよね?

 あまりの誤解に、なんと言っていいかわからず絶句する。


 隣ではベリーチェが、ヨランダさんに問いかけている。


「おこしいれってなんでしゅか?」


「お嫁に行くことですよ」


「マリア、およめにいくでしゅね。ベリーチェもいっしょにいくでしゅ」


「「「「まあ! 可愛い」」」


 ちがーう! そうじゃない!

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