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1:神様、私をこの世界から消してください。
彼女は神に願った。そしてその願いは叶えられた。
「名前」も「歳」も「今までの人生」も全て忘れ消し去られ、新たな人生を送る為に。
神様。
神様。
この世界から、私を消してください。
神様。
この生きにくい世界から、私の全てを
消してください。
親と不仲でもなければ友達がいないわけでもない。
だけどそれは義務的に、意識して親と仲良くして友達を作って、コミュニティを形成しただけで。
私は、自分の意思で自分の心でそれを望んで形成したわけではない。
なんて、生きにくい世界なんだろう。
一人でいると「ぼっち」とか「根暗」なんて言われて、本当は知識欲の塊なのに周りに合わせて生きなければ「浮いてる」と言われる。
自分らしく生きたかった。
自分の心に嘘をつかずに生きたかった。
欲しいものなんてない、捨てるものもない、最初から偽りで作った世界なんて、要らない。
神様、私を世界から消してください。
通学路にある小さな神社で、五円玉を賽銭箱に投げて願った。
そして、私は本当に「この」世界から消えた。