一つ年上の彼女
一つ上の先輩と成行きで付き合うようになった聡だが、接してきた時間の長さに比例して深く彼女を深く愛していた。そしてお腹に宿った命の存在を知って取った行動は。
「どこにいる、聡。」
廊下から聞きなれた声が聞こえてくる。ただここであまり聞くはずのない声だ。俺が聞き間違いかと戸惑っていると、教室のドアが乱暴に開き、見慣れた顔が入ってくる。その顔は俺を見つけると声を掛けてきた。
「ここにいたのか、聡。」
「なぎ先輩。どうしたんです。ここはなぎ先輩の教室じゃないでしょ。」
「そんなことはどうでもいい。おまえ、いまからすぐ市民病院へ行け。」
「え。市民病院ってなんのことです。」
「おまえの子供が死ぬぞ。さっき律子から電話が来た。病院に行くってな。お腹の中の子供を堕すためにな。身に覚えはあるんだろう。お前の子供だろう。」
俺にとって晴天の霹靂だった。律子が妊娠していたなんて。おかしいとは思っていた。だが妊娠とは。俺は自分の迂闊さを呪った。
「体調が悪いとしかいってなかったのに・・・。」
「まあ体調が悪いというのは、まったくの嘘ではないだろうな。つわりで御飯も食べられないって言ってたからな。だが、問題はそんなことじゃない。律子の母親は産むことは許さないといって無理矢理に堕すことを律子に承諾させた。律子も子供の父親がお前だって口を割らなかったらしいからな。余計に母親と父親は怒ったそうだ。」
「俺は何も聞いていないですよ。」
「そうらしいな。律子も言っていた。聡に迷惑を掛けるわけにはいかない。だから自分だけで決着を付けるってな。だけど当日になって、わたしに電話をしてきた。泣きながらな。隙をみての自宅電話からだった。携帯は取り上げられているらしいからな。」
「それでか。連絡が付かないのは。」
「余計な話をしている暇はない。直ちに行け、聡。」
なぎ先輩に言われるまでもない。俺は財布と携帯を握って朝礼の始まる前に教室を飛び出した。
校門を出たところで流しのタクシーを拾う。まだ登校してくる学生が沢山いる。だが俺は人目を気にすることなく乗り込んだ。
「市民病院まで急いでお願いします。」
「何かあるのかい。」
「子供が死にそうなんです。俺の子供です。」
「え、兄ちゃん学生だろう。それなのに子供がいるのかい。」
「はい、います。お願いします。」
「分かった。市民病院だな。」
タクシーの運転手は俺の願いを聞いて車を飛ばしてくれた。タクシーの中で俺は親父に電話を掛ける。仕事に取り掛かろうとしていたところの親父が電話に出てくれる。
「親父、一世一代の頼みがある。急いで市民病院へ来てくれ。頼む。」
「いきなりだな。一体なにがあるんだよ。」
「俺の子供が死ぬか生きるかの瀬戸際だ。親父にとっては初孫だ。」
「はあ、言っている意味が分からねえ。」
「分からなくてもいい。俺一人では解決できねえ。だから親父助けてくれ。頼む。」
俺の悲痛な頼みに親父は事情は分からないままも、助けが必要なことだけは理解してくれた。
「分かった。市民病院だな。すぐに向かう。お前はどうするんだ。」
「俺はタクシーで今向かっている最中だ。親父よりは先に付く。着いたら産科の病棟へ来てくれ。」
人工中絶だが産科で行われる。入院してからだ。12週になっていないから、始まってしまえば、すぐに終わってしまう。俺の子供の命の砂時計の砂はあとどれくらい残っているんだ。俺は気が気ではなかった。涙が出てくる。
実際のところ病院で16歳のガキが騒いだって人工中絶を止めるなんてことは本来できねえ。ただ俺は子供の父親だ。俺の同意なしに堕胎は出来ない。子供の父親が俺だと認識されていればな。だが律子は父親が俺だってことは口を割っていない。だから律子だけが強制的に同意させられて堕ろさせられる。未成年の律子は親の同意が必要だが、両親は堕ろす一択だろうからな。
市民病院の玄関前にタクシーが滑り込む。料金は3000円程度だった。俺は一万円札を3枚出した。
「ありがとうございます。これで助けられるかも知れません。すみません。恩にきます。」
タクシーの後ろには赤色灯を光らせた黒と白のツートンカラーの車が止まっていた。
「兄ちゃん、頑張れよ。」
制服警官が寄ってくる。俺は警官のそばを駆け抜けて病院に飛び込んだ。
エスカレーターが遅く感じる。降りてきた箱に乗って、産科病棟まで上る。詰め所で素知らぬ顔をして冷静に尋ねる。
「すみません。家族のものですが、今日入院した岸本律子はどこでしょうか?」
詰め所の中にいた看護師が教えてくれた。
「608号室ですよ。」
「ありがとうございます。」
俺はどきどきする胸のうちを知られないように、平静な顔を保ったまま教えられた病室へ向かった。うしろの詰め所で、誰が来ても教えないでくれって言われてなかった、という声が聞こえたが、すでに聞いたあとだ。紙一重のチャンスだった。
俺は608号室のドアを開けた。目の前では、看護師が律子の腕に点滴をするための針を刺そうとしている最中だった。まだ点滴は始まっていない。間に合った。
「看護師さん、点滴をしないでください。」
声を掛けられた看護師は手を止めて振り向いた。学生服を着た俺に向かって不思議そうに尋ねた。
「どなたですか?」
「子供の父親です。」
「聡。」
律子の声が被った。
それから騒動が起きた。律子の母親が駆け付けた。
「あなたが律子を、傷物にしたの。何をしに来たの。さっさと出ていきなさい。」
「それは出来ません。俺は子供の父親です。」
病院の医者も来た。俺が子供の父親だという話を聞いた医者は、このままでは手術は出来ないので話合いをしてください、と言って一旦引き下がった。
律子の父親も来た。
「君は学生だろう。子供が出来たとして育てることなど出来ないだろう。さっさと同意書にサインして消えたまえ。」
「そうよ。律子は真面目な子だったのに、あなたがダメにしたんでしょう。何が父親よ。ふざけたことを言わないで。」
「サインは出来ません。」
俺は何を言われようが、ひたすら、サインは出来ない、同意出来ない、を貫いた。両親に反論も言い訳も一切しなかった。
父親と母親はだんだん興奮して大声で俺を罵っていた。
「ふざけたことを言うな。律子を傷物にして、責任をどうとるんだ。」
「そうよ。高校生なのに子供を産んで育てる事なんか出来ないでしょう。」
「律子は、おまえに騙されたんだ。」
二人は俺に向かって罵詈雑言を言い続けた。それに対して俺は黙って聞いていただけだ。俺の後ろには律子がいる。両親の言葉を俺の後ろで律子は聞いていた。
ふと俺が気が付いたときには病室の入り口には俺の親父が立っていた。親父は何も言わずに、律子の両親が俺にまくしたてる姿を見て聞いていた。しばらくして言いたいことを言いつくしたのか律子の両親からの文句が止まった。
病室に静けさが戻ったときに、俺の後ろから律子が俺に声を掛けてきた。
「聡。もういいよ。聡に迷惑を掛けたくない。だから、この子は諦める。だから聡が辛い思いをする必要はないよ。」
俺はゆっくりと後ろを振り向き律子を正面から見て口を開いた。律子は涙を流していた。
「俺はそんなに頼りないかな。」
「聡。」
「迷惑とかじゃなくて、頼って欲しい。俺は力にならないだろうか。」
「そんなことない。でも聡に迷惑は掛けたくない。」
「迷惑を掛けてほしい。俺を頼って欲しい。」
俺の真摯な視線に律子がたじろぐ。
「お母さん、お父さん、納得はして頂けないと思います。ですが俺は律子が好きです。律子と律子のお腹の子を守ります。幸せにします。だから、お腹の子をこの世に産まれさせてください。」
俺は律子の両親に向き直って頭を下げて頼んだ。俺に出来ることは限られている。だが、諦めることは出来ない。ここで諦めれば、お腹の子供と律子を失う。俺にはそうとしか考えられなかった。
俺が律子と出会ったのは、小学校のときだった。俺が4年生、律子と渚は5年生だった。音楽会で会場係をすることになったときに同じ班になった。それまで面識は全くなかった。だけど一緒に仕事をするうちに仲良くなった。律子と俺がアトピー性皮膚炎で苦労していたことが距離を近付けることにもなった。
律子と渚は仲が良かった。律子は細身で、渚はがっちりした体形。渚を兄貴と呼ぶと、わたしは女だと殴られた。俺は律子のことは律子と呼んだが、渚のことは、なぎと短く呼ぶようになっていた。それはそれで渚と呼べと怒られたが、そのうちに何も言われなくなった。諦められたんだろう。
小学校の卒業式の会場係も一緒になった。不思議な縁だったが、楽しく仕事が出来た。学年が上がっても、その後もちょくちょく関わりが出来ることがあった。そのうちに俺は律子の相談を受けることが多くなった。主に男女関係だった。律子が好きになった男の子がいると言っては、俺に感想を聞いてきていた。良く知りもしない男のことなんか知るかよ、と言って喧嘩になることが多かったが、いつも最終的には俺が折れていた。
律子は6年生のときに、好きな同級生の男の子に告白したが撃沈した。それを慰めたのも俺だった。律子たちが卒業して一年間は付き合いが途絶えていたが、俺が中学になると再び関わりが復活していた。
中学時代に、律子は付き合っては別れたり、振られたりを繰り返していた。それに巻き込まれる俺にとっては迷惑だった。割と律子は男子に人気があったと思う。渚に全く男気がなかったのとは対照的だった。ただ俺の感情では、律子は仲の良いお姉さんだった。渚は仲のよい兄貴だった。言ったら殴られたが。
律子たちが中学を卒業して高校生になるとまた関わりが途絶えた。中学は徒歩で通学だったが、高校は電車通学だから会うことそのものがなかった。だが、俺が高校生になると一緒に電車通学するようになった。高校も三人同じというのは運命的なものがあるのだろうか。
電車通学では押すな押すなの満員電車で俺と渚が自然に盾になって律子を守るようになっていた。俺たちは汗だくになっているのに、律子は涼しい顔をして笑っていた。ハンカチで俺たちの汗を拭いてはくれたが、ちょっと腑に落ちなかった。しかし、それが律子だという渚の言葉には妙に説得力があった。
高校生になっても惚れた腫れたを繰り返していた律子だが、あるとき振られたと泣きついてきた。理由を聞いたら、通学で俺と渚と一緒になのが問題にされたそうだ。俺と付き合っているんじゃないかと疑われたらしい。
「そんなの単なる後輩だっていえば済むことじゃないか。」
「単なる高校の後輩と毎日一緒に通学なんておかしいだろうって言われた。」
「おかしくないだろう。」
「じゃあ、責任とって聡が恋人になって。」
「なんでそういう話になるんだよ。」
「だって、聡がおかしくないって言ったんでしょ。」
「たしかに言ったけど。」
「言ったけど、嘘なの。」
「そんなことないよ。」
「じゃあ、いいじゃない。恋人なら一緒に通学でもおかしくないでしょ。」
こんな会話の結果、俺は律子と付き合うことになった。なんとなくスッキリしない理由だったが、律子にとっては気を遣わなくていい俺は都合が良かったらしい。俺も仲のよいお姉さんのお守をする気分で付き合っていた。
付き合いが長い分、律子は俺には一切遠慮というものをしなかった。気分次第で要求はコロコロと変わった。
「ちょっとひどくない、律子。」
「いいじゃない、聡。」
「良くないよ、律子。」
「酷い、聡。いつからそんな冷たい人になったの。」
「わかったよ。」
小さい頃とは違って俺が大人の対応をすることで喧嘩にはならず、決定的な亀裂を生むこともなくなんとか付き合いは続いていた。
そのうち恋人らしいこともするようになった。律子が海に行きたいと言いだし、用心棒に渚を誘って三人で出掛けた。恋愛映画を見たいといったときには、さすがに二人で行けよと渚にキレられた。夏祭りも二人で行けと蹴飛ばされた。だが二人で過ごす時間が長くなるにつれて俺たちの距離も近くなっていった。キスに始まって、知らないことはないという関係になるまで左程時間は掛からなかった。通学も渚が遠慮するようになり俺と律子の二人ということも多くなった。
だが冬が近づくにつれて体調が悪いと律子が言い出した。風邪をひいたみたいだと学校を休むこともあった。それが数日間になったときに、俺は見舞いに行こうとしたが、風邪がうつったらダメだから治ったら遊ぼうと言われていた。それが両親に妊娠のことを話して病院に行っていた。だがギリギリになって渚を通じて俺に真の情報が入った。
俺が律子の両親に頭を下げたときに、俺の親父が声を掛けてきた。
「わたしは、聡の父親です。わたしからもお願いします。わたしに初孫を腕に抱かして頂けませんでしょうか。」
親父も律子の両親に頭を下げてくれた。
「あんたは、」
律子の父親は、親父に文句を言いかけたが、親父の次の言葉に止められた。
「ご両親は娘である律子さんのことが大事なのでしょう。だからこそ心配して一生懸命考えて一番良い方法をと選択しようとされています。ですが、立ち止まって考えてください。律子さんにとって、そしてわたしの息子である聡にとって、律子さんのお腹のなかにいるのは二人の子供です。御両親が律子さんを大切にされていることと、親である聡が子供を守ろうとしているのは同じことではありませんか。」
親父は大きい声を出したわけじゃなかった。だけど律子の両親に与えた衝撃は小さいものじゃなかった。律子の両親が子供である律子を守ろうとして中絶させようとすることと、俺が子供を守ろうとしていることは同じ重みで図るべきだという主張は否定できなかった。
「たしかに聡は配慮が足りなかったと思います。ですが、既にこの世に存在している命を絶とうとはしないで頂けますでしょうか。親であるわたしが言うのもなんですが、聡は覚悟は出来ています。そして御嬢さんを幸せにすると信じております。」
親父は静かに両親を説得していた。
俺は再び律子に向き直った。
「律子。」
「なに、聡。」
律子の声は弱弱しい。虚勢を張って一人で頑張ってきたんだ。俺は涙が出てきた。俺は律子を抱き締めた。律子が顔を伏せて啜り上げた。
「俺のために子供を産んでくれないか。俺は全力でおまえと子供を守るから。お願いだ。子供を諦めないでくれ。」
俺は律子に語りかけた。律子は自分のお腹を掌で触ってしばらく撫でていた。
「ごめんね。頼りないお母さんで。ごめんね。」
律子は自分のお腹に向かってか細い声で言葉を掛けたあと、顔を上げて俺に言った。
「聡。お願い助けて。赤ちゃんを失いたくない。」
眼から涙を流しながら嗚咽混じりに本音を訴えてきた。俺はしっかりと律子を捕まえて応えた。
「だいじょうぶだ。俺がそばに居る。」
律子が翻意して俺が反対して律子の手術は中止になった。
やむを得ず律子の両親は孫が産まれてくることを認めた。
だが祝福してくれたわけじゃなかった。
「いらっしゃい。律子ちゃん。今日から私の娘ね。孫も出来るし、少し早いクリスマスプレゼントかしらね。サンタが一番下の息子というのは、気にしたら負けね。」
笑って律子を迎えてくれたのは、俺のお袋だ。親父がお袋に話をしてくれた。お袋は驚いたものの、昔から律子のことを知っていることもあって、すぐ受け入れてくれた。
律子は、両親との感情的なシコリが残り、自分の家にいることが出来ないと言って俺の家に来た。だが時間と共に律子の両親との関係もほぐさないといけないだろう。それは俺の仕事だ。俺の子供、娘か息子か分からないが、にとっては律子の両親は祖父母であることに変わりはないのだから。初めから絶縁はないだろう。
俺の二人の兄貴は、いきなり弟である俺が嫁を貰って子供も出来ていて、甥か姪かに伯父さんと呼ばれる立場になったことに愕然としていた。
「10代で伯父さんかよ。ありえねえわ。」
俺より2つ年上で高校3年の兄貴と3つ年上で大学1年の兄貴のセリフだ。
「でも律子ちゃんが、年下で良かったよ。これで年上の妹だとかだったら、どう接していいか分からんからな。」
「まあでも聡には父親として何とか合格点はやれるんじゃないかな。」
兄貴たちは俺の話を聞いて、男としては認めてくれたようだった。
律子は学校に休学届を出した。夏に出産してから、一年後の冬に、もう一度2年生で戻ることになるだろう。俺と同級生になる。同じクラスになるように学校と掛け合ってみる価値はあるだろう。
渚はすべてが終わったあとで、話を聞いて黙って俺の背中をバシバシ叩いてくれた。何も言わなかったが、俺たちを祝福してくれていることだけは分かった。律子には頭を撫でて子供服を約束していたのと、ずいぶんと待遇が違うと思ったが仕方ないだろう。
「パパ。」
律子が俺を呼ぶ。くすぐったいような引き締まるような思いがする呼ばれ方だ。
「どうした、律子。」
俺は律子のことをママと呼ばない。名前で律子と呼ぶ。俺が律子をママと呼ぶのは違うだろうと思っている。律子は俺の妻であって母親じゃないからな。
「赤ちゃんがお腹を蹴ったの。」
律子の腹は目立つようになってきている。時々赤ちゃんの脚が動くのが分かるようで律子は嬉しそうだ。
「そうか。元気な赤ちゃんで良かったな。」
俺は律子を後ろから抱きしめる。
「聡。あのとき恰好よかったよ。病室に来てくれた時、助けにきてくれたんだと本当にうれしかったんだからね。」
律子が病院での出来事を思い出して俺に言う。
「あのとき、諦めなくて良かった。産むことにして良かった。」
「タクシーの運ちゃんに感謝しないとな。」
「え、どういうこと。」
「タクシーの運ちゃんが、信号無視と速度無視して病院まで俺を運んでくれたんだ。病院でパトカーに捕まったけどね。」
「ええ、そんなことしたの。」
「ああ、でもそのおかげで間に合ったんだよ。点滴するまえでな。点滴が開始されていたら無理だったかもしれないしな。」
俺は無理を聞いて無茶をしてくれた運ちゃんに心から感謝した。感謝するだけでは終わらない。親父に力を貸して貰って、送ってくれたタクシー運ちゃんを見つけ出して、もう一度御礼を言って御礼をしておいた。運ちゃんは切符は結構痛かったらしいが、俺の結果を聞いて終わりよければ全て良しだ、人生思ったことは思い切りやれよと励ましてくれた。
人生はこれからだ。山あり谷ありだろう。子供が生まれてもそれで終わりじゃない。俺たちが親として同じ立場になることもあるだろう。そのとき親父やお袋のような態度が取れるか。人としての真価が問われるときが来るかもしれない。
だがしばらくだけは幸せのなかに浸りたい。俺は律子を抱き締めたまま二人で午睡に落ちた。寝ている俺たちに、お袋が静かにブランケットを掛けてくれた。
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