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第51話 王太子の変化

少し短めです

 王城の王太子用執務室で政務を行っているフィルジルの元へ書類を持ったルドルフがやってくるとルドルフは人払いをし、執務室にはフィルジルとルドルフが二人きりとなった。

 ここ暫くのフィルジルは感情を露にする事もなく淡々としておりそんな様子のフィルジルをルドルフは気に掛かっていた。


「フィルはあまり聞きたくはない話だと思うけど、一応報告だから耳にいれておくよ

 最近のストゥラーロ嬢の王妃教育の進みだけれど殆んど進んでいないようで本人も負担が多いと不満を言っているようだ

 恐らく彼女の魔力によるものだと思うけれど、そんな状態なのに講師を務めている面々はストゥラーロ嬢に対して悪く言う者は殆んどおらず、彼女を誉めてばかりだ」


「そうか」


「フィル、今のこの状況はあまり良いものだとは思わない

 ストゥラーロ嬢が王妃に相応しくないという事柄をこちらが揃えたとしても、ストゥラーロ嬢に心酔している臣下達は納得いかないだろう

 早めに手を打たないと王城に出入りしている人間の殆んどがストゥラーロ嬢を擁護してしまう」


「ルドルフ

 なら、お前は宰相候補であり王太子補佐としてどう動いたら良いと考えている?」


「え?」


「今の現状のまま放っておいて彼女が王太子妃、後は国母となっても構わないと思うか?」


「は?

 何を言っているんだよ!?

 フィルが自分の相手はミーシャでなければ嫌だと言ったんだよ!?

 このままミーシャを正妃にする事を諦めるつもりなのか?」


「俺の事を抜かしてルドルフの考えはどうなのかと聞いている

 俺が王位につくのかどうなのかは現状まだわからない

 後継者は俺しか居ない訳ではないからな、身体があまり丈夫でないとはいえ第二王子であるフィリップもいる

 例えば最終的に俺が継承権を放棄する手もある

 だが、彼女が王家に嫁ぐ事は今の現状では決定事項だ

 その相手が俺でなくてもだ

 その中で彼女が国母となってもルドルフはこの国の行く末は安泰だと思っているのかと俺は聞いている」


「安泰な訳がないだろ!?

 彼女には王妃は無理だ

 王妃になるとは、ただ権力が手に入る訳じゃない

 多大な重責に加え人々の信頼を得る為の振る舞い、それに伴う政務を捌く為の頭の回転力や手腕も必要だ

 この国の貴族の名前すら覚えられないような人間に務まる立場ではない

 今の彼女では、ただ権力をひけらかす能のない王妃になるだけで、王妃が動かなかった分他の者への負担が………っ!」


 ある事に気が付いたルドルフはフィルジルを見る。そんなルドルフを表情を変えないでフィルジルは見据えた。


「光の魔力の保持者と言われながらあの女が使う力は魅了の力ばかりで、他の力を使っている所を俺達は見たことがない

 国でわざわざ保護までする力を保持するにはあまりにお粗末だ

 他にもっと国に役に立つ力を持っているのかもわからない

 それなのに、現状は既にいた王太子の婚約者を押し退けてまで王太子の婚約者に決定された

 それはまるであの女の周りにいる革新派の思いどおりになるかのように

 あの女が王太子妃になりさらに王妃になった時、政務を捌く能力があの女になければ代わりの者があの女の政務を手伝う

 その者があの女が侍らしている革新派の者であったら?

 それを見越して、光の魔力なんてものは持ち合わせていないのにも関わらずあの女が何故か使える魅了の力で今のこの現状をあの女の周囲が作り出していたら?」


 思案顔になったルドルフにフィルジルはさらに言葉を続けた。


「以前、ミーシャを襲う計画をたてたイェーガー家の子息があの女の事を語った時のあの異常な程の心酔の仕方はあの時は魅了の力のせいなのかと思っていたが、今周囲にいる魅了の力を使われたかと思われる者のあの女への心酔の大きさに差があるように感じている

 流石に、王太子へ嫁がせようとしている娘に男が溺れる為の男女で一番手っ取り早い方法を使わせる事はリスクは大きいと思うが……この現状のような強引なやり方を押し通す者達なら考えられなくもない」


「フィル……自分が言っている事の意味をわかっているのか?」


「ああ……お前が気が進まないなら他の方法で調べてもいい

 イェーガー家の子息と同時期から隣に侍らしていたサイモン家の嫡男から探っても構わない

 あの女の不利となる事柄全てを宰相候補の立場として調べあげろ

 幼馴染みとしての俺やミーシャの事は関係なしでこの国の未来を見据えて動け」


 ルドルフは目の前にいるフィルジルが普段の自分へ向けるような感情はなく、感情を感じられないような表情で冷徹な王太子の姿として自分へ命令している姿に、今までは限られた人間には晒してくれていた偽りでない本来の姿を封印してしまったのではないだろうかという複雑な心境になった。

 そんなルドルフの胸中を感じ取ったのかフィルジルはルドルフへ目を向ける。


「何だ?」


「あ……いや……さっきフィルが口にしていた王位継承権を放棄するとか……本気じゃないよな?

 あと……ミーシャの事は関係なしって……お前はミーシャを絶対に手放すつもりはない事は変わっていないよな?」


「……そういう馴れ合いのような感情は全て捨てて動け

 そういう甘さは相手から付け込まれる弱味になる

 今、俺は王太子として、王太子補佐で宰相候補のルドルフ·スタンリーに指示を出している」


「フィル……」


 複雑な表情のルドルフへフィルジルは言葉を続けた。


「お前があの女を調べている間、俺は王太子として正面から王太子の婚約者であるあの女の真意を探る」


 フィルジルが語った事はフィルジルの婚約者としてキャロルが指名された時からフィルジルが大きく抵抗し嫌悪感を示していた事であった。

 フィルジルに纏わりつくかのように接するキャロルをフィルジルは表向きの姿で当たり障りなく接しており、それ以上キャロルとは深く関わろうとはしていなかった。

 それは自分の意向を無視されたフィルジルの小さな抵抗であった。

 しかし、今ルドルフへ語った言葉は婚約者として深く関わると言ったのだ。そんなフィルジルの様子にルドルフはさらに複雑な心境になった。




ここまで読んで頂きありがとうございます!


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