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第30話 探る

 王城で一日の王妃教育を終えたミーシャが回廊を歩いている時、先の回廊でキャロルをエスコートしているルドルフの姿を見つけた。


(………え……ルドルフと……キャロル様……?)


 ルドルフがにこやかにキャロルをエスコートしている姿にミーシャは複雑な心境になる。

 学院で何人もの子息達と一緒に過ごしている時と同じようにルドルフへも満面の笑みで接しているキャロルの事をあの子息達と同じようにルドルフも好意を持ったのかもしれないと感じ、ミーシャはモヤモヤとした感覚を覚えるが、ルドルフには婚約者もいないしあの子息達とは違うと自分に言い聞かす。しかし、それならば自分へ対してのルドルフのあの告白は何だったのだろうかとなんともいえない気持ちをミーシャは感じた。自分はフィルジルの婚約者でフィルジルへ想いを向けているくせにルドルフが他の令嬢と一緒に居る事にモヤモヤする立場ではないとは思ったがその相手がキャロルであるという事に複雑な気持ちは収まらなく、そんな自分の考えは自己中心的な考えのような気持ちにもなり自己嫌悪に陥るミーシャの背後から彼女の名前を呼んだのはフィルジルであった。


「ミーシャ」


「え……フィル……?」


「そこのガゼボで少し二人で一緒に話をしないかい?」


「話……?」


 ガゼボへ場所を移した後フィルジルは口を開く。


「ルドルフとストゥラーロ嬢の姿を見たんだろ?」


「え?

 ええ……そこの回廊で……キャロル様……と……楽しそうにご一緒に居たのを……」


「ストゥラーロ嬢が周囲に侍らしているような子息達とはルドルフは違う事をお前には言っておく」


「違う……?」


「あの女自身やあの女の周囲を取り巻く人間の思惑を調べる為にルドルフ自身が名乗りを上げてくれてルドルフがあの女の傍へ近付いているんだ」


「調べる……?」


「……………本来なら……王族以外口外してはいけない事柄だ……

 だが、あの女がお前に何度も接触している状況に父上へ何度もその事柄をお前に伝える許しを得る為に話し合いをしていた

 先日、漸く父上……陛下が首を縦に振ってくれ許しを得たんだ

 この事を知る者は王国内で数名しかいない

 だから今から聞いたことはお前の中に留めておいてくれ」


 フィルジルの話す内容にそんな事を自分が聞いてしまっても良いかと不安になるミーシャだったがフィルジルの真剣な様子に頷いた。

 フィルジルは周囲を一度伺いガゼボの周囲を防音の魔術で囲み話し始めた。


「公にされてはいないが光の魔力の一つには周囲の人間を自分の思うままに操る力があるとの事なんだ

 魅了の力といったらわかりやすいだろうか?」


「魅了の……力?」


「これは、俺の推測だが……

 おそらくストゥラーロ嬢へ好意を見せている彼女が周囲に侍らしている子息達は彼女の力が関係しているのではないかと思っている

 そして、以前お前が言っていたとおり彼女が子息達を侍らす事を悪い事だと思わず、そうなるように子息達へ自分の力を使っているようなら……今後の事も考えて調べていかなければならないとなったんだ

 彼女自身が子息達から好意を持たれたくてそうしているのか、彼女の周りの人間が何か企みがあってそうなるように彼女に勧めているのかそれを見極めなければならない」


「でも……そんな力があるならルドルフも……」


「それも、王族以外公にされていない事だが、王族の血筋だけに伝わる秘術で受け継がれている力があるんだよ

 闇の魔力とも呼ばれていて、己へ向けられるどんな魔力も無効化にする力だ」


「闇の……魔力……?」


「ルドルフやヴィオレットの母親は、父上の姉で王女という立場からスタンリー家へ降嫁している事はお前も知っているな?

 俺の従兄弟であるルドルフは王族の直系ではないが、俺と同じ濃さの王族の血筋であるんだ

 ルドルフの父親の宰相の家系も、お前の父親のフェンデル公爵の家系も何代か前の代に王族から臣下へ降下した者や降嫁した王族がいて王族の血脈を受け継いでいるから闇の魔力を持っている

 だから、おそらくお前やお前の弟のリアンも俺やルドルフ程濃くはないが闇の魔力を保持していると思うんだ

 公にされていない事であるし、その力は他の者にわからないようになる特性があるから親が子へ伝えないかぎり本人もわからず封印具を外す試験でも試験官すらわからない

 その力を持っているから、あの女の魔力は俺やルドルフには効かない」


 ミーシャはフィルジルの話に以前キャロルが『フィルジル様はどうしたら私と仲良くなってくれるのですか?

 こんなに、余所余所しい態度をずっととられるなんて私、初めてです』と、話していた事を思い出しキャロルが自分の意思でフィルジルへ魅了の力を使ったのかもしれないと感じ、フィルジルの顔を見た。


「お前が今思った通りであると俺も思っている

 一番初めに違和感を感じたのは入学祝いパーティーであの女に初めて会った時だ

 彼女の俺へ向ける視線に何かが含まれているような感覚を覚えた

 おそらくこの推測はあたっている……

 後はどんな思惑を持っているのかわからないが……俺達とは全く違う考え方を持っているから察し難くだからルドルフが自分から彼女へ近付いたんだ

 もし、ミーシャがルドルフがあの女に好意を持ったのかもしれないと勘違いしていたら、あまりにもあいつが不憫だからこの事をお前に伝えた……」


「フィルとルドルフは本当に信頼しあっているのね」


「ぶつかる事も多いけどな……

 だけど、今俺がこうしてお前に真相を伝えた事は表には出さないでほしい

 どちらかというと勘違いしている振りをしていてくれた方が好都合かもしれない」


「勘違いしている振り?」


「ストゥラーロ嬢がお前の傍にいる者を自分の周りにおきたいと思っているのなら、今の状況であればきっとお前へ何かの態度を示してくるだろう?」


「キャロル様が私にそんなに拘っているかはわからないけれど……振る舞い方に気を付けるわね

 でも、教えてくれてありがとう

 ルドルフとは幼馴染みである関係なのにさっきの姿を見てなんだか複雑な気持ちになったの……だから───」


 ミーシャの言葉にフィルジルはミーシャが座っているガゼボの椅子の背もたれに手を置きミーシャを見下ろし見詰めた。


「フィル……?」


「その言葉は……ルドルフがストゥラーロ嬢へ取られたと感じたからなのか?」


「えっ!? 取られた?

 そういうのではないけれど……なんていうか……

 人の事をあまりこう言うのは良くないとは思うけど……私……きっとキャロル様へ良い印象を持っていないから……そんな方へルドルフが好意を持ったのかもしれないと思ったらなんだか嫌でルドルフにはもっと相応しい方がいるんじゃっないかって思って……すごく自分勝手な考えなんだけどね……」


「…………誰がなんと言おうと……お前は俺の婚約者だからな」


「え? それは……」


「俺は絶対にお前以外の人間を婚約者になんてしないからな!」


「フィル?」


「返事は?」


「返事!?」


「返事だよ!」


「は、はい……」


 フィルジルはミーシャの髪の毛を一束掬い取ると自分の唇を寄せた。


「お前は俺の中でもう仮初めの婚約者なんかじゃないんだ

 お前にもそれは自覚しておいてほしい」


 自分の想いを真っ直ぐ伝えてくるフィルジルの真剣な様子にミーシャは胸が苦しくなる。ミーシャ自身の本音はこのままフィルジルの隣にいたい。しかし、もしフィルジルの隣から去らなければならない選択を迫られる事があったら……自分が選択しようとしている事をフィルジルが知ったらどう感じるのだろうかと苦しくなった。








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