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第25話 封印された過去

今回のお話はミーシャとフィルジルの過去のお話になります。

 ───今から十三年前に遡る……

 王城の庭園では二人の幼い子どもが走り回っていた。


『フィル、こっちよ! 早く!』


『ミーシャ! そっちには近付いたら駄目だって父上が……』


『王城にこんな所があるなんて知らなかった』


 幼い頃のミーシャとフィルジルが足を踏み入れたのは王城の庭園の雰囲気とは全く違う木が生い茂り固い土の地面がゴツゴツとしているような場所であった。


『……僕も……こんな場所……知らなかった……』


『ねぇ……あれ……何?」


 二人が目にしたのは少し盛り上がった地面に古びた剣が差し込まれたものであった。

 二人とも本当は何となく触ってはいけないものであると気が付いていたが、それよりも好奇心の方が勝ってしまった。

 二人の手が剣に触れた時に地中から這い出てきたのは黒く姿形がはっきりしないもので、その黒い()()は二人の精神へ言葉を掛ける。


『愚かな子ども等め……封印を解いた事を感謝しよう……感謝の証しに……お前等の柔らかい肉と穢れていない魂を我が喰らってやろう……』


『いやっ……』


『ミーシャっ!! 早く逃げよう!』


『キャッ……』


『ミーシャ! 早く手を……』


 その場から逃げようとしたミーシャが転びそんなミーシャを助けようとフィルジルはミーシャの手を掴むが黒い()()は二人へ迫る、その時フィルジルが自分の腕に付いていた封印具を外すと最近覚えたばかりの魔法で火の塊を具現化し黒い()()へ投げつける。


『こっちに来るなっ!!』


『そんなものは我には効かん……さぁ……お前等の柔らかい肉と無垢な魂をよこせ……』


 黒い()()が二人へ襲いかかろうとした時、目が眩むような光が辺りを包んだ。





 フィルジルとミーシャがいつの間にか王城の庭園から姿が見えなくなり、国王夫妻とフェンデル公爵夫妻、宰相補佐であるドレイクが護衛達と一緒に二人を探していた時に王城の禁域での異変に気が付いたヴィンセントは王妃のリリアとフェンデル公爵夫妻、宰相を伴って禁域へ向かうとそこに倒れていたのはフィルジルとミーシャでその傍らには白髪の長身の男が立っていた。


『フィル!!』


『ミーシャっ!』


 その男の容貌に覚えがあったヴィンセントは口を開く。


『貴方は……もしかして……精霊王でありますか……?』


『お前は……?』


 正式な礼をヴィンセントは男へとる。


『私はこの王国の王太子でヴィンセント・ローディエンストックと申します

 他の者は私の妻と、臣下の者でありますが……』


 ヴィンセントはリリアとユリウスやルーシェが目を覚まさないフィルジルやミーシャに何度も声を掛けている様子が目に入り、その場には、禁域の管理を任されていた魔術師のロウルも駆け付けていた。


『あの幼い子ども達は、俺が意図的に眠らせている

 封印していた魔王の封印を解いたようだ』


『魔王のっ!?』


『異変を感じて、この人間界へ俺が降りた時には全てが浄化されていた』


『浄化……?』


『俺と、この王国の建国者であるルディの力を持ってしても封印しかできなかった人間界と精霊界を劣悪な状態にした魔王をこの二人が浄化した後であった』


『子どもであるこの子達が最恐の力を持っているとされている魔王を浄化したというのですか?』


『この男児はこの国の王子であろう?

 この者から強い闇の魔力を感じるからな、その他にも火、水、土、風、それと氷か? これだけの数の力を持っているとはルディを見ているようだ……先祖返りとでもいうのだろうかな……

 それに……この、女児は面白いな……』


『面白い……?』


『人間が、このような力を持っているのは俺も初めて見た……』


『何を言っているのですか……?』


『人であるのに精霊と同じ性質の力を持っているとは……

 ただ、この力を人がコントロールして扱うには多大な代償が必要となるだろうがな……』


『代償……?』


『ああ……自分の命という代償がな……』


 精霊王の言葉にミーシャの両親であるユリウスとルーシェはヒュッと息が詰まった。


『命……?』


『己の魔力を使うだけ自分の命が削られるという事だ

 人の命とは脆いものだからな……』


『………それで……この子達が魔王と接触して浄化したという事は……

 この子達へ何か影響はあるのでしょうか……?』


『この禁域は結界を張ってあったのにも関わらず、この子ども達がすんなりと入れたという事、そしてあれ程の力を持った魔王を浄化したという事はこの子ども達が大きな魔力を持っているという事であって、身体には何も影響はないかと思うが……

 この幼さで魔王と接触した事に精神への影響はあるかもしれない

 俺が今日の事だけでなく、この子ども同士の関係性もなかった事に王国全体への記憶を封印しよう

 まぁ、多少覚えていた者がいた方がいいというのであるのなら、ここに居る大人達の記憶は弄らずにいようか……』


 その時、ミーシャを抱き締めていたルーシェが口を開く。


『精霊王、そして陛下お話の途中で口を挟んで申し訳ありません!

 ですが……一つだけ……精霊王へお聞きしたいのです!』


『何だ?』


『ミーシャは……精霊の魔力を持っているというミーシャはこれからどうなってしまうのでしょうか……?

 魔力を使ったら命を削られてしまうなんて……』


『子が心配というのか……

 そうだな……俺の魔力を移した魔石をやろう

 命の代わりにその魔石が魔力を使った時の力を吸収する依り代となる筈だ』


『ありがとうございます……』


 涙を溢すルーシェをユリウスは抱き寄せ、そしてヴィンセントは精霊王へ言葉を掛ける。


『このまま……一生この二人は関わりのない生涯を過ごした方が宜しいのでしょうか……?』


『別に……精神が育った時であれば二人が関わろうがこの日の事を思い出そうが、不都合はないであろう

 では、一つこの子ども達へ鍵を授けようか

 何も覚えていない状況で出会いそこからお互いの事が必要だと自分で認識し相手へその気持ちを伝え合った時、俺がこの二人の記憶を戻しにこよう

 その時が来るのか来ないのかそれはこの二人の未来しか知らない事だ』


 こうしてミーシャとフィルジル、そして幼い二人が生まれた時から関り合いがあり仲良く遊んでいた間柄であるという事から、この日魔王の封印を無意識に二人が解き浄化した事まで、その場にいた二人の両親、宰相補佐のドレイク、魔術師のロウル以外のミーシャとフィルジルの関係性を知る王国の国民全員の記憶を精霊王によって封印された。



ここまで読んで頂きありがとうございます!




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