ブロック
1
時間はたんたん。
たんたんと、流れた。
今、私は中間テストをしている。
あれから何日か経ち、いつしか冬服が暑苦しい。
季節は初夏で、衣替えには少し早い。
今、私はテスト真っ最中。
ここまでの手応えは、なかなかいい。
読みが当たっている。
もちろん、それだけではない。
普段の勉強もしっかりしている。
これはいっとく。
キンコンカンコン!
よし、終わった。
私はテストを教室にあるメインパソコンへ送信する。
送信OKが表示されると画面を消す。
一度立ち上げると、パターン画面になっている。
つまりセキュリティーチェックをした。
指でなぞると、データは解除される。
よし、大丈夫!
私も変な所で、心配性だな。
「ねぇ、やよいちゃん、教室出よう」
アカネが私の横にきて、いった。
私は少し考え、アカネに付き合うことにした。
「次は英語よね。ヒアリングのために、タブレットは教室に置いてこ」
アカネがいった。
私はうなずき、タブレットをそのままにする。
「よし、行こう! のどカラカラ」
アカネが笑う。
本当にコイツは!
まいいいか。
テストはあと一科目、英語、その前に気分転換しようかな。
そう思いながら、私は教室を出た。
2
休憩は、三十分ある。
普段は十分だから、多めに設定されている。
理由は英語だから。
もっと噛み砕くと、英語のテストはヒアリングがあるからだ。
文字で書いてあるテストは、フォルダーからすぐに送信される。それに対しヒアリングは、動画をタブレットに送信するため多少重くなる。
でもそのおかげで、教室から出て自販機でジュースを買ったりして息抜きする生徒も少なくない。
私達みたいに。
「頭を使うのは、のどがカラカラになるよね」
アカネが、笑う。
「どうだった?」
私がテストのこれまでを聞く。
「なかなか、難しいね」
そういって、右手をグーパーさせる。
この子、願い事や上手くいくようにするときは、今のクセをよくする。
聞いた訳ではない。
私が観察して、導いた答だ。
自販機にはたくさんの人集りがある。
みんな考えることはいっしょ。
「仕方ないね、売店行こうか?」
私はアカネにいった。
アカネは、静かにうなずいた。
3
売店にはお菓子、パン、ジュース等がある。
今お目当てはジュース。
考えることは、みんな同じ。
そしてやはりすごい人集り。
「いっぱいだよ」
アカネが、しょぼくれる。
おそらく、「帰ろう」となるな。
私はそう考え。
理由はアカネは、待つことがキライ。
なんだか、すぐにイライラする。
私も結構待つのが好きではないが、アカネは私以上にせっかちな一面がある。
「少し待とうか」
アカネがいきなり、いう。
……え?
私はみた。
「うそ、待つの? いつもならあきらめるのに」
「別に、それに水分補給したいから」
アカネがいった。
それほど、のどが渇いてるのか。
仕方ないな。
私は待つことにした。
私達がレジにくると、私とアカネが紙パックのジュースをみせる。
お金を積算すると、売店を出てジュースを飲み始めた。
「はあー、おいしい」
アカネが笑う。
私もつられて笑う。
「あと、少しでテストも終わり。テスト終わったら、どうする?」
アカネがいった。
「まだ終わってない。だから、今はテスト集中!」
私はこたえる。
アカネは笑う。
やっぱり、そんな感じで。
少し話を私はしている。
時間はコクコクと過ぎるけど、お喋りは楽しい。
本当にいい、気分転換だ。
おかげで、紙パックのジュースを飲みきった。
「そろそろ、時間だね」
アカネがいう。
私はうなずく。そして少し不思議だった。
アカネがほとんど、ジュースを口にしていない。
最初は口にしたが、その後は全く飲んでなない。
「ジュース、飲まないの?」
私がいう。
「う、うん、なんだか、口に合わないから」
アカネが返す。
私は「ふうん」というと、教室へ戻ろうといった。
アカネはうなずく。
少し引っかかるけど、何も考えないようにしよう。
4
私とアカネが教室に入ろとすると、反対側の廊下から優子が歩いてくるのが窓ガラス越しにみえた。
私のいる教室は二年生のクラス並びの端にあり、壁の右横に直角に折れて廊下は続く。
そこから優子が、教室に戻ってくる。
「優子だね」
アカネがいった。
その顔はすごく真剣だった。
いつもなら、おどけるこの子なのに。
優子が廊下を曲がり、私達と目があう。
「アカネ! や、よい。もうすぐ開始よ」
優子の声が、しずんでいる。
山田との口ゲンカ、あれ以来、私がみる優子はおかしい。
間違いなく、山田と何かあった。
あいつ……。
「うん、優子、教室行こう。大丈夫だから」
アカネがいった。
私もうなずく。
優子はなんだか泣きそうな、顔をしていた。
理由はわからない。
だけど私にはそう見えた。
どうしてだろう?
私が教室に入ると、山田がいる。
コイツと私は席が近いから、嫌でも顔が合う。
いつも何か一言がある。
そしていつも私が引き気味になる。
私が嫌っていることを、気がついてない鈍感なヤツ!
また一言あるなと、私が警戒しながら近寄っていく……あれ?
私は少し驚いた。
何も声が、ない。
それどころか、目線を合わせてなかった。
テストだから?
ちがうテスト期間でも迷わず、ちょっかいがあった。
それがなぜ? まあ、私は嬉しいけどさ。
さて、はじまる。
一学期最後の中間テスト。
がんばる!
5
チャイムと共に、教室の生徒が席につく。
私もその一人だ。
耳にイヤホンを付け、準備万端でタブレットを入れた。
はじめる。
!!!
私は驚いた。
そして大きな声を上げる。
「先生! 私のパターンがブロックされています!」
みんなの視線が自然に集まる。
そこで私は、真っ青にだった。
パターンは一度ブロックされたら、少なくとも三十分から一時間は解除されない。
つまりテストが受けられない。
これは誰かが、タブレットを触りいたずらしたことになる。
どうして?
私は……。