くちげんか
1
テスト前日、学校は早く終わる。
みんな早々と下校する。
そういう私も下校中。
「今回のテスト、簡単かな?」
はしゃぐように、アカネがいった。
なんだかお祭り気分になっているみたい。
この子、こういう行事は好きだから。
例え中間テストとしても。
「範囲はせまい、作成する先生は、優しい方々ばかりだからおそらく簡単かな?」
私の意見をいう。
アカネがウンウンとうなずく。
2
私とアカネはしばらく何気ない会話で、歩いている。
人気は思ったほど多くない。
いや私とアカネだけ。
「誰もいないね」
「そうだね」
そういいながら、歩いている。
すると小さな公園がみえた。
この公園からは、私とアカネは別々の道をあるく。
つまり家のある方向が、ちがうから。
そろそろ、アカネと別々か……そんな矢先だった。
「バカ! 貴史のバカ!」
「優子、俺とお前は、幼なじみたげど……」
「なんでぇ……」
私とアカネは公園でいい争っている男女を、みていた。
その男女……山田と優子だ。
私はとっさに物影に隠れる。
アカネも同じように、私に寄り添う。
「私は小さい頃から今まで、気持ちはいっしょ」
「幼なじみたげど、それだけだ」
「なんでぇ」
二人の激しいやりとりに、私とアカネは顔を見合わせる。
「もういい、だけど私は認めない!」
「おい!」
優子が走り出す。
山田は後を追いかける素振りをしたが、公園に止まりため息をつく。
「どうしよう?」
私がアカネにきいた。
「やよいちゃん、帰って。私は二人を確かめる。帰り道方向が同じだから。スマホで報告するよ」
「私も……」
「山田、大丈夫?」
私はビクッとした。
山田、その名前をきいただけで、体が寄せ付けない。
「山田、無理でしょ。私が上手くやる。それと、優子もまかせて」
アカネの瞳がキラキラしている。
この子、こういう修羅場が大好きなのよね。
でもここは、まかせよう。
「おねがい、私は帰るよ。優子は心配だけど、山田が無理だから」
そういった。
アカネはクスクス笑い、バイバイと手を拭り別れた。
私はアカネにまかせて、山田に見つからないようその場をはなれる。
一体、山田と優子に何があったのか?
3
家に帰るとまずは部屋で、くつろいでいる。
ベッドに寝そべり、ジャージ姿でスマホをいじる。
SNSを開き、アカネを待つ。
こちらは無料だから、使い放題使わないとね。
あっ、きたきた! アカネからの連絡!
『やよいちゃん、オス!』
『アカネ、こんにちわ、どうだった?』
『喧嘩の原因、よくあることだね』
『ん? よくある』
私は頭を捻る。
よくあるとは?
『人間関係のもつれ』
『は? なにそれ』
『私、山田にきいたけど、山田さ気になるヤツがいるんだよ』
『ふうん』
山田のことは、軽く流す。
聞いてもいいけど、耳にあまり入らないかも知れない。
この場合は、目だけど。
『つまり気を引きたい相手がいるの』
ふうん。アカネの情報に「あっそう」と口に出た。
これは聞こえないから、遠慮しないで口にする。
『ところで、優子は?』
私は話を変えようとする。
山田のことは、もういい。
『優子、少し感情的だった』
アカネからのチャットが入る。
『なんで?』
私が打ち返す。
『山田のこと、一番知ってる。だけど、裏切られたって!』
『え! 山田にひどいことされたの!』
『してないよ』
『はい?』
見えてこない。
つかめないな。
アカネの会話はいつも謎めいている。こんな感じだけど、今回はすごい謎めき方だな。
『ごめん、母さんが呼んでる』
『わかった、それじゃあ』
そう打ち込んで、スマホを投げる。
しばらく天井を見上げる。
よくわからないな……。
一つわかること、テスト勉強しないとね。
ベッドから降りると、いきなり机に向かった。
勉強……したくないけどね。