第4話
凛と2人で帰宅していると、どこか寄ってこうと言うので近くの喫茶店いる。
凛は珈琲が飲めないので甘めのミルクティー。
龍真は珈琲を飲んでいる。
暫く無言の時間が流れ、唐突に凛が、
「龍真!悩みがあるなら聞くよ?」
と聞くが特に思い付かない龍真は数秒思案したが、
「特に無い。」
龍真は淡々と返す。
「嘘だ!だってあの時の表情は…。」
その発言を聞いて何かを言い淀ませた。
(凛が言い淀むなんて珍しいな。普段なら良くも悪くも思った事を何でも口にするのにな。)
「何かあったのか?」
感情が乗らない分、龍真は心の中と外の言葉を同時進行で進められる無駄な特技がある。
「何かあるのは龍真の方でしょ‼︎ん〜…もういい!」
拗ねてしまった。
ただそれで特に困る事は起きないので、
「そうか。」
淡々と会話を終わらせた。
自分がいつもと違うと気付いていながら追求も言及もしてこない龍真を不満顔で眺めながら何かを堪えながら凛もそれ以上その話題に触れるのはやめた。
龍真には普通の凛には居心地が悪い、無言の時間が続き耐えられなくなった凛が話題を振る。
「龍真は将来何がしたい?」
話題転換だと分かる発言なので、素直に乗る。
「今探し中。凛は?」
勿論、サラサラと嘘を垂れ流す龍真。
「私も探し中…。と言うか進路すら定まってないからな…。ハハハ…。」
渇いた笑いを吐き出しながらそう答えた凛。
「さっきも言ったけど、今すぐ決める必要は無いだろ?悩むのは何かやりたい事を見つける為に前に進もうとしてる証拠だから不安がる必要は無い。」
声音は無感情ながら龍真の言葉は凛を介して優しさに変換され、凛の暗く沈んだ気持ちを浮き上がらせるに足りた。
「ありがとう。やっぱ龍真は優しいね。うん。それでこそ龍真だ!これからも変わらず優しい龍真でいてね。」
輝く花々の如く満開の笑顔で凛が応えた。
が、龍真は思考が一瞬停止した。
というのも龍真には凛の発言の意味が理解出来なかったからだ。
(優しい?自分が?)
思考が戻っても頭は少なからず混乱していたが、音にそれが漏れるのは回避した。
「あぁ…。」唯一絞り出した言葉はこれが精一杯だった。
それからは他愛も無い会話をした後、喫茶店から帰路に着いた。
別れ際に凛が、
「龍真は優しいけど少し考えてみて、龍真が理解していないだけで無意識に…。」
そこで言葉に詰まったが、決心したのか
「心が壊れていっている気がする…。」
自宅のベッドの上で少し考えてみる…。
凛からの別れ際の言葉が龍真の頭をぐるぐると
廻る。
(壊れている気がする…か……。)
そう自分自身に嘲笑を向けながら、昔の自分の記憶を探る為に深層部まで潜っていく…。