第3話
(退屈な授業に退屈な休み時間…。)
休み時間には何人かの友達が話し掛けにくるも、誰に対しても淡々と素っ気ない返答を続ける龍真。
今までそんな会話ばかりしてきたからか、龍真の周りに残ってる友人はそんな彼を受け入れてくれる大切な存在の筈だが、龍真はそのような大切に想う心が壊れたままなので何も感じていなかった。
そんな退屈な時間を過ごしながら、放課後のHRには進路希望を決めろと言われていた。
普通なら夢の為に大学や短大、すぐ就職など色々と考える時期だが夢ややりたい事もなく、ぽっかり穴の空いた心では何も思い浮かばなかった。
そんな事を考えながら凛を教室まで迎えに行くと友達と話し込んでいた。
(友達と居るならソイツ等と帰れよ。)
と心の中で呟きながら、
「凛、帰るぞ。」
心とは違う文言を伝え。
「ちょっと待って龍真!こっち来て少し手伝ってー!」と懇願してくる凛。
「少しだけだぞ…。」
無機質に応えて近付いていくと、凛の友達が誰だコイツオーラを放っていた。
「凛、彼氏居たの⁉︎」
「あのガサツで色気の無い凛が!?」
「どういう事なの!?」
友達からの散々な言われ様に、
「彼氏じゃなくて幼馴染だから!というかそんなボロクソ言わなくても…良いと…思いますよ。」
反論したが、自覚している部分もあるらしく後半尻すぼみになってしまった。
そんなやり取りを興味関心が無い龍真が、
「先帰っていい?」
と言いながら立ち去ろうとすると、制服の裾を掴まれて、「待った!色々問題あるから待って!」と凛が慌てて静止させた。
必死になって友達を説得する凛の姿を見ながら、たまに相槌を求められ機械的に対応する龍真。
そんなやり取りがしばらく続き、漸く終わりを見せたので改めて凛に用件を尋ねる。
「龍真はこれからどうするの?」
進路希望の用紙を見せながら問うてきた。
話を聞けば他の友達は全員進学希望らしく、夢を実現する為に羽ばたく未来溢れる若者だ。
「適当に進学するわ。まだ期限まで時間あるから今無理矢理決めなくてもいいだろ?」
現時点で何にも興味が持てない龍真は投げやりに応え、凛の悩みにも関心がないので話題を収束させる発言をする。
「そうかな…うん…龍真がそう言うならもう少し考えてみる。ありがとうね。」
少し躊躇逡巡した後、向日葵の様な笑顔を向けてきた。
そこで話は途切れ、やっと帰れると思った矢先
「いたっ!」
凛の言葉で中断した。
どうやら、用紙で指を切ったらしい。
赤い、紅い、鮮血が用紙の上に滴り落ちる。
友達達が軽傷に安堵しながら絆創膏を用意していた。
その最中に龍真は1つの感情が支配していた。
激情がその心を掌握し、たった1つの感情が心を満たしていた、それは歓喜だった。
その感情が何故生まれたのか。
何故顕現したのか。
その理由が解らないが、眼の奥は深淵の様にどこまでも闇く淀んでいたが口元は笑みを浮かべていた。
その表情を凛だけが捉えていた…。