突然の来客。
しばらく投稿していないのにこんなに少なくて申し訳ありません。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」
杏梨は、頭上めがけて落ちてくるライトを、すんでのところでかわす。
ライトはものの見事に砕け散り、破片が杏梨の上履きをかすめた。
「だ、大丈夫!? 杏梨!」
「へ、平気、平気だよ香帆!」
駆け寄ってくる親友に、杏梨は言った。
「大丈夫ですか、岡崎さん!」
「はい、大丈夫です!」
先生にも心配され、杏梨は心臓の音がバクバク鳴りながらもそう答える。
「あーびっくりした。大丈夫だったの?」
「ライトが落ちてくるなんて、体育館の天井が脆かったんじゃないの」
「杏梨、怪我ない?」
(おぉ……。私が殺されそうになってもお見舞いにも来てくれなかった男子達が、今、私の心配をしてくれるだなんて……)
杏梨はそんな下らないことに感心しながらも、周りに怪我はないか、辺りを見渡す。
どうやら破片が当たったり、怪我した人は幸い一人もいなかったようだ。
「大丈夫!?」
友実や里桜、咲希達がわらわらと集まってくる。
「杏梨が怪我しちゃったら、卒業式を祝う意味がなくなっちゃうよ!」
(な、何て嬉しいことを言ってくれるんだ、里桜ちゃん)
天然少女の健気な一言に救われる、頼りない先輩これいかに。
いったん、卒業式練習は中止になった。どうやら体育館のライトのネジが緩んでいたらしく、それが運悪く落下したらしい。もしかしたらネジが緩んでいるものがあるかもしれない、ということで、卒業式練習は中止。児童が下校した後にまたネジの調節をするらしかった。
「いやぁ、あれは災難だったね。けど、何もなかっただけ、よかったよ」
給食を運ぶ杏梨の横で、ホッとしたような笑みを浮かべる香帆。
「うん。本当に、死ぬかと思った。卒業式出席できなかったら、私死んじゃうよ」
杏梨がひとたびため息をつくと、香帆も「それでこそ杏梨だ」とホッとしたような表情になる。
「どうしたって、私なんかの所に落ちてくるのかね。もしかして私って恨まれてたりする?」
給食を机に置き、杏梨は人差し指を自分に向けながら尋ねる。
すると香帆は、何故か鼻で笑いながら言った。
「まっさか。どっちらかっていうと、恨むタイプでしょ」
「ご名答」
(まぁ正直なこと言っちゃうと、本当は彩子さんのことだって、ちょっぴり恨んでいたのかもしれないし)
東風谷がお見舞いに来てくれたとき。東風谷が杏梨に向けるその優しげな瞳が、久しぶりに向けられたものだと思い、杏梨は少し嬉しく思った。
それと同時に、この優しげな瞳は、つい最近までずっと彩子に向けられていたのだと気付いた途端、空しくなったのだ。
そして、杏梨は彩子にずっと嫉妬し、ずっと恨んでいたのだと知った。
自分は何て最低なんだろう、と杏梨は何度も思った。あんなに優しくて美人で明るい人を恨むなんて、自分はどうかしている。何より、彩子と自分は、立場や元々の出来が違うのだからと思い直したが、それはどうも直るわけでもなかった。
「はぁ」
杏梨は少しだけ、ため息を吐く。
(こんな感じで、私、中学生になれるのかな?)
そう思った矢先。
「岡崎ー。お呼び出しだぞー」
教室の外で騒いでいた男子が、ふと、杏梨を呼んだ。
正確には、杏梨に用がある人のために呼んだのだが。
「……何だろ」
はーい、と杏梨は駆け寄っていく。廊下はまだ少しだけ寒い。
そこにいた人物に、杏梨は息をのんで尋ねる。
「どうしたんですか? 祐真さん」




