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ナイト・チルドレン  作者: けふまろ
東風谷の初恋の少女
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27/40

彩子の中学校生活。

 不規則投稿だからと言って、さすがにこのペースは非常にマズイと思った私。

 ちなみに夜が全く関係ない。

 彩子は、男子からは好かれるが、女子からは全くと言っていいほど好かれない。好きでいてくれる人が殆どいない。

 杏梨は気まずい空間の中、瞬時に感じ取った。

(先ほどの、ユーフォニアムと区別がつかないようないかつい男子達が彩子さんに話しかけた時は、両方ともすっごく楽しそうな顔してたな。ユーフォニアム男子達は、彩子さんに負けず劣らず、楽しそうだったし。

 でも、今、彩子さんを突き飛ばした蛇の擬人化女子達は、彩子さんを意地悪い笑みで突き飛ばした。……もしかして、彩子さん、男子にモテているから、女子に好かれていないんじゃ……)

 杏梨はそこまで考えて、いや、と反論を見出す。

(あんなに可愛くて優しくて美人な彩子さんだよ? 男女どちらにも好かれているんじゃないのかな? 私だって、東風谷の初恋の人が一井昭喜の女版みたいな奴じゃなくてホッとした、むしろこんな優しい美人で当たり前だって思うほど、好感に満ち溢れた人なんだよ? 何で? 女子の嫉妬? 嫌だな~怖い、じゃなくて!)

 杏梨はバッと東風谷と透を見やる。いきなりのことで何が何だか分からず状態だということが見て分かる。

(はぁ、男子だから、こういうことに疎いってことなのかな)

「ちょっとぉ、篠塚さん。邪魔なんだけど。どいてくれる? 耳悪いの? それで男子の人気狙いたいの? ぶりっ子」

 くすくす、女子の取り巻きが笑う。

(あー、出た。リピート。聞こえてるっつぅの、耳鼻科行けって言えよ。それが周りに聞こえると嫌だから、耳悪いの? って言いたいのかな?)

「ぶりっ子。少しばっか男子に人気があるからって、調子のんなよ」

 また笑う女子。杏梨は次第にイライラが積もるのを感じた。

(この感情、あれだな。先生がめっちゃ黙って男子達を見つめているのに、全然気付かないフリしてふざけ続ける男子を見る、女子の冷ややか目線だな。そして男子達しかふざけていないのに、注意している女子もろとも説教受けるタイプのやつ~)

「ちょっと可愛いからって、男子の前で良い顔しちゃってさ」

(可愛いのは認めているんだ。その通り!)

 蛇の具現化達にツッコミを入れる杏梨だが、それとは対照に東風谷と透は「う……」「あぁ……」と立ちすくむままだ。

 杏梨はため息をついて、こっそり舌打ちをする。

 頼りにならない男子を見て陰でウンザリしながら、杏梨は彩子をジッと見つめる。こういうとき、悪目立ちしては駄目なのだ。中学に入ったらいじめに遭いかねないからだ。

(……あれ? でもここ隣町だし、私が中学に入っても直接関係ない人ばっかだから、悪目立ちしてもよくね?)

 杏梨の脳内に一つの考えが思い浮かぶ。それが杏梨の体中を駆け巡り、心臓がどきどきと音を立てる。陽気な気持ちにさせてくれるような音楽が脳内でガンガン鳴り響く。

 それは、いつしかの東風谷が壊れた時にも沸き起こっていた感情だった。


「何してるんですか? もしかして、女子の僻み?」

 杏梨がおかしそうに言うと、一瞬蛇の具現化女子がきょとんとした表情をする。何とも間抜けな表情で、杏梨は少しだけ笑みを浮かべた。

「女子の僻みほど可哀想なものはないですよね。彩子さん、ぶりっ子でもないし、優しいし、女子の人気抜群のはずなのに、何で貴方達僻んでるんですか? それで彩子さんに反論する権利あるんですか? それでしか彩子さんに何かを言うことが出来ないんですか? 実は、ぶりっ子を嫌う人が男子に一番嫌われるんですよ。分かりましたか? 蛇の具現化」

 杏梨は、胸の内からふつふつと湧き上がってくる何かを感じた。

(言ってやった。言ってやった。どうだ、東風谷! 私も侮れないだろ! どうでしょう、彩子さん! 私も、言いましたよ。言いましたよ!)

 更に湧き上がってくる感情を抑えることは、杏梨には不可能だった。蛇の具現化、と言われて憤怒の表情をしている女子どもに、杏梨は更に言葉を噴き出す。

「女子って嫌ですよね。お洒落もしなきゃいけないし、こんな風に少しでも男子に人気がある女子を、こうやって攻撃することしか出来ない。それで嫌われるのは貴方達、攻撃している人達ですからね? 可愛い女子をいじめるって、それでしか需要がないんですか貴方達は。ってか、ぶりっ子って言いながら可愛いって認めているし。何なんですか貴方達」

 杏梨はもはや、止めようという努力すらしなかった。むしろ、知人がいないのだから思うがままに喋ってしまった方が体にも良いと感じていたのだった。

「仲良くなろうとか考えたことないんですか? 自分の好きな人が自分じゃなくて、その子のことが好きだって分かったら、その人のことをいじめるしかないんですか? もっとあるでしょう。自分に振り向かせることだって、出来ますよ。それをしないのは、貴方が臆病だからですか?」

 そこまでまくしたてたところで、東風谷が杏梨の肩を掴む。

「……ねぇ、この人達、そこまで篠塚を責め立てたかった訳じゃないと思うからさ……」

 おどおどした東風谷を見て、杏梨はイライラし始めた。

「何で? 私はこの蛇の具……この人達が彩子さんを責めなくても言うつもりだったよ?」

 本当は嘘である。彼女達が彩子に文句を言うものだから、「ぶりっ子は嫌いではない系女子」代表の杏梨が言い放った、というのが正解である。

 仕切り直して、杏梨はすぅっと息を吸う。

「なわけで、彩子さんは何も悪くないんですよ。貴方達のせいで、彩子さんは勝手に「悪女」のレッテルを貼られて苦しんでいるんですよ。はい、なわけでどうするんですか? 今からでも遅くはありませんよ。一年の十月ですよ? まだ時間はあります。はい、どうぞ彩子さんと仲直りしてください」

 杏梨は強引に彩子と蛇の具現化どもをくっつける。

 彩子は恥ずかしそうな表情をし、蛇の具現化どもは嫌そうな顔をするが、杏梨だけは唯一真顔を貼りつかせている。

 だがいつまで経っても、一向に彩子と蛇の具現化が仲良くなる兆しはない。イライラし始めた杏梨は、「おい、蛇の具現化クソ女ども!」と叫んだ。

「てめぇ彩子さんがこんなにも苦しんでいるのに今更何嫌そうな顔してんだよ! 嫌そうな顔したいのはこっちだよ! 何でお前らぶりっ子みたいって彩子さん咎めるんだよ、頭弱いのかよ、言っとくけどぶりっ子嫌いとか言ってる女子が一番男子に嫌われるんだからな、覚えとけよカス!」

 最後の方は殆ど暴言で、杏梨は次第に音楽室中の視線が自分に突き刺さるのを感じた。

「……っていうか、こっちの身にもなってくれる? ウチら、吹奏楽部員の視線全部集めてるんだけど」

「集めてるとかんなの知ったこっちゃねぇだろうが! 私なんてな、銀座のショッピングモールでエレベーターに滑り込んでその階中の視線集めたからなふざけんなよこの野郎! んなのに比べたら「何か蛇の具現化ちゃん達が見ず知らずの女子と喧嘩してる」程度しか扱われなくて良いだろうがよ! 私なんて「見ず知らずの女の子がエレベーターに滑り込んでいる。頭悪いのかな」とか思われたんだよ、それに比べて、吹奏楽部員の視線集めて何!?」

「また懐かしい出来事持ち込んできたな」

「あの時は大変でしたもんね~、東風谷が暴走してエレベーターに入っていって、それを危機一髪でしたもんね」

 あれちょっと待って何で透は東風谷に対して敬語なの、と杏梨は問いかけたくなるが、今は「うるさい黙ってろ」と暴言を吐くしかなかった。

「お前ら、そのことに関してちゃんと謝れよな、あぁん!?」

 杏梨はブチ切れをかまし、その後の後処理が大変なこととなった。


 以上の出来事を踏まえて、杏梨は隣町の中学校で「急にスクールカースト頂点の女子達に喧嘩を売って、挙句の果てに叫んだ頭おかしい小六女子」として一年後ぐらいまで語り継がれることとなったのだが、そのことを杏梨は知らない。

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