杏梨達、女子会を開く。1
「これより、第一回、女子会を始めます!」
「「「うぇ~いっっっっ」」」
友実の号令に、杏梨、里桜、咲希は、片手を空高く突き上げた。
東風谷の家で、夜ご飯を食べる時間まで、あと三十分。東風谷の父親が、人数分のハンバーグを作ってくれることになり、その間、東風谷の部屋を使って、杏梨達女子四人は、女子会を開くことにしたのだ。
一方男子達は、隣の祐真の部屋で、男子会をやるのだそうだ。
「まずは、好きな人暴露大会~っっ」
「うぇーい」
友実がいきなりの発言をすると、咲希がパチパチと拍手をした。
「ちょっとぉ、いきなりすぎない? まずはもっとさ、好きな人当てっことかにしようよ」
「杏梨は好きな人バレてるからパスね。まずは里桜から」
冗談混じりの杏梨の提案は、思いっきり咲希にスルーされる。
「うぅ……」
「えぇ~? 私?」
天然少女、里桜が首をかしげる。杏梨は少しだけため息をつく。彼女から放たれる健気天然少女ぶりに、到底勝ち目はない。
「じゃあ、当てっこで良い?」
「おっ、私の提案採用された!」
里桜の優しさに頬を赤らめる杏梨。
「……私の好きな人は」
「おぉ!」
「……同い年です!」
「おぉっっ」
随分食い込むのは、杏梨だった。
杏梨も、実は恋バナ好きなのだ。
「マジですか!?」
「えぇっと……」
「他にもヒントは!?」
咲希は身を乗り出し、友実はヒントを聞き出している。
「……その、私、その子のこと、結構よく知ってるんだけど……。すごい、家が問題を抱えてて……。支えたいって思う気持ちが……いつの、間にか……」
(えっ、それってつまり……)
杏梨の脳裏には、上原雅弥と雅樹の顔しか思い浮かばなかった。
「どっちか……」
「は? 何言ってるの? 杏梨」
友実が、杏梨に尋ねた。「『どっちか……』って言ってたじゃん」と咲希が言う。
「どっちかって、まぁ、予想と大体合ってるけどね」
里桜がクスリと笑う。
「えってことは!?」
杏梨は飛び跳ねる。もしかして。予想が当たっているかもしれないのだ。
「……私の好きな人はね、雅弥なんだ」
少しだけ小さな声で、里桜が答えた。
「マジで~!?」
学年一のモテ美少女は、何と肩身の狭い思いをしている、上原兄弟が好きなのだ。
(うっそ、両想いじゃん)
ニヤニヤが隠しきれない友実と杏梨。
「ちょっとぉ、何笑ってるの杏梨に友実」
咲希が噴き出した。「何でもないよ」と杏梨は否定する。
「じゃあ、今度は咲希ちゃんじゃない?」
「えぇ? 私ぃ?」
咲希は自分を指差した。双子のように動作が似ている。彼女達は美人なだけではなく、可愛さにも定評があるのだろう。女子にとって、顔立ちの良さと可愛さは完全なる武器である。
「じゃあ、言いますね。私は、里桜のようにもったいぶるのではなく、直球で言ってしまいます」
「おぉっ!」
杏梨は思わず咲希に乗っかる。今のは決して里桜を否定したわけではないのだろう。
「私の好きな人は、雅樹です!」
「きゃ~っ!」
杏梨は、頬を両手で押さえて、首を横に振った。
二人の綺麗な美少女は、上原兄弟が好き。まさしく二人とも両想いだ。
だが、その事実を知っている友実は、ひどく落ち着いていた。
「ちょっとぉ、友実ちゃん、全然驚かないね! 普通こういうときは、もっと驚くものでしょ!」
「う~ん、前々からそんな気はしてたから、今言われても、あんまりピンと来ないね~」
杏梨は友実を前にして頷いた。
(友実ちゃんって、結構勘が鋭いんだね)
初めて知った。と杏梨は考えながら、咲希と里桜を見つめた。
「何で好きになったの!? ねぇねぇ何で好きになったの!?」
「杏梨、しつこい」
友実が冷めた目つきで杏梨を見つめる。
「ごめんなさい。でも、教えてほしい!」
杏梨は謝ったが、まだ懲りず、二人に尋ねている。
二人は少しだけ戸惑いながら、黙り込んでしまう。そして、沈黙を破ったのは、天然美少女、里桜だった。
「えっとね。……私は、何か、すっごい相談してくれる雅弥が、好きになっちゃったの」
「あぁ~、分かる。私もそうだもん」
咲希が思わずといった調子で頷く。
「ってことは、雅樹もそんな理由で好きになっちゃったの?」
「杏梨、声がデカイ」
友実がツッコミをする。
「……へぇ。じゃあ杏梨は、何で東風谷が好きになったの?」
仕返しとでも言うように、咲希は聞いた。
「え? 私ですか? 聞きたい?」
杏梨は最初から狙っていたかのように、もじもじとし出した。
「聞きたくない、って言ったらどうする?」
里桜が、もったいぶったように、上から目線で言った。
「嘘です嘘です、聞いてください」
「宜しい杏梨」
咲希はふふんと笑い、「はい、聞かして」と杏梨を喋らせた。
そこで杏梨は、口を開く。




