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ドラゴンの加護ありて   作者: 如月マルコ
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〜手甲と念信と〜



「あれはスキル【錬金術】です、もちろん制限がありますけど、アリサの想像力次第でいろいろな物を作る事が出来ます」


アリサは次に申し訳なさそうに語る。


「あの時は力が入り過ぎてしまって、地面を強く打ち過ぎたのですぐに動けなくなってしまったんです。あ、あの時のお礼言ってなかったですね!ありがとうございます!」


「ううん!そんなお礼言われる事してないよ、それよりもすぐに助けに向かったアリサは本当に凄いと思う。俺はそんなすぐには動けなかった」


そうを言うと、アリサは照れたように笑って「身体が勝手に動いちゃいました」と少し申し訳なさそうに言った。


「それよりなにより、トシヤさん竜魔法を使いこなせてましたね!いきなりの筈なのに、どこかで練習してた…はないですよね」


俺も頷きながら。


「そうなんだよね!俺も自分でビックリだよ!エレの時の感覚を思い出してやってみたんだけどさ、上手くいって本当に良かったよ」


言いながら横を見ると、アリサはそれを聞きながら何かを考えているようだった。


俺が「どしたの?」と聞くと。


「いえ、それなら武器はどうしようかと思いまして」


確かにそれは俺も思っていた、竜の爪の魔法【竜爪】と名ずけた。あの技を相当長い間出してしたにも関わらずそれほど消耗しなかったのだ。

あれがあれば、剣や棍棒などは不要となる。


「もちろん、魔法が使えなくなる場面もあるかも知れませんから、何かしらの武器は持っておいた方がいいのです。トシヤさんは得意の武器はありますか?」


ない、武器は今までの人生で持ったことはなかった、もちろん、竹刀くらいは持ったことはあるけど、稽古はしたことないし。

武器はないけど。


「拳かな。小さい頃から空手って言う無手の格闘技は習ってたからさ」


「無手ですか、それで爪の攻撃に違和感がなかったんですね。そう言う事なら!あまり重量のないタイプのガントレットを探しましょ!」


「オッケイ!でもさ、アリサの錬金術でそう言うのは作れないのかい?」


「はい…先ほどの制限なんですが、錬金術が使える距離や時間に制限があるんです」


その為、あの時直接リサを守る錬金を行えなかったらしい。



その後、エレベーターを何回か乗り降りをして金属の少なめのガントレットを購入、塔を後にした。

昼間戦いがあったとは思えない静けさの広間には、もう冒険者と思われる人影が見える。


だが、すでに太陽が沈みきり、月が空に輝いているのであまり遠くまでは見えない。


「だいぶ遅くなっちゃいましたね!宿に急ぎましょ!」


アリサはこの街に来たら毎回泊まる宿屋があると言っていたので、そこに向かうとのことだ。

俺はこの街をスターナさんに聞いた知識くらいしか持っていないので、素直に付いて行く。


宿屋【高飛車】と言う宿にしばらく歩いて到着する、位置的には冒険者ギルドに近いので行き来は楽そうだ。

大通りにも面しているので、宿としてはなかなか高い値段なんじゃないかな?と俺は心配してしまう。

払っているのは俺ではないけど。


宿に付いて、まずは食事かな?と思っていたのだが、アリサは先にシャワーを浴びたいとのと事だった。

俺もここ何日かタオルで身体を拭くだけだったのでその申し出は嬉しく思う。


2人共先にシャワーを浴びて、宿の料理を食べた。

もちろん、部屋は別だし、シャワールームも男女別に存在していた。


この後、アリサの部屋で今後の展開を話す事になっている。


俺はアリサの部屋をノックする、と中から「どーぞー」とのんびりとした声が返ってきた。

ガチャリとドアを開けて入る。


そこには寝巻きを着替えたアリサがベットに座っていた。

部屋には机と椅子が1つづつしかないので、どちらかが床かベットに座らなければならない。

アリサが気を使って椅子を空けてくれた事に感謝しつつ座る。


「さてと、トシヤさん今日はお疲れ様でした。ダンジョン入る前にあんな戦闘になるとは思ってなかったんですけど、トシヤさんがいて良かったです!これなら予定通り1人で大丈夫そうですね!」


そうなのだ、アリサが居てくれるのは今日までで、明日からは自分1人でダンジョンに潜りBOSSまで辿り着かなければならない。


普通はダンジョンに潜るならパーティを組むと思うのだが、団長の指示によりそれが出来なくなっている。

地下1階から地下10階くらいまでなら、ソロもかなりいるらしいので、そこまでの危険はないとも言っていた。


「それで、結局装備には幾らかかったのかな?」


俺は恐る恐る聞く、今日買ってもらった装備はあくまでも借りであり、その代金はダンジョンで稼いで返すとなっていたのだ。


「そうですねー、細かいのを切り捨てて…100万Excelになりました」


それを聞いて俺は「マジか…」と小さく呟く、100万Excelは単純に100万円くらいの価値がある。


「トシヤさん!大丈夫ですよ!トシヤさんの実力があれば100万Excelなんてすぐですから!!」


アリサはコホンと咳払いをしてから続けた。


「それでお金の稼ぎ方なんですけど、1番単純なのが、ダンジョンに出るモンスターの魔石を冒険者ギルドで売る事です。ダンジョン内だと、モンスターは死ぬとすぐに魔石だけを残して消滅しますから、倒して拾うって言う流れになりますね!他は、ギルドや個人で出しているクエストを受けて報酬を貰うとかですけど、まだ無名のトシヤさんには話が来ないと思います」


俺は生えてきている顎髭をポリポリしながら。


「つまり、ダンジョンに潜って行くしかないわけね」


俺は今日の感覚を思い出して「まあ、なんとかなるかな」と言う。

それに、いつまてもアリサに財布を預けっぱなしには出来ない。


「では、これを渡しておきます」


アリサは小さなビー玉のようなガラス玉を俺に渡してきた。


「それは念信鏡と呼ばれる通話法具です、それに魔力を通すと対となるもう一方に言葉が届きます」


アリサから魔力の通し方を教えてもらい、試してみると、確かに俺の声がアリサの持つ玉からも聞こえてきた。

アリサは続ける。


「もし、何か自分だけではどうしょうもなくなった時に連絡をください。すぐに…とは、いかないかも知れませんが、必ず駆けつけますから!」


俺は微笑んで「ありがとう」とアリサに返した。



その日はそれから部屋に戻ってベットに潜り込むことにした、寝れるかどうかはわからないが疲れているはずなのだ。

今もまだ、昼間の戦闘の興奮が消えていない、怖くなかった訳ではないが、それよりも助けなければ、と言う思いが強く俺の胸の内にはあった、それは今も残って俺の心を燃やし続けている。


「寝れるかな?」


あえて声に出した、が当然返事は返ってこない。

そういえば、スリーピングウルフの毛皮じゃないんだよな。

と思い出しながら目をつぶる。


だが、やはり疲れていたようで、それほどかからず眠りに落ちていった。

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