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ドラゴンの加護ありて   作者: 如月マルコ
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〜露店と鑑定と〜



あれから数日して俺は傭兵団からは別行動をとる事になった。

となりには銀の髪を太陽に輝かかせる少女、アリサが歩いている。


「トシヤさん、すごいです!!」


そのアリサがさっきからずいぶんと興奮しているようで、「どしたの?」と聞いてみる。

するとアリサは目をキラキラさせて、俺の前にピョンと飛び出してきた。


「どしたのってトシヤさん!!もーー、意外と鈍いんですね!団長が椅子を空けておくって言ってたじゃないですか!アレは六天の席を空けてるって事なんですよ!」


六天…そういえば、この傭兵団の名前が六天破軍だったか、つまり四天王みたいなノリなのかな?と俺は思う事にした。


「つまり幹部的な立ち位置を約束してくれた…みたいな事かな?」


んー、と少し困ったようにアリサに聞く。


「幹部…そうですね、その感覚で近いと思いす、うちは冒険者が集まって出来てる傭兵団なので、みんな基本的にバラバラなんです。なので、隊長は存在しません。団長から全体への命令をランドさんが仲介してくれてる、そのくらいなんです」


「ふーん。なぁアリサ、モンスターを倒してるだけで傭兵団って名乗れるのモノなのかい?」


俺は昨日から思っていた疑問を投げ掛けてみる事にした。


「はい!傭兵団にもいろいろありますから、もちろん国同士の戦争を中心に活動している傭兵団もあります、でも、うちの団のように冒険者ギルドからのモンスター討伐や、一般市民からのお願いなどを受け持つ冒険者の集団も、傭兵団と呼ばれているんです」


他にもアリサに聞いてみたい事がたくさんある、それも今のうちに聞こうと思っていた俺だが、目の前の風景がガラッと変わったことでタイミングを失ってしまった。


森を抜けて街道に出たのだが、街道のすぐ向こう側が切り立った崖になっていて、その窪んだ大地の中心に東京タワー並みの巨大な塔が立っている、塔の周りを街が取り囲み、まるで城下町のようだ、と俺は驚きを隠せなかった。


まだその街、グリムガルまで何キロも離れているのにその存在感は心撃つものがある。


「この巨大な窪んだ大地は、大昔魔物によるものとされています。あの塔があるところがダンジョンの入り口にもなっていて、魔物がダンジョンから出てくるのを防いでいるんです」


と、アリサが俺の横に来て説明をしてくれた、いつの間にか崖の手前まで来てしまっていたようだった。

この街道をぐるっと回っていけばグリムガルにつけると、アリサは俺の袖をツイツイっと引っ張ってくる。

ちょっとその仕草があまりに可愛いく、ついクラっとしかけたがなんとか踏み止まってアリサに引かれ。歩き出す。


なんだか、この世界に来てから訳が分からずここまで来たが、この光景をみて自分がワクワクしている事に気付く、そういえば俺はこの世界に来てから、1度でも帰りたいと必死に叫んだろうか?と思う「…ないな」つい口に出てしまった。

アリサがこちらを不思議そうに見つめてくるのを笑ってごまかし、おれはグリムガルへと急いだ。



ここはお祭りでもしているのだろうか?

と、思いたくなるほどグリムガルは賑わっていた。

すぐとなりには、露店にならぶ品物の数々に目をキョロキョロさせるアリサが付かず離れず歩いている。

この喧騒の中では気を抜くと逸れてしまいそうになるので、俺はちょいちょい振り返っているのだが、その度アリサを見失うので気が気ではなかった。

それに俺は冒険者ギルドの場所すら分からないのだ、こんな初めて来た所で1人になったら間違いなく迷子になる。


そんな要らない自信を胸に秘めて、アリサの露店見物に付き合う事にした。

アリサにはスキル【鑑定】があるらしく、自分のレベル以下の武器防具、道具などの細かい情報が分かるとのこと。

かなり珍しいスキルなので重宝しているとアリサは語ってくれた。


多分だけど、そういう自分の情報は秘匿して置くべきものなのだと思う、珍しいスキルを持っていると知られてしまうと、襲われたり攫われたりしやすくなるんじゃないだろうか?

アリサは俺を信用して話してくれたんだと思う事にしたし、実際そうなのだろう。

このグリムガルに来るまでで、それくらいの自惚れはしてもいい間柄だろうと思っている。


それにしてもレベルにスキルね…そうやって数値化されるとやっぱりゲームのイメージは拭えない。

それでも、今俺がいるこの世界は現実なのだ。それは俺の目が、肌が、心がそう教えてくれる。


そんな事を考えているとアリサがこちらを見ている事に気付いた、正確に言うとアリサに話かけられていたのに気付けなかった、と言う事になるが。


「えっと、ごめん。ちょっと考え事してて、どしたの??」


正直に謝る。


「もぉ〜〜、じゃもっかい言いますよ!このブレスレットどう思います?」


「どうって……んー、無骨?かな」


アリサが持っているのは銀のブレスレットなのだが、シンプルな作りで遊びがなく女の子には人気はなさそうだった。


「んーと、そうゆーんのじゃなくて、トシヤさんはこう言うのは好きじゃないです?」


「いや!どっちかってと、シンプルな方が好きだよ。ちょっとゴツゴツしてて、これはカッコいいと思えるものだよ」


アリサにまだ少し気をつかって喋ってしまう。ブレスレット自体には大して興味はないのだが、アリサが折角こうやって聞いてきてくれているのだ。嫌な訳はない。


アリサによるとこのブレスレットには、あるスキルが組み込まれているとのこと。

ブレスレット着用者はそのスキルを使う事が出来るのだとか。


「じゃ、これはアリサからのプレゼントです!」


「え!ほんと?…いやでも、悪いよそんな」


俺が断ろとすると、アリサが首をブンブンふってブレスレットを俺の手に握らせる。


「いえ!もらってください!これは団の先輩としてのプレゼントですから。ダンジョンで必要なスキルだと思いますし!」


俺が、目をパチクリさせながら頷くと、アリサは露店の店主に代金を支払った。

アリサ的には良い買い物だったらしく、鑑定のスキルを使っていると「たまに掘り出し物が見つかって楽しいの」と、笑いながら歩く。



そんな話をしていると、やがて他の家々より背の高い建物が目に入っていた。

どうやらあれが目的の冒険者ギルドのようで、アリサが指を指してこちらを見上げる。


ギルドの入り口は西部劇よろしく、スイングドアになっていて、手を使わずに大きな物の搬入や搬出が楽に行えるようになっている。

ギィと言う音と共に入り口を潜ると、中の雰囲気は市役所ようだった。


ギルド職員が奥のカウンターに、手前には待合席があり、そこには昼間だと言うのに何人かの冒険者がたむろしている。


冒険者達は、こちらを一瞥するとすぐに興味を失ったように向き直った。

こんな小さな女の子が入って来ても、さほど驚かない事に俺は少し疑問を抱いたが「冒険者にも小人族が多数いるから」と後でアリサが教えてくれた。


アリサと俺はまずはカウンターに向かう、すると書類に目を落としていた職員が顔を上げてきた。

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