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ドラゴンの加護ありて   作者: 如月マルコ
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〜親交と決断と〜



「そうか、ドラゴンによる祝福とはな…」


ララが紅い髪を震わせなが呟く。


「そんなこと有り得るの?祝福って神にのみ許された御業なんでしょ!?いくら、エンシェントドラゴンだって」


「エンシェントドラゴンだからではなかろう、彼奴だからこそ出来たのだろう、彼奴は自分で万を生きたと、言うておった、そこまで生きれるドラゴンは世界広しと言えど、あの一頭だろうよ」


エレとランドが驚きを隠せずにいる。

アリサに至っては言葉が出ない様子だ。


俺は大空洞であったことや、別の世界からきたらしい…という事を4人に告げた。

こんな話を信じてもらえるものなのだろうか?と思っていた俺は4人の反応を見て安堵していた。

どうやら4人共疑ってはいないと思えたからだ。

ランドがふむ、と唸り。


「だから、大空洞にあやつは居らんかったのか、そしてあのジャイアントボアはドラゴンがいなくなったが故に、あの山を住処にするべくやってきた、と言うことだろうな」


ランドによると、強すぎる魔物は存在するだけで魔素と言う物を生み出すらしい、あそこにいたドラゴンの魔素の膨大な残り香を目当てにしたのだろう、と語った、魔素は魔物の重要なエネルギー源、それを奪い合い、魔物同士で戦う事もあるのだとか。


「それにしても、あのタイミングは早すぎない?」

とエレ。


「確かに、…これは想像に過ぎんが、元からあの山の魔素を狙っとったのかも知れんな」

と、ランドが返した。


続いて、アリサが魔素は魔法のエネルギー源でもあると続けた、魔素の多い所の方が魔法の威力や消費が良くなると。


「エレの傷をあんなに早く治せたのも、あの山から漏れ出る魔素のお陰なんです、私だけの魔素量だとまだエレは、…ベットで寝てると思います」


と、最後は申し訳なさそうに綴った。



話があっちゃこっちゃに飛び始めた頃、紅い髪を震わせていた美女が我慢出来ずに吠えた。


「そんな事はどうでも良い!!トシよ!!我はおぬしを仲間にすると決めたぞ!」


右手に持つ扇子をこちらに突き刺しながら。


「面白い!面白いではないか!ドラゴンによる加護!エラルテレルを助けた根性!ジャイアントボアを投げ飛ばす力!全て好みだ!派手でよい!!我はおぬしが気に入った!」


俺は話を遮ろうと。


「ちょっと待ってって!俺には傭兵なんてのは…」


「まぁ待て!!」


逆に遮ぎられた。


「そう、答えを焦るな。おぬし、行く所がないのであろう?、この世界での生き方がわからないであろう?、それを我らが教えてくれる、それに傭兵団といっても戦いを強制したりはせん。嫌な事は死んでもせんでよい。この我がそうであるからな」


ララは1度言葉を切って。


「それに、おぬしの世界への帰り方も全くわからんのであろう?」


と締めくくった。


確かに全てその通りだった。

この右も左もわからない世界では生きていけないのはこんな俺でも十分わかる。

実際、エレが居なければボアに引かれて死んでいたかも知れないわけだし。

おそらく、願ったりかなったりのお話だろう、だか。

一つだけ聞いておきたい事があった。



「人間とも戦う事があるのか?」


ララは静かに答えをくれた。


「ある。そう多くはないがな、基本的に我が傭兵団は魔物との戦じゃ、国同士の戦には顔を出さんよ」

ララは真剣に答えてくれた。


ならば俺も真剣に答えていかなけらばならない、息をゆっくりと吐き、ゆっくりと吸う。


「うし、決めたよ。これからよろしく頼む!」


ララはうむ!と頷くと、手に持つ扇子を広げて言った。


「よぉ〜し!新たな仲間を迎えた祝いの日じゃ!宴じゃ〜!!」


話を黙って聞いていた3人はそれぞれの反応を示していた。

ランドは値踏みするように、エレは嬉しそうに、アリサは心配そうに。

それぞれの思い胸に夜は訪れる、見張りをしている者除き、ドンチャン騒ぎは夜遅くまで続いた。



この世界に来て初めての朝を迎える、怪我人ではないのでベットでとはいかないが、いわゆる煎餅布団を使わせてもらえたのだ。

ちなみに掛け布団はないので、毛皮を繋ぎ合せたファースと言う物を掛けている。


俺は普段は寝起きがいい方なのだが、それはあくまで、仕事の時、つまり時間制限がある時に限る。

夜遅くまで騒いでいたので起きるのがなかなか辛いのだが、出発時間までかなり余裕がある、きっと俺に気を使ってくれたのだろう、と思った。

まぁ早い話、寝坊助になれるという事だ。


だが、外からガチャガチャと物音が聞こえてくる、もう準備は始まっているのようだ。

俺は心地良い眠りをくれた布団にさよならを告げ、立ち上がる。

服や下着の替えなどは持っていないから履きっぱなしだ、正直替えたい。


俺はテントから顔を覗かせ辺りを見回す、やはり出発の準備が始まっている。

俺の姿を見つけたアリサが駆け寄ってきて笑顔を見せると。


「起きましたね、おはようございます!丁度今起こしに来た所だったんです」


朝日に銀の髪が照らされていて本当に美しかった、思わず見惚れる。


昨日、アリサから「アリサはヒューマンではなく小人族リトルリーンなのです」と聞かされた時はビックリしたが、エルフにドワーフ、獣人ときていたので、それほどでもなかったと言えば、なかったが。

アリサは仲良くなった相手には、自分の事を話す時、「アリサは」と話す、と言うのが昨日の宴の収穫かな、と俺は思う。


あとは、エレは下戸で、少しお酒を飲んだら「妖精さんー妖精さんー」と言って、しばらくしたら地面に転がって寝息を立てていたし、ランドは酒好きらしくずっと飲んでいるか、笑うかしていた。


ララは団員からせがまれて舞を披露していたのだが、これが素晴らしいのなんの!

身体のキレや表情の変化も美しいが、何より重心移動が俺の目を引いた。

元の世界の仕事柄、自分も踊ったりしていた為か、そう言う所につい目がいってしまう。

舞に見惚れていると、いつも間にか横にランドがやってきていたようで。


「ああ見えて団長は強いぞ〜、うちの団の誰よりも強い!かく言うわしもワンパンよ!」


と、大きな笑い声をあげた。


頭の中に流れる宴会歌を軽く首を振って追い出して、アリサに向き直る。


「おはよう!ほんと良く眠れたよ、テントと寝床ありがとね」


実際、快調と言っていいほど体調が良かった。

昨日あんなに飲んだのにな、と思ったが口には出さない。


「それなら良かった!昨日随分飲まされてたから心配してたんです。…うん!ホントに顔色もいいね!…あ!そぉそぉ、団長がこれからの事があるから顔を出してって」


相変わらず表情がコロコロ変わる、声も同じにように可愛らしくコロコロ転がって朝日に響きわたる。


道すがら、昨日話せた傭兵団の人達と挨拶を交わしながら団長の元に向かう。

いや、もう自分もこの傭兵団の一員なんだったな、と思い直す。


「よーすっ!おはよーさん、お二人さん!やー今日もアリサは可愛いね〜!今度一緒にキスイの花を集めるクエストしないかい?」


この軽めの口調の男は、昨日の宴で傭兵団の女の子とばかり話していた、名をスヴェンと言う。


「スヴェンさん。私のクエスト関係のお仕事は、団長の許可がなければダメなんですって何度も言ってますよ!」


「ん〜〜そうだったかな?まぁまた今度ね」


アリサは真剣に話しているのだが、スヴェンはほとんど聞いていないようにして去っていった。

向こうの方で同じような声が聞こえてくる、また他の女の子を誘っているのだろう。

俺はちょっと可笑しくなって声を出して笑ってしまったが、アリサが首を傾げているのを見ると、込みあげそうになる笑いを抑えて「ごめん、なんでもないよ」と言って歩き出した。



昨日、一番大きなテントがあった所に団長達は集まっていた。

テントはすでに片ずけてあり、後ろを見ると自分が寝ていた場所も片ずけ始めているのが見える。


「団長〜、トシヤさんをお連れしました」


アリサが元気一杯に告げる。

ララは昨日座っていた椅子とはまた違う椅子に腰掛けていた。


「うむ、ご苦労。トシヤよ、昨夜は最後まで付き合わせてすまなかったな、良く眠れたか?」


俺が「はい、とても」と返すと、ララは嬉しそうに声を上げて笑う。


「そうであろう、おぬしが昨日使った毛皮はスリーピングウルフと呼ばれる狼から獲れた物で作られておる、あれには快眠の効果があってな!【大浪の谷間】に遠征の時に我が纏めて仕留めてやったものよ!」


ララは大仰に笑い、このキャンプの者は皆この毛皮を使っていると自慢した。

なるほど、と俺は思う。

俺は寝付きの悪さは自慢出来るほどなのだが昨日は気付いたら朝になっていた、お酒のせいかと思っていたのだが、それだけではなかったという事だ。


「団長、そろそろ本題に入りません?みんなもうすぐ準備出来ちゃいますよ」


エレが先を促すと、ランドがララに目線を掛けて去っていく、どうやら他の皆に指示を出しに行ったようだ。


「さてと、トシヤよ。おぬしもうちの団員になったのならば、やってもらわねばならない事がある」


ララはエレに目を配る、続きはおぬしが話せ、と案に言っているようだった。

エレが仕方なし、と言った風に肩をすくめて話始める。


「えーと、まずうちの傭兵団には一応加入条件みたいなのがあって、一つが団長が気にいるかどうか。まぁこれが一番重要な訳だけど、で、2つ目が冒険者である事。冒険者ギルドに所属してステイタグと呼ばれる首飾りを発行してもらう必要があるの」


言うとエレは革鎧の中から出して見せてきた。

見た瞬間ドックタグのようだな、と俺は思う。

ドックタグとは自分の所属や名前が彫ってある鉄の板を首をから下げる物の事で、もし自分が死んだ時にそれが自分の証とされる首飾りの事だ。

エレのは3枚綴りになっていて、それに自分の名前や、祝福を与えてくれている神の名前、筋力や体力、その他いろいろな数値やスキルが彫られているらしい。


魔物を倒して自分が強化されるとその鉄板に彫られている文字も形を変える、とエレが付け加えた。


「魔法もスキルの一つで、その系統の魔法使えますよーって教えてくれたりもします、アリサの場合は、治癒魔法って言うスキルを持ってるのでエレを直したり出来たんです!」


と、アリサが魔法の事も教えてくれた。

つまり、スキルにない種類の魔法はどう頑張っても使えない、と言う事になるわけだ。


「さて、では理解したな?それではトシヤに我から初めての任務を与える、いわゆるクエストと言うやつじゃ」


ララは手に持つ扇子を閉じて指し示しす。


「この森を抜けて街道を下るとグリムガルと言う都市に出る、そこはこの大陸では一二を荒らそうダンジョン都市でな。まずはそこの冒険者ギルドで冒険者としての知識と力を付けてこい、しかるのちにグリムガルにあるダンジョンのボスを倒してまいれ。それが我からおぬしに出すクエストじゃ」


最後に「カッカッカッ」と高らかに笑うとララは立ち上がる、話は終わり、と言っているのだろう。

クエストなら報酬は?と少し思ったのだが、聞く事を何故か躊躇ってしまった。


元の世界に帰る方法は昨日の場で、すでに知らないと言っていたので、それ関連ではないのはわかっているし、この世界での生き抜く手段を教えてもらえるだけで充分だったのだ。

それに、あまり図々しいのは自分が好きではなかったと言うのもある。

だがララは、「おっと忘れておったわ、報酬じゃがの。おぬしの為に椅子を一つ空けて待っておる」

と、去り際に残して行った。

なんの事だかサッパリ分からなかったので、後でアリサに聞こうと今のうちから決めておく。


「じゃ、トシヤさん!アリサ達も出発しましょ!」

周りを見るとすでに隊列を組んでランドを筆頭にこちらを待っている。

団長のララが馬に跨ったのを確認すると、ランドが全体に指示を飛ばし、皆歩き始めた。

目線をアリサに戻すと、すでにその場にはいなく、少し離れた所から手を振っている、多分「こっちです!行きますよー」と言っているようだった。






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