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ドラゴンの加護ありて   作者: 如月マルコ
32/37

〜帝都と搾取と争いと〜

これまでのあらずし!


異世界に転移したトシヤはドラゴンの加護を得てこの世界に存在を許される。

その後、傭兵団【六点破軍】との出会いによりこの世界でも生き方を学んでいき、その過程のダンジョンにて運命を感じる出会いを果たす。

彼女を守る為に、その背を押し出す為に、彼は戦いに身を投じる。

竜の魔法をその身に纏い、敵と戦い討ち果たす。

やがて1つの戦いが終わりを迎え、別れが訪れた。

彼と彼女は自分の心に従い道を選んで歩いていく。

その先には何が待っているのだろうか?



「随分のどかな農村だな、あんまり帝国!って感じがしないし」


俺とアリサは深い森林を切り抜け、帝国領土の農村に立ち寄っていた。

先の言葉は村を見た俺の感想である。


「そうですね、聞いた話によりますと帝国で栄えているのは帝都周辺のみで、少し離れるとこういった農村が広がっているそうです。なんでも、ここ数年で一気に帝都の軍事力が上がったらしく、その最たる例が先程の竜騎士なんです」


「ほうほう、竜騎士の数が増えたかなんかしたのかい?」


「はい。普通はいくら低級の竜種であるワイバーンと言っても、そう何体もテイム、つまり捕まえて調教出来るものではないんです。それがここ数年で爆発的に数を増やしている、普通の事ではありません。団長はそう言ったスキルを持った人間が現れたのではないかと、考えていた様でした」


つまり、ここから先は竜騎士と鉢合わせする確率が跳ね上がっている訳だ。

なので無理をして空を飛ぶより、地上を馬車や徒歩で移動する事になると、俺は少し肩を落とす。

正直な話、馬車に揺られるより飛んでいる方が楽しいのだ。


「アリサ、団長達と合流予定の場所はどこなんだっけ?」


「はい、この帝国の首都、ラントエンペラーと言う街の近くに【岩窟がんくつの岩場】と言う今は使われていない鉱山跡があるんですが、そこにキャンプを張っているそうです。帝都には許可書がなければ入れないので、合流後潜入する形になります。」


「そうか、なかなか難しい国関係なのかな?だから俺達みたいな傭兵に事を頼んだ…ってことかな?」


俺は村に宿屋がない事を確認しながらアリサに質問する。

どうやらしばらく野宿になりそうだ。


「その通りです。もし見つかっても傭兵団だけなら国同士の争いのきっかけにはならない、と考えての事だと思います」


その辺りの関係は王様同士の交流次第なのだろう。俺は女王になるべく心を決めたマリアにエールを送る。


それに、ダンジョンの最下層までの護衛の約束はなくなった訳ではないと、俺は思っている。その辺りはマリアからは何も言われていない、故にもし何かあった時は彼女の為に戦う事に迷いはなかった。


俺達は村である程度の食物を買い込むと村を後にするのだった。



〜〜〜〜



俺達は何度か馬車を乗り降りし、荒野を抜けていく。帝国の首都、ラントエンペラーに近付く程、木々は減り乾いた大地が目立つようになってきた。


明日には団長達との合流場所【岩窟の岩場】に着く距離にある、少し大きめの街に着いた時事件は起こった。いや、事件に巻き込まれたと言った方が正しい。


俺とアリサが買い物にいそしんでいると、すぐ近くで馬車が爆発したかと思うと火の手が上がったのだ。


何事かと振り返ると、鈍色の全身鎧に身を固めた集団と、簡素な革の鎧やただの布の服に身を包んだ集団とが争いを起こしていた。


「トシヤさん、離れましょう。レジスタンスと帝国騎士の抗争です。巻き込まれると厄介かと」


そう言うとその場を離れようとするが、俺達の目に飛び込んできてしまった光景を無視できず、俺もアリサも飛び出してしまう。


こういった抗争で被害を受けるのはいつも一般市民だ。今も目の前で子供を連れた母親が逃げ遅れ、争いに巻き込まれている。


親子が目に入っていないのか、レジスタンスの投げた何かが、その親子のそばに落ちる。俺はとっさに親子に覆い被さり【竜翼】を出現させ、身を丸めた。


次の瞬間。


爆発が街道のあちらこちらで巻き起こる。

レジスタンス達が一斉に投げた爆発物がレンガ敷きになっている道を吹き飛ばしていく。

それは同じく、レンガで作られている家々にぶつかりパラパラと音を立てた。


土煙が立ち込める中、爆発と同様にあちらこちらで剣戟けんげきの音と怒号、そして悲鳴が響き渡る。


空気が乾燥しているのと、戦いで起こる土煙でなかなか視界は通らない。

時折、土煙の向こうから鈍色の兵士に襲われる。俺は親子をアリサにまかせ、襲いかかる剣撃をガントレットで受け流し、兜の上からぶん殴る。

兵士はきりもみしながら吹き飛ばされ、ピクピクと痙攣けいれんしだす。


いかに鍛えられた兵士でも、ドラゴンの加護、そして魔物や悪魔との戦闘で強さを増した俺の拳は避けられないらしい。


俺とアリサは、親子を大通りを抜けた路地まで護衛すると一息いれる。


「大丈夫ですか?」


アリサが親子の様子を伺う。

子供は無傷だが、母親は手や足に細かいかすり傷が幾つも走っていた。

アリサは「大丈夫です」と相手を安心させるようになだめると母親の傷に手を当てる。

優しく薄緑色の光が母親の傷を塞いでいく。


「1度どこかで、落ち着くのを待った方がいいな」


俺が手当を終えたアリサに告げる。


「そうですね、何処がいいでしょうか?」


アリサがチラリと大通りに目をやる。

まだ争いは続いているらしく、喧騒が止む様子は見受けられない。


「…旅のお方、よろしければうちにいらしてください。あまりおもてなしは出来ませんが」


おずおずと母親がこちらに話かけてきた。


「いいんですか?」


俺が母親に聞くと、母親は大きく頷いてから子供を抱きかかえる。


俺とアリサは目配せをすると、母親に「お願いします」と告げ、路地奥深くに向けて歩き出すのだった。



〜〜〜〜



俺達が助けた親子、マーベルとサリと自己紹介を済ます。


マーベルは娘のサリを落ち着かせるべく寝室に寝かし付けると、テーブルで待つこちらに戻ってきた。


「先程は危ないところを助けていただきありがとうございました。大したお礼も出来ずに申し訳ありません」


「いえ、そんな大した事はしてないですからお気になさらず!ね?」


「そうです、冒険者として、いえ、人として当たり前の事をしただけですから!」


俺がマーベルの顔を挙げさせるとアリサが続く。

それを聞いて母親であるマーベルは今一度頭を下げる。


俺は話を変える為に質問することにした。


「マーベルさん、今日みたいな事をよくあるんですか?」


「…はい、数年前から帝都からの搾取が厳しくなりまして。元からあったにはあったんですが、今年に入ってからはほぼ毎日のように…」


そう言ってマーベルは腕の裾をまくし上げた。

そこから見えるのは今日出来た傷ではなく、何度も治り、また傷ついた痛々しい肌が見える。


アリサが顔が歪む、すでに治ってしまっている傷には回復魔法をかけても変化は起こらないそうだ。


「何があったんでしょうか?」


俺はマーベルに聞く。


「なんでも帝都に新しい執政官が入ってきたらしいのですが、その方を中心にいろいろ政治が動いている、と聞いています」


「ねぇ、パパは?」


その時、マーベルのスカートの裾を引っ張りサリが声をかけてくる。

どうやら寝付けずに寝室から出てきたようだ。


「今パパはお仕事で忙しいの、サリが良い子にしてたら帰ってくるの…。だからもう勝手に外に行っちゃダメだからね」


そう言うとマーベルはサリを再び寝室に連れて行く。

寝室から戻ってきたマーベルに、俺は聞いてもいいものかと思いながらも聞かずにはいられなかった。


「旦那さんはその…?」


「…はい。今は帝都の命により鉱山の仕事をさせられていて、もう何ヶ月も帰ってきていません。連絡も取れませんし、役場に聞いても何も答えてくれません。正直、ちゃんと生きているのかさえ…」


マーベルは最後消え入りそうな声で呟いていた。

俺はやはり迂闊に踏み込んでしまった事に「すいません」と頭を下げると、口を閉じる。

マーベルは首を横を振ると静かにテーブルに腰を下ろした。

アリサは何を言っていいかわからずうつむいている。

その後、会話は起こる事なく時間が過ぎていき、俺達はマーベルとサリの家を後にした。



2人の家を背中で感じながら俺は思った事を口にする。


「なんとか出来ないかな?」


「そうですね…ですが、私達ではどうする事も出来ません」


アリサは俯いたまま絞り出すように喋る。


「そうだな…」


だが。


「俺は思うんだけど、この国の今の状況と王国から盗まれた物、…そして団長達と俺達が立ち向かう存在は無関係じゃないと思うんだ。…多分どこかで繋がってる。だから」


俺は調子に乗っているのかも知れない。

ドラゴンの力に酔っているのかも知れない。

でも。


「何とか出来るなら、何とかしたい」


その言葉にアリサは大きく目を見開くと、いつもの可愛らしい声を出してコロコロと笑う。


「あれ?なんか可笑しかった?」


「いえ!ごめんなさい!…ただ、トシヤさんらしいなって思ったら、つい」


アリサは深呼吸をして改めて俺を見てくる。


「そうですね!出来る事をするのが、力を持った人の責任でもありますから!、アリサも微力ながらお手伝いします!!」


そう言ってアリサは、可愛いくガッツポーズをとってくれるのであった。

どうぞよろしくお願いします!

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