独り言
呪文のような言葉を、ただひたすら呟いている男がいた。男がいつ頃から言葉を呟いているのかは誰にもわからず、気がついた時には既に、男は言葉を口にしていた。
そんな男を周りは気味悪がり、誰も近寄ろうとはしなかったが、ただ何故か、男の言葉には何らかの意味がある気がしてならないのだった。
ある時、男は言葉を呟くのを止めた。不思議に思った一人が男に聞いてみた。
「あなたは何を呟いていたのです」
男は静かに答えた。
「数字を数えていたのです」
「数字を!?」
「はい。そして、今しがた数え終わりました。因みに数字の限界、つまり最後は…」