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Henntaiは進化する

――――――――――――――――――――――――


 循環法とは己の体内で自然に回転、循環しているマナの回転数を上げて身体能力や物理的な状態異常耐性の底上げをする技術だ。

 これは遥か昔に闇の魔法を使って世界を支配していた魔神族に対抗するためにある種族が開発した技術だそうだ、作者も若い頃にこれがあったお陰で何度も命を拾った。

 ただし、この技術は当人のセンスが物を言うので修得できるかは保証はできない。

 まぁ、やってみないことにはどうにもならない、先ほど魔石に触れたときの感覚を思い出し、それを体の中で円を描くように回転させるイメージだ。

 もし感覚を思い出せない場合はもう一度魔石に触れてみるといい。

 さあ、やってみよう!


 ――――――――――――――――――――――――


 …………ふむ。

 大体のイメージは理解できた、あの感覚を体の中で回せば言い訳だ。


「んんん?」


 取り合えずやってみようとしたがあの感覚が再現できない………。

 もう一度魔石に触れてみる。


「………ふむふむ」


 まず魔石に触れる、人指し指に軽い電撃のような感覚が、その感覚が全身に広まり人指し指に血液が集中するような感覚と同時に指先に通常では感じないような熱を感じる。

 この感覚はマナを使っているから感じるものらしい。


「…………?」


 その感覚を覚えるために(しばら)く魔石に触れているとあることに気がつく。

 指先に血液が集中するような感覚だが、血管を通じているように一定の場所を通っている。

 この血液が集中するような感覚の血液と言うのは恐らくマナのだ、そして血管のようなものはさしずめマナの通り道と言うところか?


 確かマナは自然な状態でもからだの中を循環している、ならマナの通り道があってもおかしくはないだろう。

 まぁ、この体は本物ではなくてアシュリーに貰ったものなんだがな。


「よし………なら」


 と言うことはマナの血管にそってこの指先の感覚を回していけばいいのではないか。

 兎に角頭で考えていても実行しなければただの机上の空論だ。

 それはどこまで行ってもどこまで追求しようが空想にすぎないしな。


「こう………か?」


 先ずは意識を集中して電撃のような感覚を思い出しながら血液を通って右腕に熱を集中させていくようなイメージだ………。


「………っ」


 一瞬だけ指先に静電気のような感覚が走り右腕に熱を感じる。

 どうやら右腕にマナを集めるという事には成功したらしい。

 なら次だ、右腕に感じる(マナ)を血液に乗せて血管を媒体にして移動していくイメージ。


「………」


 血管と血液というイメージが良かったのか熱に変化が現れてくる。

 徐々にだが熱が右腕から背中、左腕に、そして左足に移動していく。

 恐らく成功した。

 一旦循環法を切り教本の内容を確認する。


 ―――――――――――――――――――――――――


 さて、どうなっただろうか?

 この教本を読んで魔法を始めるという人には些か難題だったであろう。

 ヒントを求めて教本を開いたのが殆どではないだろうか。

 もしマナを特定の箇所に集中させることが出来たならその者は天才か(ある)いは変態であろう。

 いずれにせよ王都にある魔法学校に入学することをお勧めする。


 ―――――――――――――――――――


 誰が天才だって………?

 やはりこの教本の作者は分かっている!

 一度時間を作って話に行くか………?

 え?『変態』が抜けているだって?

 たしかに俺はMでありSであると自覚はしているし、誰かが喧嘩をしていたら喜んで火に油所かお手製の特殊配合した火薬を投げつけるような性格をしているが断じて変態などではない、断言しよう。


 何?それを世間一般では変態というだと?

 それは俺の中では変態と言わないのだ!

 他人の常識など知ったことではない!


 あぁ、自画自賛も度を過ぎるとナルシストだと思われてしまうな。

 さて続きを読もう。


 ――――――――――――――――――――――――――


 さて、ヒントを求めて教本を開いた諸君にお望み道理にヒントを掲示しようじゃないか。

 これは僕の感覚だがマナは血管を通して体の中を回って行く。

 循環法とはマナの回転率を意識的に上げて身体能力その他もろもろを上げるものだ。

 だが、先ずは循環なんて難しいことを考えずに自分の中にあるマナを感じてみるといい。

 そして感じることができたのなら、心拍数を上げて血流を早くするようなイメージ。

 循環法は成功すると体から青白い光が見られるようなる、その濃さによって身体能力その他もろもろの向上が変わってくるので深い青目指して鍛練を積むといい。


 ―――――――――――――――――――――――――――――


 ……はっっ???

 青い光だって????

 なんだそれは、俺は発光なんかしてないぞ!発酵ならしてるかもしれないが。

 ………ならさっきのあれは循環法じゃないのか?


 よし、落ち着け。

 事態が飲み込めないときこそ落ち着いて、且つ冷静にもう一度よく考えてから結論を出せばいい。

 そうだ魔法なんて俺でも初めての分野なんだから予想外の事態が起こるのは当たり前だ。

 こんなことで焦るなんて、俺としたことが情けない。

 昔からよく言われてきたじゃないか、頭はいいが予想外の事が起きると急に役に立たなくなると―――――――………。


「―――――……は?」


 ……おかしい。

 今、一瞬だけだが髪の白い長髪の女が頭に浮かんだ。

 俺は記憶が飛ばされているはず、だ。

 だが白髪の女はこの世界に来てから1度も見ていないはずだが?


 ……や、今ある情報では解決できることではないだろう。

 時間が切れてあの空間に帰ってからアシュリーにでも聞けば何かしらわかるはずだ。

 それに記憶が飛ばされていると言っても完全にかき消されている訳ではなく、封じられているようなものらしいしな。


「………………それよりもだ」


 まずは循環法を完成させよう。

 そうだ、わからないことを延々考えているのは時間の無駄!

 そう!俺には青い光を発し、天然のブルーライトになるという使命があるんだ……!


「……どうしたんだ?発光?いや発酵か?ブルーライ……?」

「何だ起きたのか、意外と早かったな」

「まあな、あれだけ普段からお前に鍛えられていたらこれ位には―――――――」

「二度と起きれなくするような勢いで殴ったんだがな、それでもわざわざ起きた直後に殴った本人に会いに来るとは………………、さてはお前マゾだな?

 ああ、そう言えばお前をこの前ゴブリンの巣窟に突き落とした時にも嬉々とした表情で帰ってきたよな。それに――――――」

「…………」


 次々と出てくる罵詈雑言に困惑し、固まるビニシオ。

 ククク………………、やはりこの男いじりがいがあるな。




 ー1時間後ー




「できない」

「もう一度確認したらどうだ?」

「もう、何回も、内容を覚えるくらいに、確認しまくったのをお前は見ていたはずだよなあ?」

「うーん……」


 ビニシオに罵詈雑言を浴びせた1件から早3時間が経過した。

 今回の活動時間は大分マナを消費したのであと1時間もない。

 だが、何としても今日中に完成させたい。


「心拍数をあげる感覚!」

「……光ってないぞ」


 先程から幾度となく繰り返してきたビニシオとのこのやり取り。

 何度も何度も何度もナンドヤッテモデキナイ。


「………………クロノス」

「何だ」

「意図的にって書いてあるんだからもっと意図的にマナの操作とかできないのか?」


 教本片手に話しかけてくるビニシオ。

 だがそもそもマナを操作すること自体意図的なんだ。

 意図的にやっているものをもっと意図的にやれと?


「マナを操作すること自体そもそも意図的なんだがな」

「じゃあもっと大袈裟にやってみればどうだ?」


 大袈裟に?

 どう言うことだ?大袈裟に?そもそも大袈裟にやって良いことなんか無いじゃないか。

 時間のロスに加えて余計な思考が余計に時間のロスに繋がる。

 恣意的解釈は頭のおかしいやつがする言わば愚の骨頂――――――――。


「いや、時間のロスだとか考えているような顔してるけど、もっと体だ全体に回るようにしたらどうだ?

 話を聞いてる限りじゃ1ヵ所しかマナを集中させていないような感じだが?」

「………………………………………」


 ――あ。

 ――そうか。

 ――そう言うことだったのか!


 いや、別に今のは某有名少年雑誌で連載している高校生探偵が恐らく薬品の名前からしてアポトーシスを活用した薬品によって小学1年生となり1日に2回事件に巻き込まれ、類稀なる推理力で事件を解決していく俺のだいッッッッッッ好きな主人公の決め台詞を借用したなんてことはガッツリあるが。


「因みにアポートシス(apoptosis) とは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死(狭義にはその中の、カスパーゼに依存する型)のことだ!!

 親愛なるWikipediaさん参照ううぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

「…………とうとう壊れたか、いつかは壊れると思ったがまさかこんなに早いとはな」

「ああ、ビニシオ君。

 今日の俺は機嫌がいいし君のお陰でヒントが掴めた!

 そんなことでいつものテンションに戻そうったってそうは行かないよ!

 アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

「本当に、壊れた、か?」


 最後にビニシオがボソッと何かを呟いた、が、聞こえなかったし、興味もないし、むしろ黙れ♪


「こんな簡単なこと、ビニシオに言われてから気付くなんて!」

「おい」


 今気がついた。

 俺は今まで固めたマナを体の中で回していたにすぎなかったんだ。

 循環法、それはマナを意図的にギアをあげて循環させ身体能力その他もろもろの強化をするというものだ。

 そうだな、例えるなら縁日のときに出てくる(スーパーボール)掬いと言ったところか。

 固めた(マナ)1つを動いていない水に浮かべても少ししかエネルギーは生まれない、処かマナを動かすのに逆に消費してしまい発光なんかできない。

 つまりだ、固めたマナを動かすのではなく、水そのものを体全体を巻き込むように回転させていけばいい………………!


「こう、かっ?」


 意識しないと感じることができないが確かに体に循環しているマナ。

 それを回転するプールのように全体的に回転させていく。


「…………………っく」


 奥歯を噛み締める。

 歯軋りが聞こえるくらいの圧力がかかる。

 最初は体のマナに何の動きもなかった。

 だが自転車のペダルの最初の踏み込みではスピードが出ないようなものだった。

 電車の車輪のように、少しずつ、少しずつ、マナの循環するスピードが早くなってくる。


 自転車のギアをあげるようにマナの循環するスピードを上げる。

 すると徐々に足元から熱気を感じてくる、だが嫌な熱気ではない、心地のいい春のそよ風のようだ。


 さらに回転数を上げていく。

 すると回転数に比例するように足元から感じる風邪も強くなってく。


「クロノス⁉」

「黙っと、け!」


 今集中力を手放してはいけないということは本能的にわかる。

 ビニシオと話しているような余裕は持ち合わせていない!


「ふっぅううううう…………………」


 一旦息を吐いて気合いを入れ直し更に回転数を上げていく。

 既に風は突風と化し、俺の着ている服はたなびき、髪の毛は逆立っている、まるでスーパー〇〇〇人だ、まあ髪は黒いままだし目はブラウンのままだろう。


「…………………あ」


 ビニシオが呟く。

 その目線は俺の手に注がれている。

 視線を落とす。

 見えるのは俺の手ではなく、その回りに漂う『青い光』。

 漸くか、と思う反面、できたという複雑な心境により俺の口角は自然と上がっていく。



 ―――――――循環法、成功だ。



  ー数週間後ー


 俺はこの数週間で循環法の発動に関して言えばマスターしていた。

 そうだな、具体的に言うと教本片手に寝転がりながら鼻唄を歌い循環法を使用するという具合だ。


「お陰で循環法は完璧ですね」

「いきなり話しかけてくんなや、アシュリー」

「だってっ!最近あなたが少しも相手してしてくれないからっ!」

「爆発してしまえ」

「融解しても構いませんよ」


 因みに今は活動限界を迎えたために人魂状態だ。

 ああ、そうそう、ステータスが表示されるこの眼鏡だが、長くつけすぎていたために取れなくなってしまった。

 まあ不都合はないのでこのままでも特に問題はないのだが。


 話の論点がずれたな、循環法について。

 循環法を現世で使用したところいろいろとわかったことがあった。


 1つ目は基本的な身体能力の向上である。

 ステータスで視る限り循環法の回転数が多ければ多いほどその分身体能力の強化はつよくなる。

 今のところの回転数では限界が見えないため一応循環法での身体強化は限度がないと思われる。


  2つ目は循環法は意識したところを重点的に強化をする事ができる。

 例えば脚に意識を集中させると一歩、たったの一歩だけで十数メートル以上移動できる脚力が得られる。

 また、腕に集中させるとビニシオが移動させることができずに愚痴を言っていた大岩を意図も簡単に粉砕することができ、ビニシオに自慢することができる。


 このようにまだ循環法については少ししか分かることがないが、これから研究して完璧なものにしてやる。


 クククククククっ、時間はたあっぷりあるんだ。




 ――――――――とことん極めてやる…………………!






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