Henntaiの下僕に彼女ができた
ビニシオとファーストコンタクトをとった日より凡そ半年が過ぎた。
あの時魔物の討伐に参加していたメンバーは全員が生きていた、倒れていた者も気絶程度で済んだようだ。
まぁ、気絶程度で済ませられるように罠の配置を考えたのだから当たり前と言えば当たり前の結果だけどな!
「絶妙な配置だっただろう?」
「それは既に28回目ですが感心する配置でしたと言っておきましょう、28回目ですが」
「ふふん!」
「口元が緩んでおりますが」
口元が緩んでる?当たり前だ何かもくろみ通りに事が進むと嬉しいだろう。
「私の場合は殆どがもくろみ通りに進む事が無いですね」
「イメージが足らないんだろ」
「そうゆうものですか」
感心したようにアシュリーは口に(モザイクがかかっているためはっきりと見えている訳ではないが)手を当てている。
今イメージと言ったものの事をうまく運ぶためには多くの失敗パターンを予測しなければならない。
失敗は成功の元と言うことわざがある、多くの人は失敗をしないようにに学ぶことだと思っているだろう。
だが俺はこう考えている、失敗から学んでいきなり成功させようとするのも考えながらまた失敗の後の対処法も同時に考える。
昨日の今日でできないことが出来るようになれば誰も苦労なんてしない。
まぁ、兎に角失敗のパターンとその対処法方を知っていれば知っているほど成功の元確率は上昇するだろう臨機応変と言うやつだな。
普段からこの事を考えているような人物がいるなら大したものだと思う。
話しは変わるが今日は前回現世に降りた時から1週間が過ぎたのでビニシオに会いに行く予定だ。
さて、3ヶ月の間にあったことを纏めて簡潔にストーリーで説明しよう。
◇◆◇◆◇
―耕作編―
あの魔物の討伐と、ビニシオとフィルの出逢いがあったすぐ後に俺はビニシオにある指示を出した。
「耕せ」
「あぁ」
「耕せ」
「あぁ!」
「耕せ」
「しつこいよ!」
そう、ビニシオに出した指示とはとにかく耕作地を作ること。
長らくほったらかしにされてきた土は硬くなっているし、雑草も生え放題だ。
幸いにも木は生えていないので切り株を引っこ抜くと言う大労働はしなくて済みそうだ。
それに1年は土の栄養素などの問題は考えなくて良さげだ。
まぁ、灰とかは貯めさせて集めておかねばならないな。
「早くしろ」
「そう思うなら手伝えよ!」
「羽ペンより重いものを持ったことがないのでね!」
「嘘だ!この前軽々と大岩粉砕してただろうが!」
はぁ、まったくうるさいやつだ、この前は耕作に邪魔でビニシオ一人じゃどかせないと泣きついて来たので少しだけ手伝ってやっただけだ。
毎度毎度やるわけがない、そもそもそんなことに力を使っていたら1週間に1度しかない貴重な活動時間が減ってしまう。
実験のつもりで少しだけマナを使ってみたつもりだったが思った以上にマナを使ってしまった、詳しくは後はどの魔法編で説明する。
「それはその岩が腐っていたんだろうよ」
「岩って腐るのか!?」
「あぁ」
「それこそ嘘だ……ッ!」
ふむ、この世界でも石は腐らないのが常識らしい。
だがこの世界にも水素などの原子と言うものがあるのならば腐る石渡は存在するはずだ。
まぁ殆どが硫化物、例えば黄鉄鉱(FeS2)等だろうが。
話がこじれたが兎に角腐る石がある、と言うことが言いたかったのだ。
「嘘じゃないんだがな……」
「信用せん!」
「いい判断だ」
人の事を信用するようではこの先が思いやられる、少なくとも俺が信用に足る人物だと判断しない限りはオールディス家には関わらせない。
人選ミスで俺の人生を、いや、俺の第二の人生を不意にするようなことは他のだれでもない俺が許さない。
「はぁ?」
「そんなに簡単に人を信用するなって事だ、人には誰にでも二面性があるんだ、それを見極められるようにしろ」
「……お前は馬鹿なのか頭がいいのかわからないな」
「はっ……馬鹿に天才の考えがわかるはずなかろう?」
「それは暗に俺を馬鹿だと?」
「ご明察」
「この……、いやもうその手にはのらんぞ」
ほう、大分成長したじゃないか。
少し昔だったらワンワンわめき散らしてたもののどうだ、この確固たる意思を秘めたこの力強いこの目!
流石俺毎日のようにあの手この手を駆使して罵詈雑言を浴びせてきたかいがあったと言うものだ。
何?
本当にそんな計画だったのか、だって?
当たり前じゃないか、ただひとつ予想外だったのは中々楽しくて当所計画していた気力UP計画より大幅に段階が進んだことだ。
本当の予定だったら今は大体30辺りだが今現在のビニシオの気力は既に67だ。
正直最近反応が悪いような気がしてステータスをチェックしたら予想以上に成長していた。
オールディス家の当主候補には気力に関しては半年間俺の罵詈雑言を聞き続けると言う試練を与えるのもアリかもしれないな。
いや、話が大分逸れた、耕作の話だったな。
今ビニシオが育てている作物は夏野菜である。
大豆やとうもろこしなどの保存が効く作物を中心としたものを作らせている。
作物の種だがビニシオがこの間助けたフィル・マーガレットから頂いたらしい。
密かなるアピールだと信じたい。
「なぁ、次は何をするんだ?」
「あぁ、次か」
「…………?」
「特に決めてないな、自由だ」
「………はぁ?」
ビニシオの代では特にやれる事はない、貯蓄をしてもらえば次の代に生かせる位か。
500年後に生まれるのだから今はそんなに無理をする必要はない、ビニシオには友人として激動の人生はあまり送ってほしくない。
「な、何だよそれ」
「………要するにだ、テメーのやれる事をやりやがれって言ってんだよ、フィルのこと、気づいてんだろ?」
「うっ」
やはり気づいているようだ。
ふん、いじり回すネタが増えた。
これからが楽しみだ、なぁ、ビニシオ
「嫌な予感がする」
カンがいい人間はあまり好きじゃない、使いずらいからなw
―恋人編―
耕作のストーリーから凡そ2ヶ月程が過ぎた。
最近良く聞くのは魔物の行動が活発化してきていることから魔神が復活するのだとかが噂されている。
回りの雰囲気も大分ピリピリしてきている。
そうだ、最近変わった事と言えばもう1つ、先程とはうって変わって素晴らしいものがある。
そう、ビニシオに恋人ができたのだ、しかも飛びっきりの美人である、大体予想はつくだろう。
「ふぅ~………」
ビニシオは腰を軽く叩きながら背伸びをして体を伸ばす。
つい先程までくわで土を耕して畝を作っていたのだ、しかも結構な時間、凡そ5時間ほどだろうか。
「よっこらせ」
おっさん臭い掛け声と共にビニシオはくわを地面に置いて近くにあった岩に腰掛ける。
「はぁ……頑張っているのには感心するが、その年寄りのような立ち振舞いはいかがな物かと思うぞ?」
「しょうがないだろ、癖なんだよ――――」
ビニシオに向かって親しげに話し掛けたのはいつものように赤いレッドドラゴンの鱗を素材として使った鎧でない姿のブロンドヘアーの女性。
「――――フィル」
そう、フィル・マーガレットだ。
彼女はグルニシア大陸、フィスラル国の南部に位置するダルシアの街にある『ペンドラゴン協会』のダルシア支部のマスターである。
今日は深紅の鎧ではなく、薄い青色をしたワンピースを着用している。
「………頑張っている貴様に土産を持ってきたぞ」
「ありがとう」
フィルは手に持っていた竹細工のようなバケットをビニシオに差し出した。
中から覗いているのは恐らくフィル手製のサンドイッチの様なもの。
「水もあるぞ」
「あぁ」
ビニシオも最近はわめき散らす事はなくなりクールなイケメンになっている。
この間の北の森での騒動は終息し、またペンドラゴン協会本部からの厳重な調査が終わり、ビニシオに山菜を集めさせた。それを街で売らせて金にした。
そしてその金でビニシオは今、この世界で一般的に着用されている民族衣装のようなものを着用し、また生え放題だった髭もキチンと剃られている。
「作業は終わったのか?」
「あぁ」
ここ最近フィルは毎日ビニシオに会いに来ている。
毎日だ、ペンドラゴン協会の1マスターが毎日ビニシオの為に時間を作って“会いに来ている”。
ビニシオが行くのではなくフィルが来ているのだ。
「少し、歩かないか?」
「あぁ」
大体がフィルのリードで俺はテメーは草食系男子かコラ!草ばっか食ってるから食物繊維の過剰摂取で消化不良起こしてんのかヘタレがッと、毎日のように考えている。
ビニシオからの押しが少ないのだ、もっと攻めろ!と『伝心の琥珀』を使って言っているのだが、ガン無視されている。
『コラ!攻めろ!』
「…………」
(や、野郎俺をまた無視しやがったな!)
初代から失敗してしまったかもしれない。
―フィル視点―
私には慕っている人物がいる。
名前はビニシオ・オールディス、赤茶けた髪の色に澄んだ茶色い瞳。
初めての出逢いは森の中、私は致死性の毒を受けて瀕死の状態だった。
だがたまたまの“偶然”が重なり、私はビニシオに助けられる事になった。
私は3年ほど前まで王都にある『ペンドラゴン協会』の本部でチーフとして勤めていた。
マーガレット家は『ペンドラゴン協会』の創始者、アーサー・ペンドラゴンの妹、マーガレット・ペンドラゴンの直径の子孫である。
そのためマーガレット家は代々『ペンドラゴン協会』で重要なポストについている。
だが私の場合、1組員として16才から協会に入会し地位を築いていった。
自分の実力ではなく他人の力を利用するのは納得が出来なかった、それが自分の祖先だったとしてもだ。
『ペンドラゴン協会』に入会した後最初に待っていたのは魔物の討伐依頼だった。
マーガレット家は女児でも幼い頃から『ペンドラゴン協会』に関わりがある者としてそれ相応の戦闘訓練を受けるのが習わしだ、私も例外ではない。
そのような背景があり言い訳にしかならないが私は油断していた、北の森の時と同じだ、そう思うと私が成長出来ていないのが実感できてしまうな………。
――
「―――今回の依頼はゴブリンの討伐だ」
「はい」
今回の依頼、私は職員試験としてゴブリンの討伐を受けた、因みに職員試験とは通常の組員ではなく管理として働きたい者達が受ける試験だ。
「最下級ランクのゴブリンだからと言っても油断はするな、相手には意思がある、己を殺そうとするものに遠慮なんてしてくれないぞ」
「わかっています」
即答。
そんなものは何度も何度も聞いている、小さい頃から両親に言われてきたことだ、そんなことはわかりきっていた。
数時間後、自分の認識が甘かった、いや、甘すぎたことを正しく認識する事になった。
いつものようにかたをつけようとしたのだが思いがけない猛反撃にあってしまい結局は試験官の手を借りる事になった。
この時だ、私が協会マスターになろうと決心したのは。
そんなこんなで6年を費やして『ペンドラゴン協会』本部のチーフまで私は上り詰めた、そしてつまらない規約違反をしてこの町に左岸された。
この町に来て、ビニシオに出会うまで私を助けようとするような男はいなかった。
それもそうだろう、協会のチーフ承認試験としてレッドドラゴンを討伐するような男勝りの女を誰が心配するんだ、という話だ。
まあ、優しくされたから惚れたというわけではないのだが。
最近は時間をつくってビニシオに会いに行くようにしている、協会の皆が協力してくれるからこそ出来ることだ、皆には感謝しなければな。
殆ど出来なかった料理も協会の女性職員に教えてもらって簡単なものだったら出来るようになった。
だが最近ビニシオの様子がおかしい、話しかけてもどこか上の空でいつもなにか考えているような感じだ。
―――少々心配になってしまう。




