表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

暗躍のHenntai

 先刻、恐らく昆虫型の毒を持った何かに襲われ、街の広場で息絶えた『ペンドラゴン協会』の組員。

 組員がどこで襲われたのか、近場だったとしたらビニシオに害が及ぶ可能性がある。

 その為組員が襲われた場所を把握しなければならない。


「ここが『ペンドラゴン協会』………か?」


『ペンドラゴン協会』に行き、死んだ組員の身元と依頼を受けていたなら何処に行っていたのか、この2点を確認しに行くと行ったオッサンに付いていくと巨大な建造物が表れた。

『カラス武具店』や『フクロウ』とは違い竜の形をしているわけではない。

 豪邸と呼べるような複数の巨大な建造物の集合体、また一番高い屋根には旗が翻っている。

 旗には先程地面に描かれていた赤いドラゴンのイライストがある。

 

「職員を呼んでくれ!」

「……どうした?」


(おぉ!)


 入口の門を開いた瞬間にオッサンが叫ぶと奥からいかにも世紀末覇者の様なファンキーな格好をしたスキンヘッドのサングラスをかけた若い感じがする細いが確りと筋肉がムキムキの兄ちゃん。

 その肩パットには天をつくように棘が付いている、テメーは某F軍団の一味なのか?


「このプレートの持ち主の特定をしてくれ!多分昆虫型の毒を持った何かに殺された!」

「な、何だって!?」

 

 完全に俺の台詞をかっさらっていきやがったが余計なことで時間を取りたくないので“今”は黙っておく、“今”はなっw


「待ってくれすぐに確認してくるっ!」


 サングラスをとった兄ちゃんの目はキラキラと輝いていた。



 ――

 


「仏さんの名前はビルヒリオ、ランクはフォースだな

 死ぬ直前に受けた依頼は北の森の定期調査だな」

「ふむ、ならそこでブスリ、が自然な流れだろう」

「………だがあの森には強力な毒を持った魔物はいないはずだが…?」

「外来種、もしくは異常体、か?」


 先程広場から死体が運ばれてきた、やはり毒が原因で死に至ったようだ。

 それに加えて3本の深い切り傷はもう1つの驚異が見えてくるのだが……。


「やっぱり昆虫型の強力な毒を持った魔物か」

「そうだな」


 やれやれ、こんなことをしている様ではペンドラゴンの組員も高が知れているな。

 ふむ、口を出すことでもないか。

 さて、ビニシオの所に行くとしよう。

 ー応北の森には近寄らないように警告しておいてやるか。

 いやその前に色々と信頼づくりとビニシオのステータスチェックに……。


「良く考えろバカ者!」

「んっ?」


『ペンドラゴン協会』を出ようとしたその時、頭上から通りの良い声が響いた。

 見上げると赤い鎧を身に纏ったブロンドヘアーの女性が階段を下りてくる所だった。


「その男の傷を見ろ!明らかに猫型もしくはそれに近い魔物の仕業だろう」

「た、確かに……」

「だ、だけどマスター!北の森には凶悪な魔物はいないはず!」


 マスター、恐らく単語からして彼女がこの『ペンドラゴン協会』のボスなんだろう。

 ちなみに今さらだがこの世界の言語と地球の言語は全くの別物だ。

 アシュリーが俺の頭に直接言語を叩き込んだらしい。

 読み書きに関しては俺に問題があるので無理だったらしい。

 全く、アシュリー様様だな。


「……最近は各地で魔物の活動が活発になってきているらしい。

 この付近でも変化がみられてもおかしくはないだろう」

「なら、早く対処を!」


 ワォ、なんつー美人だよおい、おまけに鎧の胸回りからすると凄い巨乳だ。



「何だ?」

「………部隊の編成と協会の解毒薬の確認を急げ、依頼の成功報酬を少し割高にすれば人は集まる」

「………ふむ、確かにそうだな」


 少し見ていたら感付かれて目があった澄んだ緑色の瞳の奥には確かにマスターと呼べるような気迫のようなものを感じる。

 とりあえず、話をすげ替えた、マスターなんだからこんな仮面に全身タイツではなくローブの怪しい男をナンパするより先にすることがあるだろう!


「―――あるだろう!」

「そ、そうだな、別にナンパした気は無かったのだが………」

「さっさと仕事に戻れ!」

「う、うむ」


 ふむ、口に出ていた、が、さしたる問題でもないだろう。

 あちらもやることがあるのだ、一々俺のような変態に気を使う暇はないだろうしな。


「マスター、やっぱり解毒薬とかの回復薬が足らないです!」

「仕方ない、放っておけば街に被害が出るかもしれない、あるだけでいい、集めてこい!」


 …………フラグか?

 いや、フラグに違いない、俺には見えたぞ話の流れが!


 協会組員は北の森にむかう、ビルヒリオを殺した魔物を討伐するためだ。

 そこで予想していた以上に魔物が強いか数が多く、辛くも勝利するがマスターは毒を受けてしまう。


「……私も、まだ修行が足りなかったと言う訳……か」


 マスターは既に全身に毒が回っており瀕死の状態、死を覚悟する。


 そこへ、だ!

 スーパーミラクルウルトラハイパーイケた面つまりイケメンが表れマスターを助ける!

 マスターはこうなるに違いない。


「きゃー、かっこいいー、だいてー」


 ふっ、どうだこの名推理!

 シャーロック・ホームズもビックリだ。

 最後らへんが棒読みだった?


 ――――知るか!


「兄ちゃん、妄想は大概にしておくんだぞ、現実と妄想の境がわからなくなっちまう」

「………ソウッスネ」


 またもや声に出ていたらしい、が。

 既にもう妄想の世界に入ってる様なもんだ、と俺は今度こそ胸の内で突っ込んだ。




 ――




「で、その後にビニシオに会いに行ったんだ」

「――――フラグを逆に利用しようとしているのですね?」


 さすがアシュリー、良くわかっていらっしゃる。

 俺はあのフラグの内容を現実のものにするために一晩、おそよ8時間かけて北の森に色々と仕込みをしてきた。

 例えば落とし穴や、ワイヤートラップ等の罠をだ。


「そのイケメンをビニシオにしようと?」

「ご明察」


 そう、マスターが「きゃー、かっこいいー、だいてー」となる人間をビニシオにする、つまりはマスターとビニシオをロンマンティックな出逢いをさせてくっつけてしまおう、と言うことだ。


「そのためにわざわざしたこともない魔物狩りをしたのですか?」

「勝ったんだから良いじゃないか」

「結果論です」

「結果論万歳、終わりよければ全て良し、だ!」

「はぁ………」


 まぁ、多少は無理をしたかも知れないが数十体いた蚊のようなデカイ魔物をほぼ全て撲殺した、何体かは逃げてしまったが。

 幸いにもこの体は良く動けるので毒針を受けるようなことはなかった。


「さて、そろそろ動くかな?」



 ビニシオに意識を飛ばすため、俺はビニシオの持つ『伝心の琥珀』と対になるもう一つの『伝心の琥珀』に意識を集中させた。



 ◇◆◇◆◇



 ―ビニシオ視点―

 


「はぁ……はぁ、…………こんなもんか」


 クロノスから指示を受けて俺の家があるところまで続く1本しかない水路の土や、石、水路を塞いでいる邪魔なものを全て掃除し終わった。


「次は確か…………」


 水車小屋を直せと言っていたな、ふむ、確か家に工具があったような気がする、取りに行こう。


 家まで帰る道すがらある集団を目にする。

 赤い鎧を身に纏ったブロンドヘアーの女性を先頭に北の森にむかっている。

『ペンドラゴン協会』マスターの確か名前はフィルだったような気がする。


「……北の森?」


 クロノスには水車小屋を直した後に北の森に行けと言われている。

 薬草を集めろとも言っていた。

 あぁ、確か家に籠もあったはずだ、ついでに持ってこよう。


 ―


 ――


 ―――


 ――――



「よし、回った」


 およそ1時間ほどかけて水車小屋を修理し終わった。

 水車を回す軸の部分の木材が腐食して外れていただけだったので新しく取り替えてやったらすぐに回ってくれた。


「ふぅ~」

『終わったなら早く行け、時間がないんだ』

「……………突然だな」

『早くしろ、テメーのフラグ回収だ俺の8時間を無駄にする気か!?テメーの苦労が泡になるのは別に構わん!』

「構えよ!」

『だが俺の苦労が泡になる、それだけは許さん!』

「横暴だなっ!」

『俺は500年後を考えて行動してるんだ、テメーの代で失敗してみろ!俺が困るんだよ!』

「それこそ横暴だっ!」


 突然話しかけてきた、そして何故か文句を浴びせられ思わず突っ込みを入れてしまった。

 それにしてもフラグとは何なのだろうか、気になるが絶対弄られるから言わないことにしよう。


『早く行け、薬草を集め終わったらまた連絡する』

「へいへい」


 ここから北の森までは距離が近いため少し走れば10分もすればついてしまう。

 それに危険な魔物や害獣などは生息していないため薬草や山菜を集めるにはもってこいの場所だ。


「山菜も集めるかな」




 ◇◆◇◆◇



 ―フィル視点―



「皆散らばるな!纏まれっ!」


 予想外に多かった敵の数と個体の力。

 それに加えて森の暗さとマッチした魔物の黒さ、つまりは姿を確認できないのだ。

 そして何よりこちらの動きを掻い潜るかのような動き、知能の低い昆虫型の魔物だとは思えない。


「ぐぁ!」

「カイト!」

「バカっ…よそ見をするっ―――」

「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

「ニコラスーっ!」


 連れてきた15人の組員の内、既に7人が意識がないか既に死んでいるかもしれない。

 残っている組員も姿が見えない敵にパニック状態でマトモに戦えるような状態ではない。


「落ち着けっ!………っ、そこかっ……!」


 右側から風が巻き起こった。

 風の向きから予測して剣を振り上げ切りつけながら体を回転させて後ろから横凪ぎの一閃。

 1発目の感触は抵抗があった、しかし二発目は途中で感触が無くなった。


「………木材?」


 カラン、と魔物と思い込んでいたモノが音を立てて地面に落ちた。

 2発目、あれは薪を繊維に沿って割った時と同じ感触だった。


「………っ!?」


 突然右側からブゥーンと言う音が聞こえ、脇腹に鈍痛が走る。

 見てみると蚊のような体長30センチ程の昆虫型の魔物だった。

 恐らくビルヒリオを殺ったのもこれと同種の魔物だ。


(この鎧の装甲を貫くだと!?)


「キィー!」


 私に一撃を入れたことで油断したのか魔物は嬉しそうに鳴き声をあげたがまだだ。

 一撃程度で私が崩れると思ったか、この鎧の材料であるレッドドラゴンを殺した時は受けた攻撃は一撃程度では済まされなかった。

 そのせいで現役を引退せねばならなくなった程だ。


「ふっ!」


 魔物を細切れにすべく剣を振るう、目的通りに魔物はバラバラになって地に落ちた。

 辺りを見渡すが他のメンバーたちもそれぞれ敵を打ち倒したようで辺りは静かになっていた。


「だが………」


 毒を受けたのは痛かった。

 あの街に運ばれてきたの死体を見た限りかなり強力なもの。

 しかし(ポーション)を持っていたポーターは倒れて薬は無惨にも地面に飛び散ってしまっている。

 それに他のメンバーも何人か毒を受けている、残っている薬はそちらに回すべきだ、となれば私の分は残らないだろう。

 だが幸いにもこの森には毒を中和する薬草が群生している地域がある。

 少し遠いがまだ何とか間に合う可能性がある。


「お前たちは薬を使って街に戻れ!」

「マスターはどうするんです!?」

「私の事は心配するな、自分でどうにかする!」


 走れる内に走ってしまわねば、毒が回ってしまえば恐らく走るどころか歩けもしなくなってしまう。

 走って毒の回りを早くしてしまうのは頂けないが選択肢はかぎられているんだ。


「ふっ、運命は神のみぞ知る、か」


 若干の心配を心の脇に押しやり、私は森を駆けて行った。



 ―


 ――


 ―――


 ――――



「…………はぁ…はぁ…はぁ」


 運命の女神は私には微笑んではくれなかったようだ。

 予想外に毒の回りが早く体が動かなくなってきてしまった。

 あともう少しで薬草の群生地帯にたどり着けたのだが、もう私は駄目らしい。


「ハッ、私もまだ修行が足りなかったと言う訳か………」


 その時、ガサリと茂みが音を立てて蠢く。

 恐らくはゴブリンなどの低級の魔物だ、最後に武人として散るのも悪くはないだろう。

 力を振り絞り立ち上がり、叫ぶ。


「我が名フィル・マーガレット!栄誉ある『ペンドラゴン協会』のマスターだ!」


 名乗りをあげて剣を抜くが予想外のことが起きた。


「………えっと、ビニシオ・オールディスです」


 茂みから出てきたのは赤茶色の髪をした男だ、多分私よりも少し年上だろう。

 身なりはボロボロだが中々整った顔をしている、それに澄んだ目をしている。


「………え?あぁ了解」

「………?」


 何かと話しているようにしていたがこちらを見て背負っていた篭を下ろす。


「座って」

「は?」

「いいから早く」

「……あ、あぁ」


 ビニシオ・オールディスは何故か私が毒を受けていることを知っていた。

 そして“たまたま”持ち合わせていた薬草をこれまた“たまたま”持っていた調合をする道具を使い薬を作ってくれた。


「ありがとう」

「ああ」






 これが私と、ビニシオとの最初の出逢いだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ