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不屈の精神それはHenntai

 駄目だ、こいつ俺より腐ってやがる。

 男の名前はビニシオ・オールディス、体型は痩せぎみでボサボサの髪にだらしなく髭を蓄えている

 さてさて端的に説明するならばこの男は湿潤気候で麦を育てようとしていたおバカさん。

 今は幼馴染みに彼氏ができてから自分の人生が狂い始めたとか何とかまるでのび太くんのような言い訳スキルだ。


「何人のせいにしてんだよ」

「……………は?」


 真上から話しかけたのにも関わらず下を向いたままウジウジメソメソ。

 あぁ、情けねぇ、アダ名をのび太二号にしてやろうか?


「上だぁ、目え開けぇ、男がうだうだウジウジ情けねぇなぁ」

「だ、誰なんだよ!」


 誰なんだよ?500年後に産まれてくるテメーの子孫だどうぞ夜露死苦!

 って言っても信じないだろうし、言わない。

 それにいきなり話しかけてきて情けねぇって言われた事に対して怒っているようだが。

 怒っているのはこっちなんだよのび太二号、青い狸の腰巾着が。


「あ~あそうだ、情けない、昼間から酒を浴びてダラダラ ダラ、働けや!」


 自分は不幸だ、自分ばかりが不当に扱われていると不満を言うやつほどこの様に努力していない、いや、努力をしたつもりなのか。

 未来の話をしたところでその過程がはっきりしていなければ挫折するものだ。

 だからよく若い内に苦労はしておけ、と言うが、夢を結果として捉えるとしたら若い人は結果のみを追いがちだ。

 本来は結果は過程がなければ成り立たないその事を学べと言っていると言う意味だと俺は考えている。

 そして結果のみを追うとこののび太二号と同じような事になる。

 

「働いたさ!働いて麦を育てようとしたんだよ!」


 出た、こう言うやつらほど得意で習得している『言い訳』のスキル、俺も昔は同じように言い訳ばかりしていた。

 …………あれ?昔は?確か俺は記憶が飛ばされているはずなんだがな。

 まぁ、いいか、取り敢えずはこののび太くんをどうにかせねば。


「あぁ~?ばっかじゃねーの?湿潤気候で麦が育つ分けね ーだろ」

「は?」

「育てんなら沼があんだから米にしろ」

「こ、米ぇ?」


 突然何を言い始めるかと思えば、米の育てかたなんて知 らねぇよ、とのび太くんは言う。

 安心しろ米の栽培法なら俺が知っている、働けやのび太くん、と俺が言う。

 だが、湿地帯で沼があるのに米を育てようなんて考えすら無かったようだ。


「こんなボロっボロのオンボロ屋敷に住んでると頭の中身 までボロになるのか?」

「何なんだよアンタ…………」


 俺は今、アシュリーから貰った体で現世に来ている。

 だが、俺は生きている人間と死んでいる人間の狭間の状態らしい。

 そんな中で現世のものと長時間関わると世界のバランスが変わってしまうので話せる時間は限られていてこの機会を逃すと暫くコンタクトが取れない。

 なので、ここからは俺の巧みな会話術のお披露目だ。


「喜べ守護精霊様だ、崇め奉れ!」


 まずは掴みだ、俺はこれから何代にも渡ってオールディス家に関わっていく予定だ、正確には500年間。

 一々姿を変えて自己紹介に始まり信頼づくりをして、等をしていたら時間の無駄になる。

 だからこの世界に実際にいる精霊を名乗ることにした。

 そうすれば長く生きていても精霊は長寿らしいから別に怪しまれないし、親から子へと紹介されていって一々面倒な人間関係を築いてくようなまどろっこしい真似はしなくて済む。


「しゅ、守護精霊?」

「あぁ、俺の名前はクロノス、喜べ今から500年の間にオールディス家を最強にしてやる!」


 農耕神としてして崇められているがこの名前を使ったのは単に語呂が良かったからだ。

 最強にしてやる!って言ったのは最後に俺が最強になる予定だからだ。

 レッツ異世界無双♪


「クロノス?………ふざけてるのか?」

「いぃ~や、ふざけてなんざいない、500年間、オールディス家を導くのが俺の役目なんでな」

「…………」


 さて、先ずはステータスのチェックをしよう。


 ――


 ビニシオ・オールディス(32)


 レベル7


 OP32/32


 MP12/12


 戦闘力30(攻8 守7 立15)


 気力1


 ――


 低っ、何だよこのステータス、低すぎだろ!

 因みに俺のステータスと比べると差は歴然だ。



 ――


 クロノス(仮・嘘)(0)


 レベル1


 OP809/1000


 MP809/1000


 戦闘力100(攻40 防30 立30)


 気力6000


 ――


 さぁて、先ずはステータスの説明から行こう。

 ってまぁ俺もアシュリーから聞いた話をそのまま横流しするから細かいところは君たちお得意の想像力でカバーして頂戴な。


 先ずは名前、その横の()に年、


 レベルと言うのはRPGと同じようなもので経験を積むと上がり、戦闘力や魔力、気力の部分がプラスされる。

 また、経験を積むと上がるので別に魔物を狩って経験値を手に入れるだけが方法じゃない。

 例えば木刀を毎日10000回振ったとしよう、確かに魔物を狩って経験値を得る方法の方が効率はいいが木刀を振る、これでも経験値は手に入る。


 次にOP、これはRPGで言うとHPになる、オドポイントの略らしい。

 そしてOPは生命の源オドを数値化したものでこれが0になってしまうと死んでしまうので要注意。


 下のMPはマナポイントの略、これはOPと連動していてOPが少なければ回復が遅くなり、多ければ回復が早くなる、マナも元を正せば生命の源、オドになってくると言うことだ。


 何故俺のOPとMPが減っているかと言うと、はっきり言えば死んでいるからだそうだ、この世のものじゃない俺を世界が弾き出そうとしているんだそう。

 現世にいられるタイムリミットは1日、それを過ぎると魂ごと跡形もなく消えさってしまうらしい。

 因みにOPとMP共に1になるまで現世にいた場合全快するまでに1週間の時間がかかり、完全回復するまで現世には行けないそうだ。


 そして戦闘力、これは攻(攻撃力)防(防御力)立(立ち回り)の3要素を足した数になってくる。

 攻撃力は肉体の力だけではなく、経験から来る攻撃のタイミングなどのセンスも含まれてくる、防御も立ち回りもだ。

 防御はそのまま防御、立ち回りは戦闘に置ける足運びの能力であるらしい。

 立ち回りは攻撃力、防御力、どちらにも通ずるらしいから戦闘センスを強くしたいときは立の数値が高ければいいらしい、つまり結婚相手を立のステータスが高い人間にしろ、ってこった。


 最後に気力、これは諦めない気持ちや、根性など主に精神力が関係しているらしい、家を発展させていくには幼い頃から多少の試練を与えてこの気力を鍛え上げ、鋼の精神力を持つ当主を育てねばならない。


「………働けぇ!」

「はっ!?」

「何なんだよ気力1っつーのは!テメーは産まれたての小鹿ですかぁ!?怖くて足プルプルしてますかぁ!?」

「なわけ無いだろ!」

「プルプルしてますねぇ!シチャッテマスヨしてんだよ!」

「何でキレられなきゃいけないの!?」

「ジーザス!」

「こっちのセリフだよっ!」


 ふぅむ、とにもかくにも先ずは気力を鍛えなければ、この調子でいじめて楽し………、鍛えていこう!



 ―数時間後―



「もうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだ」

「………………遊びすぎたか」

「遊んでたのかよっ!」

「何だまだ元気じゃないか」

「心身共に疲労困憊ですがっ!?」

「叫ぶだけの元気があるなら3年は死なないさ」

「……………」


 ふむ、ここでステータスを見てみよう。



 ――


 ビニシオ・オールディス(32)


 レベル7


 OP32/32


 MP12/12


 戦闘力30(攻8 守7 立15)


 気力7


 ――

 

 素晴らしい!

 3時間、思い付く限りの罵詈雑言を浴びせ、罵った所、気力が6もアップしている、まぁ、俺の6000には程遠いけど。

 確かこの世界の平均だと気力は40位が望ましいらしいが知らん、オールディス家の人間には最低でも70の気力を身に付けてもらう。

 そうだな、当主は気力が高い方がいいだろう、長男が引き継ぐのではなくて、気力が高いやつを俺が選定して指名できるようにしようそうしよう。


「あ、やべ………………」

「く、クロノス?体が………」


 体が光始めた。

 確かアシュリーが言っていたな、体が光始めたらもうすぐでOPとMPが切れると言う警告だと。

 ならばまずい、早く還らねば。


「ビニシオ!」

「………いてっ、て何だこれ?」

「肌身離さず持ってろ、無くしたり売ったりしたら呪い殺す!」

「わ、分かった」


 アシュリーに貰った通信ができるアイテム『伝心の琥珀(こはく)』、琥珀の中には何かの虫がいるがなんの種類かはわからない。

 それを投げたら丁度鼻の部分にヒットしたからビニシオが軽く呻いた。


 装飾はしていないが持っているだけで言葉が交わせるガラケーみたいなものなので、指示を飛ばすのには持ってこいのアイテムだ。

 これで指示を飛ばしながら作業を進めていけばいい。


 掴みは上々、これからが正念場だ、最初が肝心だとよく言うしな。



 ◇◆◇◆◇



 ―ビニシオ視点―


 クロノスと名乗る男が来た、オールディスを500年間守護する守護精霊だとか言っていた。

 身長は高めで全身白いローブで身を包んでいて顔は仮面をつけていた為分からなかった。


「………これ、売れば高いよなぁ?」


 先程投げつけられた琥珀、これだけの大きさなら貴族様が買い取ってくださるに違いない。

 そう思ったのは一瞬だけクロノスのあの言葉が脳裏に蘇る。


『無くしたり売ったりしたら呪い殺す!』


 あの目は本気だった、殺る気だった、完全に、完璧に。

 あの数時間に及ぶ罵詈雑言を浴び続け、心が折れそうになるといきなりやさしくなり、立ち直ったらまた罵られる。

 あれはプロだ、多分そう言うのが好きな人を罵るのを職業にしてるんだ、そうに違いない。


『誰がそうゆう職業たコラァ!縛ったろか!?』

「…………いっひぃ!?」

『落とすなや!割れたら1週間無駄になるんだぞ!てめぇ500年の間に1週間が何回あるかわかってんのか!?』

「知らねぇよコラァ!」

『26071.4285714回だコラァ!』


 多いじゃないか!、と言おうと思ったが絶対論破されるので黙る。

 てゆーかこのやり取りこそ無駄じゃないか?


『テメーの気力を上げてんだよこの、のび太小鹿バージョンめ!』

「のび太誰だし!」

『瓶底メガネの黄色い服てる青い狸の腰巾着だ!』


 それこそ誰だし!と言おうと思ったがやはり負けると思ったってゆーか、本能がそう言ったので黙る。


『その琥珀が俺との会話を成り立たせてるからなくすなよ、殺すぞ』

「あぁ、分かった、分かった売らない、だから本題に入ろう」

『テメーに仕切られんのは癪に障るな………まぁ、いいか』


 クロノスが本当に守護精霊だとしたら俺との会話には何か理由があるはずだ。

 ヤツと話していると(やつ)れてしまうさっさと本題に入って貰い、会話を切った方が懸命だ。


『よし、じゃあ言うぞ、先ずは水路を直せ、水車小屋もだ、直し終わったら北の森で毒消し草を探してそのまま待機、俺の指示があるまで動くな、動いたら三角木馬にロウソクたらしの上むち打ち100回だ!』

「…………へいへい了解しました」

『ふむ………1上がったな』

「は?」

『こっちの話だ』

 

 まぁ前半部分はふざけていなかった、水路を直さないと水が通らないし、水車小屋がないと水が流れない。

 前々からやろうと思っていたのだけどヤル気になれなかった、だけどクロノスに背中を押されて踏ん切りがついた。


 そもそもクロノスが俺の前に現れなかったら働く気にもならずに金がつきて死んでいただろう。

 何をするにも考えがネガティブになって諦めていたし、そうだな、俺はクロノスに命を拾われたのかもしれない。

 あのまま野垂れ死んでいたかも知れない命、まともになれるチャンスだ。




 よし、やったる!




 俺は変わるんだ!


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