笑うHenntai
よし、決まった、あのモザイクから500年をもぎ取った。
これで俺がミスをしない限り俺の異世界無双は完璧なものだ。
だがその前になくてはならないものをモザイクに聞くとしようか。
「そこなモザイク」
「何でしょうか」
「名前は?」
「何のですか?」
「俺とお前の、いつまでもモザイクだとこっちが気まずい」
「そうですか、まず貴方の名前ですがお教え出来ません、転生後に色々と矛盾が生じてしまいますので、次に私の名前ですが、そうですね、アシュリーとでも呼んでください、偽名ですが」
「偽名かよ」
「何か問題でも?」
「いや、そうだな特に問題はない
それに時間が勿体無い、さっさと初めよう!」
そうだ、500年と言う時間制限があるのだから一日でも一時間でも一分でもー秒でも、無駄にすることはできない、いやしない。
――
つー訳で始めるわけだが。
先ずは構想から練ってみようと思う。
ズバリ目標でも作ろうぜって話だ、何事も目標がないまま進んだら挫折してしまう。
あれ?なんか俺挫折しまくりの人生だったような気がしてきた………。
よし、なら来世では挫折しないように頑張って家を発展させていこう。
よし最終目標は『異世界無双をする』これは確定している。
じゃあ次だ異世界無双するにも色々ある、単に力が強くて異世界無双、魔力量が尋常でなくて異世界無双、現代知識流用で異世界無双などなど。
俺がラノベで得た異世界無双についての知識はこんなところかな。
だけど俺は世界を発展させて尚且つ異世界無双しなきゃいけない。
なら生産系異世界無双か?だけど俺にはそう言った武器とか兵器の開発方法の知識はないし、無双するなら鍛えて行ってとかがいい!
となるとあれだなやっぱ肉体とか魔法での無双に限られてきちゃうな。
世界の発展だったら新しい魔法を作るとか。
映画を見まくっていた俺に魔法を作らせてみろ、星ひとつ吹き飛ぶからな!
ドーカンのバガーンのチュイィィンのパウンパーウン(レーザーの音)!だからな!
とまぁ、冗談フルスロットルは一旦やめよう。
取り敢えず、普通に魔法での無双だな。
「なぁ、やっぱ魔法を使うなら魔力とか必要なのか?」
「はい、正確にはマナ、ですがね」
「ふーん、自分のマナ以外での魔法の発動法は?」
「道具にあらかじめマナを込めておいてそれを使えば自分のマナは使いません、それとマナを使い果たした状態で魔法を使うなら自分のオド………つまりは生命力を削ります」
「ふぅ~んマナに個人差は?」
「あります」
ふむ、アシュリーの話によれば魔力量が尋常でなくて異世界無双ができるな。
よし、魔法についてはどうなんだ?やっぱり詠唱とか?
「我が右腕に宿りし鬼よ!」的な中二病展開になるのか?
流石に俺でも人前であんなこっ恥ずかしいセリフを言う勇気と根性と愛はねぇ、あんパンじゃねぇが。
「ふむ、貴方にも羞恥心はあるのですね」
「当たり前だ!俺を何だと思ってるんだ!」
「アスタシア」
「………………は?」
「ミドリムシです」
「……………時間が勿体無い、次だ次」
「つれませんね」
「最高の誉め言葉だぜ」
さて、次だ、この500年の猶予の中でどうやってあのボロっボロのオンボロ貧家を導いて豪家に仕立てあげるか。
当初の予定どおりに今の当主には馬馬車のように働いてもらわねば。
何をするにもまずは資産がなければなにも出来ない。
現金と言う発想が異世界にあれば楽なんだが、はてさてあるのか?アシュリーさんや。
「あります」
ょし、なら現代の商法が使えるかもしれない、何故か俺は心理学を学んでいたらしいしその手の知識がある。
だがまずはやはり耕作から始めなければならないだろう、だけど作物の種があるかすら怪しいな………。
まぁ、それは後で考えよう。
次に有力者に身内をどうやって嫁がせるか、だが。
やはり第一次産業の耕作からつぎに第二次産業で加工製品を作ればいいと思う。
いつの時代も織田信長しかり有力者は珍しいものが好きであるこれは人間の習性だ、なら異世界でも同じことが言えよう。
貴族などの人種がいたらかなりラッキー何だが、アシュリーさんや。
「おります」
よっしゃ、ラッキー!
やっぱり貴族は珍しいものが好きである上に余計なしがらみとプライドがあるのが定番。
そうだな、例えばオセロとか将棋、あぁ、チェスもいいかもしれない、それらを製作して貴族に売り付ければいい。
あれらのボードゲームは地味に楽しいから庶民ですら欲しがるだろうし、そしたらなおさら貴族は買わなくてはならないだろう。
そしてそれらが世間一般に広まったらプレミアとか言って貴族専用のやつを作ったり。
うん、行けそうだ、メモメモ、アシュリーさんや紙とペンくれ。
「かしこまりました」
「ありがとう、うしっ、プレミア~っと?」
あれ?手がある、ペンを握っている、あれ?俺って人魂だったような?
「………肉体がないと色々と不便でしょうから、仮初めですが」
「おぉ、気が利くぅ♪」
と言うわけでアシュリーがサービスしてくれたらしい。
人の厚意はありがたく受け取っておこう。
さて、次だ、売り方に話の腰が向いていたけどあれだ本題はどうやって嫁がせるかだった。
近づく方法はあれでいい、後は俺がアドバイスをして貴族のぼっちゃん嬢ちゃんにアプローチさせればいい。
それに有能なら貴族も欲しがるだろうし、教育の方もしっかりさせねばなるまい。
よし、次は家の発展じゃなくて体の方を強くしていく方法を考えよう。
そうだな、当初の計画だと冒険者を身内に引き込めばいい、と考えていたんだが、違う。
有名な冒険者なら肉体はまあまあ普通でもセンスがあるやつがいるだろう。
違う、求めてるのはセンスもあるが肉体の強度だ。
センスがあって尚且つ肉体の強度も十分なやつを身内に引き込む。
だがここで1つの問題が、どうやってセンスや肉体の強度を見極める?
残念ながら見ただけでその人の潜在能力が図れるような便利な能力を俺は持ち合わせていない。
「アシュリー、そんな道具はないか?」
「あります、デデデッデデ~ン♪『鑑定メガネ』です」
「鑑定メガネ?」
「BGMは無視ですか、まぁよろしい。
鑑定メガネとは見た物のステータスを見ることができるのです」
「ほぅ!」
バッとアシュリーからメガネを奪い取り掛ける。
――
アシュリー(仮・嘘)
レベル???
OP???/???
戦闘力???(攻??? 防??? 立???)
魔力???
気力???
――
ふむ、すべてが???である。
「私は認識阻害の魔法を使っていますから、モザイクがかかっているでしょう?それです」
「なるほど」
ふむふむこれを利用していけば肉体の強度がわかるし、多分戦闘力って所で戦闘のセンスがわかる。
多分冒険者達の集まる場所とかもあるはずだからそこでステータス見まくって若いヤツに目星つけてウチの人達にアタックさせればいいだろう、よし、この問題は解決した。
「よし、アシュリー、あのボロ貧家の当主とコンタクトを取りたい」
「了解しました」
ファーストコンタクトは大事だ。
そうだな、お前の事を守護する守護精霊だ!とかゆー設定にしておくかな?
「では、つなぎます」
「あぁ、頼む」
◇◆◇◆◇
―ビニシオ視点―
俺はビニシオ、もうすぐ30になるのに子供も、嫁すらもいない単なるオッサンだ。
俺にも若い頃はやる気と言うものに満ち溢れていた。
麦の栽培をして金を稼いで商売を始めるんだ!
そう言って全財産を叩いて手に入れた種籾が不審火により燃え尽きたのは俺の頭の中ではつい昨日の事のようだ。
無様にも程がある、みっともない、いっそこの世から消えてなくなりたいが死ぬ勇気がない。
家はボロボロ、詳しく説明してやろう。
家は土壁が崩れており内装が見えている。
木材の部分は腐食し、白かったであろう壁は茶色く変色。
さらには植物の蔦のようなものが張り付いている。
ついで庭、荒れ放題である。
所々土が捲れており捲れた部分は水溜まりができている。
更には大量の雑草が辺り一面を覆い尽くしている上に大きな石がゴロゴロ、挙句の果てにはゴミが参列している。
そして辺りの耕作地、いや耕作地らしき痕跡。
長らく掘り返されていないだろう土は固くなり草が生え放題。
しかも畝は崩れており水路も土や岩や石で塞がっている。
水車小屋ももう廃墟と化しているし、水なんて流れていない。
これが我が家の現状だ
「チクショォ」
涙が出てくる、どうにかしてやり直したいが新たに買い直した種籾はこの土地に合わないのか芽すら出してくれない。
嫁さんもいない、家族もみんな俺に愛想をつかして移住してしまった。
こんなに頑張ったのに今まで良いことなんか一つとしてなかった。
思えば15年前、気になっていた幼なじみに彼氏ができたところから俺の人生は狂い始めた。
「何人のせいにしてんだよ」
「……………は?」
「上だぁ、目え開けぇ、男がうだうだウジウジ情けねぇなぁ」
「だ、誰なんだよ!」
いきなり話しかけられた。
白いローブを深くがぶって顔が見えないが男だ。
男が俺に話しかけてきている、しかもなんだ、頑張ってきた俺が情けないだと!?
「あ~あそうだ、情けない、昼間から酒を浴びてダラダラダラ、働けや!」
「働いたさ!働いて麦を育てようとしたんだよ!」
「あぁ~?ばっかじゃねーの?湿潤気候で麦が育つ分けねーだろ」
「は?」
「育てんなら沼があんだから米にしろ」
「こ、米ぇ?」
突然何を言い始めるかと思えば、米の育てかたなんて知らねぇよ。
それにいきなり何なんだ、勝手に人の家に入ってきてるし。
「こんなボロっボロのオンボロ屋敷に住んでると頭の中身までボロになるのか?」
「何なんだよアンタ…………」
男は笑った、いやフードを被っていて表情がわからないけど確かに笑った。
「喜べ守護精霊様だ、崇め奉れ!」