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Henntai程度を知る

『―――母親を殺す事だ』とクロスがその言葉を発してから既に5分は時間が過ぎている。

 その間クロスは目を閉じたままピクリとも動かない、同様に他の魔物や魔人もその動きを止めている。

 いや、手を顔に当てて何かを堪えるかのような仕草をする魔人が何人かいるな。


 何なんだ、この雰囲気は、どうも話に聞いていた全てを破壊するような残虐な一団とは思えない。


「―――生まれつき魔人や魔王になるような者は生まれる前に自身の持つ強大なマナによって母親の体を蝕み、生まれる瞬間に母親の命を奪う」


 ………………あぁ………、成る程、そういう事だったのか。

 魔王や魔人と言っても感情はある、だからこそ実の母親を知らないというのは悲しく、また母親の命と引き換えに生れた罪悪感も持ち合わせているのだろう。


「そんなルールを作ったのは誰だと思う?」

「…………?」

「実の母親を殺して手に入れた闇の力は自身を飲みこみ、その存在を消滅させる………っ!」


 それまで静かだったヤツの目の中には全てを破壊するような怒りが見て取れる。

 強固な意思を持つ思想犯の目は静かに燃えるもの、ヤツの目付きは正にそれその物。


「強大な力を持つ者が産まれてくる可能性を母親が死ぬように仕向け潰し…………!

 産まれてきた者が自身の精神力以上の力を使えば存在が消滅し………!

 世界の安定のために大多数を取り、少数の命が奪われる………っ!」

「………な、何を」


 今まで感じたことの無いような威圧感を感じる、そうか、これが殺気と言うものか、まともに当たるのは今日がはじめてだ、膝が笑っている。

 殺気を放ちながらクロスは溢れ出たかのように矢継ぎ早に言葉を並べていく、その無表情の外見からは想像できないがかなりの野心家らしい。


「………………誰がこんなルールを作ったと思う?」


 言うだけ言って頭が冷えたのか一度間をおいて感情の感じられない声で問いかけてくる。

 が、今のところは解答できるような手札と情報は持ち合わせていないので何とも言えない。


創造主(そうぞうしゅ)だよ」


  創造主。

 そのワードはこの世界に来てから始めて聞くものだ。

 これは創造神話、または宗教の教義で、その意志もしくは働きにより世界または宇宙、あるいは生命や人間を創造したとされるもの事、あるいはその創造を神格化した神の事。

 呼び方としては、創世神(そうせいしん)造化(ぞうか)(かみ)等がある。

 一神教では造物主ぞうぶつしゅともいうのだったか。


 唯一神教では唯一の「神」とは創造神を指す。

 無から有を生み出した者と捉えられることも多い。

 多神教には創造神を考えるもの、人格的創造神を考えないもの(世界は神の意志や働きによらず"自然に"できたとする)、世界が完成される過程で働いた(有から有を、あるいは無秩序から秩序を生み出した)創造神を考えるもの、生命あるいは人間を創造した神を考えるもの、また男女一対の神がその他の神や万物の「親」となったとするものなど、様々な考えがある。

 単一神教では創造神を他の神と異なる超越的な神とする場合が多い。

 詳しくは偉大なるWikipedia先生を参照していただきたい。


 まぁ、確かにこの世界は所謂ファンタジーが沢山散りばめられている。

 本当に創造主が存在していたとしてもおかしくはないだろう、いや、存在している方が逆に自然だ。

 それに魔王と呼ばれる様なものが存在を信じ、雰囲気では憎んでいるとすら感じられる、存在を確信させるにこれ以上の判断材料はないな。


「この世界を作った存在?」

「いいや、この世界をいじり回し、混沌に陥れた大罪人だ」


 ひじ掛けに肘をのせ、頬杖を付ながらクロスは嘲笑するように断言した。

 大罪人、とは何をもって大罪なのか、定義は分からないがクロスに取っては親の敵の様ものなのだろう。


「実際に会った訳じゃないからな、他人の恣意的解釈は基本的に聞かないことにしている」

「………まぁ、その考え方だけは賛成するが、造主に関しての俺の意見は世界共通意見だ、その内後悔する事になるぞ?」


 口元を歪ませながらもそのダークブラウンの目が笑っていない。


「…………話しは変わるが、何故ここに来たんだ?」

「あぁ、この辺りマナが濃くてな、ここを拠点にしに来た、それに人間たちも魔力が強そうなんでな、頂くつもりだ」

「それは許さないと言ったら?」

「力の無いものが何を言っても無駄だ、最低限俺と同じくらいの強さになってから言うんだな」


 循環法を使ってもまだクロスには勝つことができない。

 たが、使わねば勝てる確率は0に等しい。


「―――行くぞ」

子供(ガキ)が」


 ―――だが、負けるとも言っていない。


「椅子に座ったまま、か!」

「その程度ならな」


 ガィン、と金属と金属がぶつかり合ったような音が響く。

 実際にはクロスのバリアーと俺の拳がぶつかって弾けた音なのだが。


 クロスはそれを見て、目をつむり笑う。


「――――」


 それを確認し、手に隠し持っていたあるものをバリアーに叩き付ける。


 アシュリーに貰った魔石、それはあらゆるものを消し去る効果を持つ。

 本来ならビニシオかフィルに渡すつもりだったのだが、今日はビニシオがプロポーすると言っていたので日を改めることにしておいて良かった。


 クロスを守っていたシールドにヒビが入りくだけ散る。

 瞬間凄まじいまでのどす黒いマナの本流が辺りに渦巻く、下級の魔物はそのマナに耐えきれず、バタバタと倒れていく。


 やはり、あのバリアーは身を守るのではなく、クロスのマナを感知させないものなのだろう。

 魔王のマナが一切感じられない等と言うのはふざけた話だ、恐らく何かにクロスの気配を感知させないもの。

 だとすればバリアーを砕いた今、クロスが感知されたくない何かが現れる筈。


 そう、如何なる理由だとしてもだ、ビニシオとフィルを危害をくわえさせる訳には、殺させる訳には行かない。

 何としてでも、どんな手を使ってでも魔王軍を足止めさせねばならない。

 俺の第二の人生がかかっているのだから。


「貴様………!」


 砕け散ったバリアーが空に散ると同時にクロスが立ちあがりこちらに手を伸ばす。


 その時だった、空から赤、青、茶、黄、緑の球体が爆風と共に俺とクロスの間に落ちて来た。



 ◇◆◇◆◇



 爆風で土埃が舞う中で、球体が人形の何かに変わっていくのが見えた。

 轟く爆音の中で静がだがハッキリと声が聞こえた。


「おーおー、懐かしいヤツがいるなぁー?」


 声の主は赤いローブを着込み、これまた赤い髪と目はまるで煮えたぎる溶岩を見ているよう。

 顎に生えている無精髭も赤く、その髪と髭はまるで炎の様に逆立っている。


「はぁ。

 クロスの気配がしたから来たんじゃないの、解りきった事は言わなくていいから」


 青いローブを着込み、これまた青い髪と目は深海のような静けさが見て取れる。

 その長いストレートな髪は流れる清流のようだ。



「シズク、フレアは挑発してるんだよ、クロスとは昔から仲が悪いからね」

「ガイア!テメーは黙っとけ!」


 と、茶色のローブを着込み、茶色をした髪を七三分けにした身長の高い男が言う。

 その目は穏やかな茶色で、大地を思わせる。

 眼鏡をかけていて文系の男、といった所だろう。


「ヤツは裏切り者だ、裏切り者は消すだけだ、なぁウィンダム」


 黄色いローブを着込み、尖った髪と目も黄色い。

 その尖った印象から、雷が連想できる。


「はい、ボルト兄様」


 緑のローブを着込み、くるくるとカールが巻かれている緑の髪と目。

 その髪の形は風が連想できる。


「………………ハクとクロがいないじゃないか」

「っ!テメェがそれを言うのか!?」

「はぁ。

 落ち着きなよフレア、もう700年以上も前の話し」


 クロスが苦々しい表情をしながらフレアと呼ばれていた赤ローブを挑発したらしい。

 口ぶりからするとこの戦隊ものの五人組とクロスは昔から関わりがあったのだろう。


 ――――ん?

 いや、待て待て、確かクロスの年齢は274歳だった筈、700年も昔の話しとは一体どう言うことだ?


「よくやった人間、後は我々に任せておけ」


 状況を飲み込もうと色々と思考していたら黄色いローブのボルトと呼ばれていた人物が此方を見ずに話しかけてきた。


「人間にしては頑張った」


 シズク、と呼ばれていた青いローブの女が短く言葉を切った。


 人間、俺に対する呼び方が『人間』である、もしかするとこの五人は…………。

 確か先程クロスが『ハクとクロがいない』と言っていた。

 つまり後二人、詰まり『七人』いると言うこと、そこから導き出せる答えは……………。


「…………天使?」

「そうですね、人間にはそう呼ばれています。

 正しくは人形精霊なのですがね」

「…………っ!?」


 一瞬にして見ていた景色が変わった。

 20メートル程の距離にいたクロスと天使たちが今では数100メートルほど離れた場所にいた。

 いや、これは俺が…………。


「危ないのでね、転移させて頂きました」


 茶色いローブを着た、確かガイアと呼ばれてい大男が真後ろにいた。

 転移と言えば確か高度な土魔法だった筈。


「では、その内此処も危険になる筈ですから、お逃げください」

「………あ、ぁ―――」


 振り返り、返事を返そうとした、が、既にそこにはガイアの姿はなくなっていた。


「――――っ!!!」


 次の瞬間真後ろから爆音、爆風、そして赤い光が迸る。

 ここが崖の上でなかったら直接爆風を食らい、吹き飛ばされていただろう。

 崖の上でいるおかげで多少は衝撃は和らいでいるとは言え、今の疲弊しきった俺には十分なダメージだ。


「ふん。

 クロスと戦ったんだから、疲弊してるってガイアが言っていた。

 仕方ないから治療しに来た」

「あ、ありがとう」

「ふん。」


 此方(こちら)を一切見ずに俺の頭の上に手を伸ばすシズク。

 すると青い魔法陣の様な模様が浮かび上がり、その魔法陣から光が降りてくる。


「ふん。」


 ちらりと此方を一瞥し、崖から飛び降りていった。


「これは、いわゆる回復魔法か?」


 ステータスを見るが回復はしていない。

 体を見てみると淡い光を放っている、この状態になると回復薬は効かなくなる、恐らく回復魔法もそうなのだろう。


「だが、見ておかねば…………!」


 俺の生後の目標である異世界無双。

 魔王が今まで会わないようにバリアーで己の気配を消していた程の相手が5人揃っている。

 異世界無双するならばこの戦いは参考になる筈、脳裏に焼き付けて離さないようにしなければならない。

 後数分だけだができるだけ多くの情報をかき集めなければならない。


 フレアが巨大な炎の塊をクロスにぶつけるとクロスは巨大な闇の塊をぶつけ相殺する。

 ボルトが雷の槍を投げつけ、ウィンダムが風の手裏剣を投げつければクロスは左手で雷をつかみ、風の手裏剣にぶつけて起動を反らす。


 風の手裏剣が雷の槍によって起動を変えた先はビニシオの畑、もう少しで作物が収穫できたと言うのに畑は閃光と共に爆ぜ、クレーターができてしまった。


 クロスが闇の魔法で攻撃を繰り出せばガイアが土地を隆起させ、その闇の進行を妨げる。

 クロスが闇の大鎌でガイアが隆起させた大地を真っ二つに切り裂けば、大地の影からボルトとウィンダムの圧倒的な物量の魔法が放たれクロスは遥か彼方に吹き飛ばされる。


 フレアが止めと言わんばかりに巨大な炎の剣をクロスに向かって降り下ろせばクロスはその炎の剣をつかみ、闇の魔法により侵食していく。

 闇の侵食が手元まで来たのでフレアは剣からデータ離すがクロスは炎の剣を体に取り込んでいく。


 瞬間、クロスの体からフレアが纏うような赤々とした炎が揺らめき立つ。

 あれは――――侵食した魔法を自分の体に取り込んで纏ったのか?


 炎の剣を吸収したクロスは巨大な炎の塊を天使達にぶつけようとしたが、シズクの凄まじいまでの圧倒的物量の水槍がそれを阻み、同時にクロスを貫く。


 空に浮かんでいたクロスだが、自由落下するように地面に落ちていく。

 そこに追い討ちをかけるように天使達が次々に魔法を放っていく、地面には巨大な穴が空いている。

 あれだけ強いマナを放っていたクロスの気配は今既にほとんど感じられない、


 そして、天使達が自分達の魔法を合わせていく、最初は小さくてよく見えなかったが徐々に大きくなっていく。

 虹色に輝く物体が天使達の中心で輝きを放っている。


 それがクロスがいるであろう巨大な穴めがけて落ちていく。

 瞬間、巨大な虹色に輝く光の柱が大穴から溢れ出る。

 俺はその光に飲み込まれた。



 ―――――――飲み込まれた瞬間、クロスの気配と共に俺の体は四散した。


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