探索開始・4
【七、音楽室】
『ピンポンパンポーン』
「おっ、きたか」
『第二チェックポイントに到達しました。お疲れ様です。お茶とお菓子をご用意しましたので、お召し上がりください。音楽も一緒にお楽しみください。謎はあと三つ、どうか最後までお付きあいくださいませ。ピンポンパンポーン』
「あと三つ、か。よーし、さらっとクリアしてやるからな! な!」
……返事も、ツッコミもこない。まさか……姉妹は、お茶を注いでお菓子をガサガサやっていた。この迅速な行動は見習いたいものだ。
「成ー、音楽よろしくー」
「え?」
口にお菓子を放り込んだ亜依が指さした先には、蓋があいたピアノ。楽譜もセットしてある。音楽も一緒にお楽しみくださいって、俺の生演奏ということですかそうですか。
「しばらく弾いてないから、指動くか分かんないけど」
「いいよー。成のピアノ、久しぶりー。曲、なに?」
「えっと……! 俺の曲」
「え?」
合唱の伴奏譜。俺は軽やかに、力強く弾きだした。
「あーっ!!」
すぐに、姉妹の驚く声が聞こえる。学習発表会で歌った曲。緊張しながら伴奏した曲。あわててお菓子を飲みこんだらしく、二人は一番の頭から揃って歌い始めた。
声質がよく似ている二人は、オリジナルの双子歌手のように、綺麗なハーモニーを響かせてくれる。
二番のAメロ、Bメロと続き、サビ。小学生時代の俺のあだ名の由来。
あいと、ゆうきだけが、ともだち。
太っていて顔が丸くてほっぺが赤くて、内気で運動神経がニブくて友達もいない。そんな俺のそばにいつも、幼なじみの二人がいてくれた。
曲が終わる。拍手が始まった。俺は立ち上がり振り向き、うやうやしく礼をする。
「ブラヴォー!」
二人はスタンディングオベーションしている。頭を下げたまま、俺はじんわりと目が熱くなるのを感じていた。今は少しだけ、ゲームマスターに感謝してもいいと思った。
ピアノの蓋を閉めたら、壁掛け用の鏡とメモがあった。俺たちはラストスパートに向け、温かいお茶といろいろなお菓子でエネルギーを補給。残ったお菓子もアイテム袋に頂戴し、いざ「五年生の教室へ」。