探索開始・3
【五、三年生の教室】
黒板に、なぞなぞが書いてある。
「頭は平ら、足一本。刺さって回るおばけはなーんだ?」
「画鋲!!」
亜依が早い。昔から、なぞなぞは亜依がいちばん得意だった。俺の頭の中には一本足の傘の妖怪しか出てこなかった。これは黙っておこう。
「急に子供らしい雰囲気になったなー」
「よく回して遊んだよねー。今もやるのかな……あった!」
祐紀が、教卓の引き出しからメモつきの画鋲ケースを発見した。次は予想通り「四年生の教室へ」。
亜依は、そこら辺の掲示物から画鋲を一本、外そうとしていた。アイテム袋から出てきて痛いと思うので、それは勘弁してもらった。
【六、四年生の教室】
黒板にも、教卓にもメッセージはない。たぶん後半に入り、難易度が上がってくるのだろう。
机の中を手分けしてのぞいていると腰にきたので、背伸びして後ろにぐぐっと反る。視界の端に赤が見えた。天井に風船がくっついている。動かないところを見ると、貼りつけてあるようだ。
「机にのぼれば届くかな? 危ないかな」
「なんかぶつければ……成、さっきのボールは? そっくりなやつ」
「一言多いよ!」
投げるのは、祐紀が得意だ。見事に一発で風船は落ちてきた。それを亜依が華麗にキャッチする。
「? 何か入ってる。割るか!」
なるほど、ここで画鋲か。
「何入ってるか分かんないし、ぶつかると痛いから慎重にし」
「え?」
パンッッッ!!!
「……ろって言おうとしたのに……」
「大丈夫! 大丈夫!」
亜依は、昔からこうだ。天然でマイペースで、でも危険なことには率先して向かっていく。祐紀や俺を守ろうとして。
「風船にセロハンテープ貼って画鋲刺すと割れない、っての、画鋲一ケース全部刺すチャレンジしてて怒られたなー」
「……何やってたんだよ……」
「あれ? 電池入ってたけど……お姉ちゃん、さっきの懐中電灯、つくの?」
「え? どれどれ、あ、つかない。どうりで軽いと思ったー!」
俺と祐紀は顔を見合わせた。口もあいてた。
「だって明るいし、使ってないから気づかなかったー。よし、これでつくぞ!」
カラ元気だとしても、楽しそうな亜依を見ているとやっぱりなごむ。俺たちは少し明るい気分で、次へと向かう。「音楽室へ」。