探索終了
【十、図書室】
ゲームマスターの言葉を信用するなら、ここが最後の謎のはずだ。手元にカギが二本あるから、もう脱出できるかもしれない。でも、それもなんだか負けた気がして癪にさわる。
謎を全部解いて脱出して、ゲームマスターに問いただしてやる。どうやって、ここまで俺たちのことを調べたのか。なんでおばけやしきに俺たちを招待したのか。そもそも、何がしたいのか。
――ガチッ。
「あれ、カギかかってる」
「え? 成、前の戸が開くか見てきて」
「はいはい……こっちも閉まってる」
「アイテムのカギで開く?」
「……開かない、二本とも違う」
図書室は、俺がいる貸出しカウンター側のカギを外から開け、姉妹がいる後ろ側の戸のカギは中から開けるしくみだ。つまり、入れないのだ。
「えっと……カギ取りに行けってこと? 職員室に」
「仕方ない、さっさと行ってこよう!」
亜依が先頭に立って歩きだす。さっきも思ったが、なんだか亜依がすごく頼もしく見える。たった一年とはいえ、やっぱり大人なんだな。社会人だし、いろいろ苦労しているんだろう。
それにひきかえ、一人でカギを取ってこいと言われたらどうしよう……と内心ビビっていた俺。情けない……。
ようやく図書室に入る。貸出しカウンターに一冊の本。
「元の棚に戻せってことだとは思うけど、一応ね」
ここは、図書委員だった祐紀の出番だ。パラパラとめくり、破れや書き込み、メモなどがないか確かめる。
「何もないね。シリーズの三巻か、場所変わってないかな?」
祐紀はスタスタとまっすぐ、目的の棚に向かう。俺と亜依は黙ってついていく。二巻と四巻の間に指を入れた祐紀が、メモを渡してよこした。『きみたちの本』。
「俺たちの本……」
「あたしたちの、って言えば……」
顔が丸くてほっぺが赤かった俺。
あいと、ゆうきだけが、ともだち。
「あれしかない!」
三人一致で、絵本コーナーに突進する。今でも人気なのだろう、だいぶボロボロになったそのシリーズの隣には、いくらか新しいアニメ版の本も並んでいた。本の上のすき間をのぞきこんだ祐紀が素早く手を突っ込む。四つ折りになったコピー用紙と、カギが出てきた。
コピー用紙には、三ヶ所に「非常口」と書いてある。左端と真ん中上、右上だ。他は真っ白。
「なんじゃこれ? これだけじゃ、どこがどこだか分かんないぞ?」
「どれどれ……ほんとだ、地図がないと意味ないよね」
「あるでしょ、地図……」
俺と亜依のやり取りを聞いていた祐紀が、校舎の見取り図を取り出して二枚の紙をぴったり重ねる。カウンターまで行ってセロハンテープで固定し、俺に渡した。
「透かして見て」
「なるほどー!!」
「二人とも、頭固いよー」
少しあきれた顔で、祐紀が笑った。
指定された非常口は三ヶ所。
カギは三本。
さあ、いよいよ脱出だ!