表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

招待状

「なあ、どうすんの? 行く?」

「うーん……気乗りはしないなあ……」

「でも、これ」

 俺たち三人の手にはそれぞれ、白い封筒が握られている。招待状だ。

「三人セットなんだよね、迷惑なことに」

「迷惑って」

「あ、ごめん。でも迷惑じゃん?」

 俺と亜依あいが話している間、祐紀ゆうきは招待状の文面をじっと見つめている。心なしか、顔色が悪い気がする。


 俺と亜依、祐紀は幼なじみ。俺と祐紀は同級生、亜依は一年上だ。あまり規模の大きくない小学校だったので、年齢差はほとんど意識しないで育った。まわりも皆、そうだ。

 今日は大学の冬休みで帰省した俺に合わせて、相談がてら居酒屋に来ている。


じょう、こういうの大丈夫なんだっけ?」

 亜依が聞いてきたところで、飲み物が届いた。俺はグレープフルーツ酎ハイ、車を出してくれた祐紀がトマトジュース、亜依の前にはドン、と生ビール中ジョッキ。

「グレープフルーツ絞らせてー! それ好きー!」

 あっという間に、亜依が俺の手からグレープフルーツと絞り皿を奪う。慣れた手つきで酎ハイを完成させ、俺に渡す。と同時に、ジョッキを振り上げて叫んだ。

「かんぱーーい!!」

「合わせようとくらいしろよ!」

 とっくに中身を三分の一ほど流し込み、鼻の下の泡を手でぬぐう亜依のいつものマイペースぶりに、なぜかなごむ。酎ハイを味わいつつ、料理を選ぶ亜依を見ていた俺は、やはり違和感を感じていた。いつものにぎやかさが、半分足りない。


「祐紀、ほんとに飲まなくていいの? 代行代くらい出すよ?」

 亜依が珍しく、姉らしいことを言っている。俺も言おうとしてたのに先を越された。

「そうだよ、二十歳はたちになったから飲む! って張り切ってたのに」

「うん、今日はいいや」

「調子悪い?」

「大丈夫、お酒って気分じゃないだけだから。ほら、食べよ?」

 最初に頼んでおいた分の料理が届いた。祐紀がサラダを取り分け始める。亜依は勝手にビールと料理を注文している。俺は手元の招待状を、あらためて見た。



【おばけやしきへのご招待】


【○○小学校児童会・おばけやしき実行委員会】



 三月に統合で閉校になる母校からの、季節外れの招待状。懐かしさと、関わりたくない内容。行きたいけど、行きたくない。

「成ー? なくなるよー!」

 祐紀の声で顔をあげると、亜依が俺の一口ひとくちステーキを持っていくところだった。

「あ、肉! 俺の肉!」

「ちゃんと代わりにシシャモ置いたよー」

「肉が食いたかったの! あーっ半分ないじゃん! いつの間に!?」

「祐紀も食べてたー」

「代わりに卵焼き置いたよー」

「だーかーらー……もう……」

 いつもの風景だ。振り回されながらも、少し気が軽くなった。招待状は、とりあえずバッグにしまった。















 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ