○○○○● -Ⅰ-
ガラスに仕切られた空間からは、何も見ることができない。
それは、向こうからも同じ……。
わたしは天に一番近いところで、救世主が来るのを待っているの。
ゴールと呼ばれる場所で、財宝が一番近くにある場所で。
わたしは女神。AGグライダーの成功者を見るため、遠い星の国からやってきた。
わたしの故郷には、この地球にはないものであふれている。
飴色の空気、虹色の大地、そして輝煌な天空。
わたしはその神秘なフォースを吸って、毎日を過ごしていたの。
汚ならしいこの場所とは遥かに違う、あの美しい自然を、絶佳な景色を……
あの場所が、また恋しくなってくる。でも…… それでもわたしはここにいなければならない。
こんな汚らしい場所に自分からやってきたのには訳がある。
(そして、長い沈黙)
ここに来た理由を話す前に、一つ唄でも歌いましょう。
ガラスに仕切られた空間には、わたしと財宝だけでなく、数多の花が咲いている。
花はこの世界で唯一、わたしの故郷を感じることが出来る存在なの。
花はそれぞれに心を持ち、豊かな発想を持っている。無能と言われたわたしが近づいても、花は嫌な顔一つしない。
きっと外見だけでなく、心の中も綺麗なんだわ。
わたしも、「あなた達」に近づきたい……。
だから、一つ唄でも歌いましょう。
韻や歴史に残りそうな大層な言葉もないけれど、覚えやすいメロディでもないけれど。
一つ唄でも歌いましょう。
【ひめやかに流るる
花の美しさは
誰しも通り過ぎてゆくもの
わたしはわたしでしかなくて
あなたはあなたでしかなくて
ゆるやかに過ぎゆく
時間の儚さは
誰しも噛みしめてゆくもの
わたしはあなたになりたくて
あなたもわたしになりたくて
じきに、その時が来る】