第9話「会見準備(思惑)」
王宮に造られた特別室・・・・本来はVIPなどの特別な人物が来た場合に泊める部屋だった。その部屋は全部で10程ある。その数ある部屋の一番奥の一室に、リーンとアレクシーナとリッターがいた。普段はリーン一人がこの部屋に住んでいる。
「してやられたな・・・・・・・」
アレクシーナがアールグレイという銘の紅茶を口元から離し、静かに言った。
「あの言動は悪意に満ちています・・・・・あんな物は無視して下さい。」
リッターは少し興奮しているようだ。
「そうもいくまい。事実を元にした悪意による曲解・・・・・これ程手に負えぬ物はない・・・・・・」
アレクシーナは一瞬自嘲気味に笑みを浮かべ、その後、顔を引き締めて言葉を続けた。
「もうじき、記者会見の時間だ。それまでに一応、二人の忌憚のない意見を聞いておこうと思ってな。」
アレクシーナは厳しい非難を受けたとは思えぬ程冷静だった。
「私は、あくまで無視すべきだと思います。リーンの事やリューヤの事は国家機密という事で話を通すべきです。世界征服などという馬鹿げた話があり得ない事は、アレクシーナ様の出された「世界平和統一連合」のその法規・・・・まだ承認はされてませんが・・・・・それを見れば明らかです。」
「なる程、事実と行動を持って証明する・・・・・・それも一案だな・・・・・・。リーン、お前の意見は・・・・・・・」
その言葉を聞いて、リーンが目を瞑り喋り始めた。
「アレクシーナ様が何を望まれるかで選択肢は幾つかあると思います。現在の望みを最大限叶える事がお望みならば、発起人兼、暫定議長権を御放しに成らない方がよいとは思われます・・・・・・ですが、これは現状では非常に難しいと思われます・・・・・・」
「そうだな、連中が言ってる事に一部事実がある。そして、我々にも秘密がある・・・・・・そのまま居座れば戦争の引き金になりかねない・・・・・・」
「現在のアレクシーナ様の最大の望みは何でしょうか?・・・・・それを考えて行動されればよいと思います・・・・・その為には出来るだけ隠し事は避けるべきです・・・・・」
「戦争を避ける・・・・・それが目先の第一の目的だ。それと、世界平和統一連合を立ち上げた目的・・・・・・それを最大限叶えるように動くべきだろうな・・・・・・・」
「その二つを同時に行うことが可能ですか?」
「やってみなければ分らない・・・・・だが、最善と思われる「やり方」はあるな・・・・・・・そっちの方はなんとかなろう・・・・・問題は・・・・リーン、お前とリューヤの処遇が焦点になる可能性がある事だ・・・・・・私は・・・・お前達を守ってやりたい・・・・・」
「リューヤは、強い人です・・・・・また、私も世界と天秤にかけられるような存在ではありません・・・・・・」
「強いな・・・・・・・・」
アレクシーナはフッと笑った。そして何事かを決心したような表情になった。
「そういうお前達だからこそ、私は出来るだけ守ってやりたいのだ・・・・・」
「アレクシーナ様・・・・・・・」
リッターが心配そうな目でアレクシーナを見詰める。
「心配するな・・・・・・私は私のやれる事を最大限やるだけだ・・・・・・その結果がどうであろうと・・・・・私はそれを恨まない・・・・・・・リッター・・・・お前にはやってもらいたい事がある・・・・・退院まじかの西城と連絡を取り、リューヤを探してくれ。」
「ハッ!」
「その為にお前の権限をもう一段階上げておく・・・・・・・頼むぞ!」
「ハッ!」
「それでは、私は会見に向かう・・・・・・二人ともこの先も私に力を貸してくれ・・・・・頼む・・・・・・」
「ハッ!もちろんであります。」
「はい。」
アレクシーナが外に出た。リッターが静かに優しげな目をリーンに向ける。
「リーン、あなたも大変だけど頑張ってね。何か不自由があれば外の衛兵に言って・・・・・・・・。」
「はい。ありがとうございます。」
「それでは、行くわね。」
「はい。」
リッターはリーンの返事に少し頷いて外へ出た。
一人になったリーンが静かに祈る。
「神様、リューヤとアレクシーナ様をお守りください・・・・・・・」




