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第7話「ケモノ」

簡単な事ではなかったはずだ・・・・・・


 そういう思いが白面の青年、ジョー・アルシュにあった。


クライ王国に辿り着いた、リューヤを重犯罪の参考人として捕まえ、話をする。そして、サヨコ・ミナヅキと共に逃がす。それを、当然の事としてやっているアレクシーナ・クライという女王が怖くなった。


 この事から分る事はリューヤとアレクシーナが非常に親密な関係にあるという事だ。そうでなければ、リューヤとサヨコは、捕まらず逃げ切ったはずなのだ。銃弾を楽々とかわせる人間が意味もなく捕まるはずはない。それは、リューヤとアレクシーナのお互いに会う必要があった事を示している。

 表立ってはまだ、リューヤ・アルデベータの事は公表されていない。だが、リューヤ・アルデベータが「神」とか「悪魔」とかそういう存在・・・・・少なくともその使いである事は世界の裏舞台では周知の事実だ。現段階においてアレクシーナがリューヤと接触する事はアレクシーナにとって不利な事のはずだった。

 β能力者・・・・・・かつて「悪魔憑き」「天使憑き」と呼ばれた存在の全てがアレクシーナの世界征服に手を貸すように述べている。いや、彼らは世界征服とは言わない、世界の統合という・・・・・・だが、自分には同じ事のように思えた。

 もし、アレクシーナの戦略が成功すれば、アレクシーナは実質的に世界のトップに立つ。アレクシーナの言ってる事は正しい。だが、自分はそれ程人間という物を信じられない。アレクシーナの中に覇欲がないと誰が言い切れるのだろう。その証明が欲しかった。しかし、実質的にその証明は不可能に近い。頭の中でも覗かねば不可能だろう。

 私が疑う人間という事は・・・・・・私が「ナンバーオブビースト」666の称号を持つ「ケモノ」だからであるからだろうか?他人の善意など裏があるそう考えて今の地位を築き上げた。「正義」や「悪」など、所詮、人が創り出した都合に過ぎぬ。そう思ってきた。だが、アレクシーナにそんな悪意は感じられない。だが、やっている事は世界征服に見える。うまい手を考えたものだ・・・・・・この同盟に反意を翻せば、では、お前の国は他国の主権を軍事力によって侵すのか?という事になる。そうなれば、世界の平和主義者どもの敵という事になる。

 アレクシーナを見ていると自分のやってきた事、見てきた事がまるで間違いだったのではないかと思える。それぞれの国にそれぞれの都合がある、その中で権力を持つ者程、醜悪な面が臭い立つ。そいつらを屈服させ、世界のバランスオブパワーをとり、世界を平和にする。それが、私の目的だったはずだ・・・・・・・・だが、私は「ナンバーオブビースト」なのだ。世界の平和と反する存在なのだ・・・・・・・・アレクシーナを見ているとそんな気分になる・・・・・・・

 あの紫炎と呼ばれる少女・・・・・本名は矢口 涼子と言ったか・・・・・・あの女もしょっていた。少し脅えた素振りを見せれば、想像以上の情報を喋る・・・・・何故、あんな幼い少女がそんな事を考えている。それが、教祖と呼ばれる存在なのだろうか?ああいう連中から見れば、俺の考えている事など、猿にも等しいのだろうか?そんな事はないはずだ、同じ人間、そう違うはずはない。ただ、その事に関して知識があるかないかそれだけの違いしかないはずだ。単純な頭の良さでは俺が勝っているはずだ。俺は、トップエリートの集まる大学でも主席であったし、自らの知能で今の地位を勝ち取った。俺は頭が良いエリートのはずだ・・・・・・・

 「ナンバーオブビースト」その称号だけが、私を縛る。まあ、神や悪魔がいようが俺には関係のない話だ。矢口の前とリューヤの前で脅えた素振りを見せた。それが重要な事なのだ。まさか、あんな少女がそこまで見通しているはずもあるまい。俺の用意した質問に素直過ぎるほど素直に応えた。気付いてはいないはずだ。最初から、俺はあんなインチキ教祖のインチキな戯言など信じていない。それすら、あの少女は見抜けなかったのだ。その事がこの世にそんな能力など存在しない事を示している。


 馬鹿は利用するに限る・・・・・・・・


 死者が蘇る?そんな事はないはずだ。アレクシーナが自分の世界征服の為にF国と共謀して作り上げた馬鹿げたリューヤ伝説のはずなのだ。その証拠にアレクシーナが発起したあの世界征服計画にF国は最初から参入している。


 そこまで考えてジョー・アルシュは頭を抱えた。


 本当に私はそんな事を考えているのか?


 紫炎の前で見せた姿は本当に演技だったのか?

 私はなんなのだ?本当に神はいないのか?私がそんな風に考えるのは私が「ケモノ」だからなのか?あの少女はなんと言った?


 本能と知性がどうのこうの・・・・・・・・


 本能より知性が大事・・・・・・・?


 たかが、人間に本能と知性の区別などつくはずもない、あの程度の年の少女なれば、尚更な事だ。人の娯楽を見るがいい、暴力と性とギャンブル・・・・・・それが人間の本性なのだ・・・・・本能と知性など分けて考えるなど所詮人間にはありえないのだ。そんな事が分らないのならば所詮、あの少女も社会を知らぬ愚か者の一人だ。性という本能を除けば愛など語れない。他の愛だって本能・・・・・人が生き延びる為だけのものだ・・・・・・俺はそんな下らぬ物など信じない。あるのは、俺のこの知性だけだ・・・・・・俺が「ケモノ」だというなら、そんな事すら分らない愚かな者達こそ「ケモノ」であろう・・・・・・・


 だが、私の持つ権力欲とはなんだ?これこそ、ケダモノの本能なのか?私は・・・・・・私は・・・・・・・・・

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