第6話「アレクシーナ・クライ」
「リーンが生き返った??」
リューヤは、思わず鸚鵡返しした。
「そういう事だ・・・・・やはり知らなかったか・・・・・」
「どういう事なんです?」
アレクシーナは溜息をつき、リューヤから目線を逸らせた。
「ザルマ・アレクサンドライトをお前が倒した後、お前は、もはやこの世にいないはずのリーンを、この世界に呼び戻した。しかも、死体のあるその場所ではなく、まるで別の場所にな・・・・・・」
「俺が???」
「リーンの言動、報告によるお前の言動からしても、彼女をこの世に蘇らせたのはお前という事になる・・・・・・・・」
「そんな・・・・・馬鹿な・・・・・・・」
「それが、「干渉者」の手によるものなのか、「眺める者」の手によるものなのか、未だにハッキリしない・・・・・・ただ、「干渉者」は「眺める者」の手酷いルール違反だと言っていたな・・・・・・・・・「眺める者」の代理人紫炎から何か聞いてはいなかったのか?」
「聞いていません・・・・・・・連中は死者すら蘇らせるというのですか?」
「お前の意思で戻ったのだぞ・・・・それに対して何も言っていないとなると、「眺める者」も、今一歩信用出来ないと考えておくべきか・・・・・」
「リーンに、リーンに会えますか?」
「会わせる事なら可能だ・・・・・・・・・だが、リーンはお前に会う事を拒絶している。」
リューヤの表情が曇る。
「お前と今会うべきではないと言うのだ、そしてお前に対する私の役目は終わったと言う・・・・・・・・」
「馬鹿な!俺は・・・・・・俺はリーンにいっぱい謝らなきゃいけない、俺は俺の出来る事全てをやり尽くせなかった、その事を、俺は・・・・・」
「それは、お前の背負い込み過ぎだ。あの過程の中でリーンが死ぬ事は誰にも避けれなかった。避けれるははずもない・・・・・・・・お前も、私も誰もが精一杯やったのだ・・・・・・・リーンはその事には感謝している。」
「俺に会わないなら何故・・・・・何故リーンは俺の「意思」で蘇ったというのですか?」
「リーンについては我々にも分らない事が多すぎるのだ。私としてはお前とリーンを引き合わせてやりたい。心情的にも戦略的にもな・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「だが・・・・・お前とリーンを会わせる事に不安があるのだ・・・・・予感・・・・だな・・・・全てが我々の望まぬ方向に動き出す・・・・・私はいつもこの予感に従って生き延びてきた・・・・・・それがひっかかるのだ・・・・」
「・・・・・・・リーンは無事なのですね・・・・・・・」
「それは保障しよう・・・・・私の目の黒い内は決して「干渉者」にも手出しはさせない・・・・・・」
「ならば、今、会うべきではないのでしょう・・・・・・俺も、少しいろいろな事を知りすぎました・・・・今更、リーンと平穏な生活を送る事を望める程、俺は都合よくできていません・・・・・・・」
アレクシーナがフッと笑い振り返る。
「誰かが言っていたな・・・・・・・背負う事で幸せを掴む資格がないと言うのは、誰も幸せになってはならないという理屈だとな・・・・・誰もが、何かを背負うのだ、そしてその上で幸せを目指すべきなのだ・・・・・そうでなければ、人類はあまりに悲しかろう・・・・・」
「そうかもしれません、ですが、今の俺にはやらねばならない事があります。」
「・・・・・・・そうか・・・・・・・、お前が本当に望まれた者であるなら、きっといつかリーンに会う事もあるだろう・・・・・・・」
アレクシーナは一瞬、遠い目をした。
「俺は・・・・・・・」
「言うな、BESTを尽くす、他に我々に出来る事はないのだ。お前が何者で、私が何者で、「干渉者」が何者で、「眺める者」が何者であるかなど、しょせん、お遊びの戯言に過ぎぬ。自分が何者であろうと、己の出来る事をやるしかないのだ・・・・・・・」
リューヤが少しだけ微笑んだ。
「曲者!!!」
衛兵の声が聞こえ、打撃音が響く。
「リューヤ!話は終わったか?」
小夜子の声だった。
「ああ」
リューヤが答える。
「では、行きますね。」
リューヤがアレクシーナに静かに言った。アレクシーナが微笑む。
扉が破られ、リューヤが外に出た。一人取り残されたアレクシーナは「リューヤ、元気でな・・・・・」と呟いた。




