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第5話「アレクシーナの思惑」

「重犯罪者扱いとは、考えてますね」

 リューヤは手錠を嵌められた手のまま、アレクシーナに言った。

「先のリーンが起こした事件・・・・あれの重要参考人がお前なのだ。間違えてはいまい?」

 アレクシーナは鋭い目つきのまま、静かに言った。

「それに、そんな手錠ごときで、今のお前は縛れまい・・・・・・」

「御存知でしたか・・・・」

 リューヤにかけられた手錠が抜け落ちるようにスッと外れる。

「何が聞きたいのだ?」

「そちらも聞きたい事があるのでしょう・・・・・」

「そうか・・・・・ならば聞く、お前達は何を誓約してそれ程の力を手に入れた?」

「この世界を再び我々この地に生きる者の手に戻す事・・・・・そして、俺の存在全てを賭けました。俺は、役目を終えたらこの世界から消えます。」

「なるほど・・・・・お前らしい・・・・・だが・・・・・・」

「今度はこちらの番です・・・・・・アレクシーナ様は何故「悪魔」と契約なさったのですか?」

「契約ではない・・・・助力を頼んだだけだ。」

「助力?」

「そうだ、助力だ・・・・・・このままでは、どう計算しても地球は・・・・いや、人類は滅ぶそうだ・・・・・・」

「!!!!」

 開け放たれた窓から風が吹き込みカーテンがたなびいた。

「「悪魔」・・・・・「干渉者」も同じような問題を抱えている。まあ、主旨は違うのだが・・・・・連中はその問題の答えを見る為に我々を利用したい。我々は世界が滅ばぬ為に力を借りる・・・・・・お互いの利益の為だ。」

「連中が本当に我々に助力すると思っているのですか?」

「途中まではそうだろうな・・・・・・だが・・・・途中からは私が邪魔なはずだ・・・・・・だからと言って手をこまねいている訳にもいかんだろうさ。」

「馬鹿な!連中を利用するつもりですか?そんなの・・・・・無理だ・・・・・連中は人の思考を読む。短期戦ならともかく、知略戦で勝てるはずがない・・・・・・・」

「そうでもないさ・・・・・思考を読むなら読ませてやればいい。連中に防ぎようのない手を行っていけばいいだけだ。」

「連中がそんな事を許すとお思いか?」

「だから、言ったろう途中までは・・・・・・と・・・・・・連中にしても求心力のある神輿が必要なのだ。だが、利用し終われば連中は私を殺そうとするだろうな。私の狙いは戦争による人口の抑制ではないのだから・・・・・・」

「!?」

「私が戦争の種をまくとでも思っていたのか?確かに王宮育ちで実際に生きる国民達の気持ちまで分ってやれるとは言えん。だが、せめて守りたいと思うのだよ。死んでも構わないと思う者は権力の場に立つべきではない・・・・・私はそう思う・・・・・」

 アレクシーナは窓から少し乗り出し、日の光を顔に浴びた。

「しかし、連中は・・・・・・・」

「数が多いし、強すぎる能力も持っている。リューヤ、私を守ってはくれないか?」

 アレクシーナはリューヤの方を向いて言った。

「「眺める者」と「悪魔」両方の力を使う・・・・・そう言うのですか?」

「そうはうまくいくまい・・・・・・・お前に「干渉者」、お前らが言う所の「悪魔」を狩って貰いたいのだ・・・・・それは最終的に私を守る事に繋がる。」

「連中と私をぶつけると?」

「そういう事になるな。もちろん彼らもこの事は知っている。だが、連中は連中を排除しようとするお前を放っておく事も出来んのさ。「眺める者」、「干渉者」その思惑をぬって、私は世界を救う・・・・・・」

「なるほど・・・・あなたの思惑はどうあれ、どの道私は連中を狩ります。連中はこの世界で死んだって、本当に死ぬ訳じゃない・・・・・・そんな連中に好きなようにされるのはごめんだ・・・・・・」

「私も同感だ・・・・だが、世界が滅ばぬ道を進むには彼らの手も必要なのだ。」

「今、やっている事ですね・・・・・・・」

「そうなるかな・・・・」

アレクシーナはそう言って薄っすらと笑みを浮かべる。

「どちらにせよ、俺に出来る事は一つだけ・・・・・・そういう事か・・・・・・」

 リューヤは敢えて笑って見せた。

「リューヤ・・・・・・ここを去る前に言っておく事がある。」

「?」

「リーンは生き返ったぞ・・・・・」

 無理に笑顔を作っていたリューヤの表情がスッと曇った。

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