第46話「死」
小夜子の気配が一際大きくなり、その後に萎んでいった。リューヤは異変に気付き、ミハエルに隙を見せないまま、小夜子に近づく。
「小夜子!」
リューヤが叫ぶ。小夜子が少し動いた。返事はない。だが、まだ生きているのか?
小夜子が崩れ落ち倒れたその瞬間、銃声が轟き、弾丸が小夜子の頭を直撃した。
「ミハエル!!!!!!!!!」
リューヤの瞳から涙が零れ落ち、ミハエルに向けて銃を乱射した。
「あたるものか!!!」
ミハエルの姿が消える。
「終わりだ!リューヤ!!!!!!!」
ミハエルの声が背後から聞こえる。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
リューヤの絶叫が轟く。背後をとっていたミハエルが、目に見えぬエネルギーで弾き飛ばされる。
「馬鹿な・・・・・・・・・」
ミハエルが呟く。気・・・・・・気なのか?ありえない。たとえ「眺める者」が力を貸しているとしても、このエネルギーの量はありえない。世界のバランスが崩れる。このままでは・・・・・・・
「滅べ!」
リューヤがそう言った瞬間、ミハエルはこの世界から完全に消えた。
「いけない!リューヤ!」
リーン・サンドライトが指揮官室で突然叫んだ。
「どうした?」
アレクシーナがリーンの尋常ならざる様子を見て、聞いた。
「リューヤが・・・・・・・リューヤが・・・・・・憎しみに・・・・・・・」
リーンの気配に乱れがある。
「まずい気配がしますぜ。急いだ方がいいんじゃありませんか?」
西城が言った。
『アニマル型のバイオロイドはあらかた片付いた。突入してジョー・アルシュを捕縛するのだ!』
アレクシーナが最後の指示を出し、防護服を着込む。
「私と西城は、皆と一緒にジョーの邸宅に突入する。残りの者はリーンを頼む。」
「は!」
「は!」
皆が返事をして、アレクシーナと西城が外に出る。西城はその時、持っていた能力発現の薬を飲み込んだ。
「なんだ?なんなのだ?この気配は?」
ジョー・アルシュが声をあげる。
「ミハエル!ミハエルはおらぬか?」
ジョーが声を上げるが、ミハエルは現れない。
終わり?終わりの時がきた。全てが終わる時がきたのだ。世界は終わる。私は・・・・・・私は誰だ?世界を手に入れる者・・・・・ジョー・アルシュだ!!・・・・・・違う・・・・・・違うのだ・・・・お前は・・・・・私は・・・・・世界の終わりを導く者・・・・・オメガ・エンド・ルシファー・・・・・・・それが、お前の真実の名前・・・・・・世界は・・・・終わる・・・・・神の手・・・・・・・リューヤ・アルデベータの力と、お前の力によって・・・・・・・・・私が・・・・ルシフェル?そう、人を崇める事を厭うた始まりの天使・・・・・・明けの明星・・・・・・・・七番めの天使が終わりを告げる・・・・・・・終わりを導く天使により、七番目の天使が選択する・・・・・・・・・・
「ふははははは。そうか!私はこの為に受肉したのだ。人の世界は終わり、新たな時代が来る。私の時代だ!!!!あはは。ふはは。あーーーはっはっはっは。これで、私は始まりと終わりを納めた。私が「神」となる瞬間がきたのだ!!!!!!!!!ははは。あーはっはっはっは。」
銃声が響く。突入した部隊が、部屋のドアをこじ開けた
アレクシーナの姿がドア越しに見える。
「これはこれは、アレクシーナ女王。こんなところまで、よくお越しで。」
ジョー・アルシュはアレクシーナの姿を認めて余裕をもって言った。全てを思い出したこの私に、人間ごときの何も通用する訳がない。ジョーはそう思い、見せ掛けだけでなく本当に余裕を持っていた。
「これで、終わりだ。ジョー・アルシュ!」
アレクシーナの声が響く。
「ふふふ。終わり?確かに終わりですな。七番目の天使は「滅び」を選択した。この世界は滅びる。」
「何を言ってる!」
「あなた方は大きな勘違いをしている。滅ぼすのは私・・・・・・・オメガ・エンド・ルシファーではない。」
「ルシファー?キリスト教の悪魔の名前か?」
「そう、ジョー・アルシュとは仮初めの姿に過ぎない。私の本名はオメガ・エンド・ルシファー。真実のケモノの名前だ。だが、滅ぼすのは私ではない。あくまで、神の使い・・・・・・七番目の天使・・・・・リューヤ・アルデベータだ。」
「世迷い事を!」
「そしてあなたも終わりだ。」
銃声が響く。銃弾はアレクシーナの心臓に命中した。狙撃の名手、シーザー・ホワイトが奥の壁際から狙撃をしたのだ。今度はアレクシーナの兵達の銃声が響き、シーザー・ホワイトは命あるものから、ただの物質に変わった。
「アレクシーナ様!!!!」
西城が倒れかけたアレクシーナを抱き起こす。
「撃て・・・・・・ジョーの息の根を・・・・・・」
アレクシーナの呟くような声を西城は聞き、「撃て!」と叫んだ。兵士達は全ての銃を一斉にジョーに向けて発射した。
ジョーは、体の前に手の平を広げ、「無駄だ!」と叫んだ。・・・・・・・だが、ジョー・アルシュの体に弾丸は次々とめり込み、ジョーは倒れた。
「馬鹿な・・・・・・・私の力が・・・・・そんな・・・・・私は世界の「王」に・・・・・・・・・・」
ジョー・アルシュはそれだけ呟いて息絶えた。
世界中で地震が起こり始める。それは、S国のS市でも例外ではなかった。
その中、指揮官車となったキャンピングカーの中でリーンが呟く。「リューヤ、間違えないで」と。