表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

第45話「水無月 小夜子」

「気になるのか?」

 ミハエル・コーターがリューヤに銃を向けたまま言った。

「・・・・・・・・何故・・・・・あんたが・・・・・」

 リューヤも銃を向けたままだった。お互い撃ったところでかわされる。お互いが隙を探っていた。

「言ったろう。私が、真実のケモノだと。」

「何故・・・・・・・」

 小夜子が相手の剣を受ける音が響く。まだ、やられてはいない。

「ジョーの口からも、リーン・サンドライトの口からも紫炎の口からもそれは聞いているはずだ。」

「世界が滅ばぬ為に滅ぼす・・・・そう言うのか?」

「そうだ・・・・・・・」

 ミハエルはそう決意するように口にした。リューヤが一瞬目を瞑り、開ける。隙だったはずだ。だが、ミハエルは撃たなかった。

「そんな事、俺は許せない。他の方法があるはずだ。」

「そうか?なら、何故、「神」は俺やジョー・アルシュを世界に送った?世界が本当に崩壊を止めれるならば、我々、ナンバーオブビーストは必要なかったはずだ・・・・・・・・」

「それでも、あんたがたが世界を救う為に動けば・・・・・・・こうはならなかったはずだ。」

 リューヤは振り絞るように言った。

「金に溺れ、偽りの愛に溺れ、思いやらず、思い込み、いたずらに欲望を満たしあう。それがこの世界の今の姿だ。必要な事は考えさせず、流行と音楽を与えてやればいい。そうすれば「国家の為」という言葉を使えば若者は喜んで戦争に行くだろう・・・・・・・・ヒットラーの名言だったか?」

「そんな世界なら変えればいい。人はそれ程愚かじゃない。」

 紫炎の思いが、リーンの優しさが、アレクシーナの意思が、西城の心が、そして小夜子の愛が・・・・・・リューヤに重なった。

「同じ疑問に戻るのだよ。」

 今度はミハエルが目を瞑り、開け、続けた。

「世界の人間全てに、可能性があると言うならば、何故、我々、ナンバーオブビーストが現れた?「神」は人類の全てを救う気はない・・・・・・そういうことだろう。」

「本当にそうだと言うならば、俺がこうしてここにいるという意味はなんだ。「神」とやらが、本当に人類を許さないと言うならば、何故、俺はここにいる!」

「死者の復活までさせて・・・・・・・という事か?」

「そうだ。人に・・・・・・人に可能性があるからこそ俺がここにいる。違うか!」

「ならば、可能性に賭けてみるがいい!所詮、我々とは相容れぬ。どちらが「神」の意思か?試すがいい!」

「ああ、そうするさ!」

 リューヤとミハエルが同時に引き金を引いた。





 小夜子は二人の攻撃をかわし続ける。ジークとレーは必殺の気合を込めて次々に斬り込んで来る。防御に徹さねばやられる。それ程の鋭い斬り込みだった。

小夜子は考える。守勢に回っていればいつかやられる。2対1という状況が思いの他、重い。剣を受ける事も、攻撃に転じる事も、どちらか一方には確実な隙となる。相手が達人・・・・いや、契約者でなければ、ここまで手こずる事もない。二人ともが達人を超えた超達人である。普通なら、引いて好機を待つ。だが、今回は逃げ場がない。瞬間移動に近い能力を持ったミハエルが相手では、リューヤと言えど、勝つ事は難しい。前回二対一でリューヤが一人倒せたのは、相手の油断と、リューヤの未知なる能力が発露した為だ。今回も同じ奇跡を望むには相手に油断がなさ過ぎる。だが、このまま二対一で戦えば、そう長くは持たない。


 一人はレイピア・・・・・・ならば・・・・・・・とるべき手段は一つしかないな。


 小夜子が覚悟を決めた。リューヤに生き延びると約束をした。しかし、約束は守れそうにない。これが現状で取れる最善の方法なのだ。リューヤの命、自分の命。優先すべきがどちらか?それは決まっていた。私はリューヤを守る為に生きている。それが答えだった。

 小夜子が急に攻勢に転じる。ジークに向けて一直線に全てを込めて攻勢を仕掛ける。

「死ぬ気か?」

 ジークが刀を受け止め、言った。

「ああ。」

 小夜子は受け止められた刀を剣の上を滑らせ、ジークをを斬った。浅手ではない。だが致命傷でもなかった。剣の上を滑らせた為、剣に込められた力が小夜子の方に流れる。小夜子はそのまま剣を体に受け、刀を左から右に払った。今度は致命傷である。剣の技術も刀の技術も基本的には、自分の身を守り、相手を斬る事にある。薩摩の示現流など、二撃目を考えない物もあるが、鍔迫り合いからの捨て身はありえない。骨を切らせて骨を切る。無茶苦茶な戦い方と言えた。

「お見事。」

 ジークがそう言うと同時に、レーが後ろから小夜子の急所を貫いた。

った!」

 レーの声が響いた。かわす気など最初からなかった。数瞬動ければいい。レイピアの攻撃の基本は突きである。刺し貫かれたその時が相手の動きが止まる瞬間である。小夜子はそのまま、自分ごとレーを貫いた。



すまない・・・・・リューヤ・・・・・・・約束・・・・・守れなかった・・・・・・・・よ・・・・・・



 水無月 小夜子はリューヤ・アルデベータを守る為に死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ