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第44話「予感」

 なんだ?こいつらは?これが、リューヤや小夜子の言う「悪魔の使い」なのか?

 ジョージ・L・マッケンフィールド中佐は耳から入るリーン・サンドライトの指示を聞きながら、そんな事を思った。敵兵の数は13人。突入してすぐ現れた敵兵のせいで、正門前で乱戦の模様である。人数的には互角だったし、個々の能力の高さでは若干、我々が上回っている。それでも、致命傷以外の傷では、敵はひるみもしなければ、痛みを感じている素振りもない。まるで、人間型の機械を相手にしているようだった。


 恐怖は伝染する・・・・・・・・ここでこちらが怯めば敵の思う壺だ。


『恐れず、確実に相手を破壊してください。相手は人間の形をしていますが、機械・・・・いえ、ナンバーオブビーストの人形なのですから。』

 リーン・サンドライトの指示だった。的確である。痛みも恐れも感じない戦った事のない相手を前にしての、人間の心理をよく心得ている。・・・・・・・・β能力者といったか・・・・・分かるのだな・・・・・・

 そう考え、一瞬隙が出来た。隙が出来るのを見越したように敵が背後に回っていた。かわせるのか?

 自分に向かってくるであろう殺気のような物が急に消えた。部下のロイド・エルトールが間に合っていた。ロイドに撃たれ、敵が一人沈む。

「中佐、御無事で?」

 ロイドが油断のないまま、ジョージに言った。

「すまん。油断大敵だな。」

 ジョージはそう言って微笑んだ。

「いえ、我々は勝って生き延びて、我々の世界の中で生きるのです。誰も、死なせません。」

「同感だ。悪魔ごときに人間の強き意思が砕けるはずもあるまい。かたをつけるぞ!」

「イエスサー!」

 ロイドがそう答えた瞬間、異変が起こった。闇の向こうにうごめく巨体が幾つも見える。

『来ます。敵は動物型のバイオロイド。トラ型10機、熊型5機、狼型5機です。動揺なきようお願いします。』

「次はトラと熊と狼か、動物愛護団体になんと言われるか・・・・・・・」

「ですね・・・・・・・・ですが、これはチャンスです。動物の強さはある意味我々に勝りますが、武器を器用には使用できません。」

「うむ。人が何故、地に満ちたか・・・・・・・分かっていないようだな・・・・・・敵は・・・・・・」

「動揺が心配ですが・・・・・・・」

 ジョージは頷いた。それと同時に無線からリーン・サンドライトではない声が響いた。

『私は作戦指揮官アレクシーナ・クライである。私もこの作戦に皆と同じように全てを賭けている。皆、これを打ち破れば、ジョー・アルシュの首まですぐだ。言うまでも無い事だが、全力を尽くし、生き延びろ!!動物ではなく人間がこの世界に満ちた理由を今こそ見せよ!!!』

 アレクシーナの自らを返り見ない一括に、見た目に分かるほど士気が上がった。動物を兵として使われる場合、一番恐ろしいのは動揺である。それを防ぐ為に作戦指揮官は自ら正体を明かした。敵が動物型の兵を投入した効果はそれだけで半減である。

臨時の指揮官室となったキャンピングカーの中で、アレクシーナが覆面を外し、西城の方を見た。

「名前を明かされてよかったので?」

 西城が静かに聞いた。

「最後の決戦だ。致し方あるまい。それに、国には影武者がいる。私に万が一があっても大丈夫だ。」

 アレクシーナはそう言って、窓から見える戦場を見詰めた。





「アニマル型の人形を一挙投入か・・・・・・・・任せろと言っていたが、アリス・・・・・・やはりお前も負ける為にいるのだな・・・・・・・」

 ミハエルがリューヤから8メートル程離れた地点で呟いた。リューヤ達の裏門からの侵入を少し許した場所である。裏門の内側には、ミハエル達3人と、リューヤと小夜子しかいない。

「我々が負けると言うのか?」

 レーが、懐中にある短剣に手をやったまま聞く。

「補助ではなく、動物兵を主力にしたのは誤りであろう。負けたくなければ、この場を早急に片付け、援軍に行くしかあるまい。」

 ジークが剣先を小夜子の方に向けたまま言った。

「・・・・・・・リューヤは俺に任せて貰おう。二対一、ミナヅキを仕留められるな?」

「誰に言っている。」レーが言い、「剣か刀か雌雄を決したかったが、そうもいくまい。」ジークが続けた。

「まず、分断する。俺に任せろ。」

 ミハエルがそう言った後、その場からミハエルが消えた。背後に気配を感じると同時にリューヤは横へ転がり、小夜子は後ろに刀を振った。ミハエルは銃弾を発射できずかわすに留まった。

「さすがだ、そちらも、何度も同じ手は食わないという事か?」

 ミハエルが目を細め小夜子を見詰める。リューヤが撃つ隙はない。

「毎度毎度、真後ろに現れるなら対処は楽だ。」

「ダンスを楽しみたいところだが、生憎あいにく、私のパートナーはリューヤでね。」

 ミハエルが小夜子から視線を移し、リューヤに銃口を向けた。その隙を見逃さず、小夜子が刀を振ろうとした瞬間、横から殺気が走り、小夜子はかわす。短剣が小夜子のいた地面に突き刺さる。

「お前の相手は私と・・・・・」

「私だ!」

 ジークの剣が小夜子に降りかかり、小夜子が刀で受け止める。

 二人の相手は無理だ・・・・・・・・・

 小夜子は死を予感した。


 

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