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第41話「5人のナンバーズ」

 漆黒の闇の中、蝋燭がともる。この部屋に電気製品はない。6人の、いや、今は5人になってしまったが、ジョーアルシュを除くナンバーオブビーストの会合の場だった。この場所は地下にある。風も吹き抜けない密閉された地下室である。

「連中に何人か新しい味方がついたらしいが?」

 レー・ルーク・シェペシは、静かに言った。ミハエルがレー・ルーク・シェペシの方を向く。

「アメリカから5人、ロシアから3人、ヨーロッパ連合から3人、アルテイルから1人、計12人だな。兵として訓練された能力者は存外少ない。」

「12人か・・・・・・人数的には我々に勝る、そういう事か・・・・・・・」

 シーザー・ホワイトが苦々しげに言う。

「問題はないでしょう。天然の能力者とは言え、リューヤや小夜子に勝るとは思えない。「人形」を20体も用意してやれば、十分あしらえるわ。もちろん、一般の警備兵もいる訳だし。」

 紅一点のアリス・メーラーが語る。

「この世界に悪影響を与えない、「人形」の数はいくつだったか?」

 ジーク・エ・ドルナミスが蝋燭の火を悩ましげに見詰めながら聞いた。

「33体、それ以上は、この世界のバランスを崩す恐れがある。」

 真っ黒な衣装に包まれたミハエルが、静かに喋った。

「33体も用意すれば、確実に追い払えよう。」

 ジークはミハエルの方を向く。

「いや、油断は禁物だ。恐らく作戦の指揮は能力者、恐らくはリーン・サンドライトが取るはずだ。「人形」では厳しいかもしれん。」

 アリス・メーラーもミハエルの方を向いた。

「私が「人形」の指揮をとれば、裏は取れると思うわ。個々の性能に差があるとは言え、それは人数が補ってくれる。私がβ能力者として、リーン・サンドライトに遅れを取っているとは思えないわ。それに、「人形」とは違って、人はミスをする。」

「では、表門はシーザーとアリスにまかせる。裏門に私とジーク、そして、レーが布陣する。」

「我々が裏門に配置する意味は?」

 ジークがいぶかしげな表情をする。

「敵は正面を囮に、裏から最も戦力の高いリューヤと小夜子を突入させようとするはずだ。」

「裏門が本命という事?」

「いや、アレクシーナの頭の中では、恐らく陽動だろう。限られた人数の中での陽動故に、最も戦力の高いリューヤと小夜子をもってくる。リーンの指示なしに動いて作戦を遂行して、なお助かる可能性があるのはリューヤと小夜子のペアだけだ。正攻法で道を開くのが好きなアレクシーナは、必ずこの作戦を選んでくる。」

「しかし、他の連中も作戦の立案に加わるのでは?」

「・・・・・・・・まず、連中にとっては他国の内部で起こす動きだ、軍を潜入させるには戦争が必要だ。故に、あくまで隠密、能力者だけしか、作戦には参入させれない。他の協力者がいるとしてもサポートどまりだな・・・・・・・・・そして、各個で動いた場合は、我々5人に一人一人始末される可能性がある。故に、バラバラに潜入させるという手段もあり得ない。バラバラに潜入させた場合、人数の有利、この場合天然能力者の数だが、それが無効になる可能性がある。その愚は犯すまい。人数は限られているし、軍事的訓練を受けた能力者は補充がきき辛いからな。また、そういう戦略を選び易いように、わざわざアリス・メーラーの名前をちらつかせて、防備が完全であると知らせてあるわけだ。・・・・・・・あと、選びうる作戦は、小隊に分けてバラバラに分けて潜入する作戦だが、この場合は我々の監視とトラップを潜り抜ける事はまず不可能だ。アレクシーナもそれくらいの事は見通しているだろう。故に、まず、正面と裏門からの突破・・・・・・この戦略をとってくる。他にも多少の陽動はあるかもしれないがな・・・・・・・・」

「空からの潜入はあり得ないかしら?」

 アリスが唐突に言った。

「空から潜入?まあ、警戒はしているがまずあり得ない。空から来る戦略は、相手に気付かれない場合に多少有効だ。だが、今回は我々が気配を拾う。察知されれば無抵抗のまま打ち落とされる。アレクシーナが能力者の存在を知って、更に取る戦略とは思えない。こちらが、β能力者を配置して、ある程度の情報を集めている事はアレクシーナも知っているはずだ。ならば、リスクの高すぎる戦略は恐らくとるまい・・・・・・・・」

「地下からの潜入も同様にあり得ないという事か・・・・・・・」

 ジークが口を開く。

「奇策は予想外だから効果がある。だが、今回は時間も無く、気配も読まれる。お互いの配置出来る駒の数からしても、正面からの抗争と陽動、裏面からの潜入と陽動、これがベストになると思う。私がアレクシーナでもそうする。」

「側面は厳重すぎるトラップで囲まれているな。ジョーの仕事の性質上、表口と裏口は通れるようにしておかなければならない。そこを突いて来る・・・・・・そういう読みという事か・・・・・・・・・」

 ジークが納得のいった表情で頷く。

「ジョーは事が終わるまで、病欠と言う理由で休ませておいてもいい。そして、表口も裏口も完全なトラップで囲む。そうすれば、決着は遅れるだろう。こと、ここまで来れば、決着を遅らせるだけで、ジョーにとっては有利な展開になる・・・・・・だが・・・・・・・・」

「分かっているさ。決着をつけねばならんのだろう?」

 シーザーがそう言って薄笑いを浮かべた。

「そういう事だ。リューヤ・アルデベータとジョー・アルシュ・・・・・・いや、リューヤ・アルデベータとナンバーオブビースト、その決着はつけねばならない。最後の戦いだ。皆、それぞれの任務をきちんと果たしてくれ。」

「分かっている。」

「イエス。」

「健闘を!」

「了解」

 5人はそこで揃って頷いた。

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