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第3話「ナンバーオブビースト」

三人の男女が講堂の中にいた。一人は少女、紫炎教の教祖紫炎こと、矢口 涼子。少女の前に立つ青年は白面の美青年で、見たことのない顔だった。そして、講堂の出入り口付近の壁にもたれ掛っている青年がいた。この物語の主人公リューヤ・アルデベータである。

「やはり、私はアレクシーナ女王に反旗を翻す者なのでしょうか・・・・・」

「そうであり、そうでないと言えます。」

「それは私が・・・・・・」

 白面の美青年はそこで言葉を止めた。言うのも禍々しい、青年はそう考えていた。

「あなたが、何に苦しみ何を考えているかは分ります。しかし、あなたの苦しみはやはりあなたにしか分らないのです。」

 紫炎は冷静に言った。

「私に他の道はないのでしょうか?私がそうであるならば、私が死ねばあるいはそれを避けれるのでは・・・・と」

「それは思い上がりです・・・・・・そもそも、あなたが何故そのような宿命を背負う事となったかを考えるべきでしょう・・・・・それはあなた一人の問題でしょうか?あなたがそうである事は、何故でしょうか?あなたが破壊者・・・・いえ、構築の為の破壊を行うのはそれが必要だからです。そもそも、人間その物に間違いがあり罪があるのです。」

「・・・・・・・・しかし・・・・・・・・・私は・・・・・・・・・」

「まず・・・・落ち着いて下さい・・・・・その事はこの世界の話ではありません。この世界でのあなたの役割は別であり、違うのです。それを信じてください。」

「どういう事ですか?」

 男の右腕に巻かれたバンダナが落ちる・・・・・・・・・。その腕には「666」と見える痣があった。

「どういう事か・・・・・それはあなたにも私にも分りません・・・・・ただ、この運命は前の運命とは違うのです。詳しくは言えませんが、あなたがこの世界で担う役割は変わってしまった・・・・・ただ、それによって主があなたを地獄へ送る事はありません。それだけは言えます。」

「何故、そんな事が分るのです!もし、私が預言に書かれた者ならば・・・・・私は人類を罪悪の海へ引き込む存在・・・・・・・とても許されるとは思えない・・・・・・・・」

「では、聞きますがその666の意味は何でしょうか?」

「666は人の数字でありケモノの数字であると・・・・・・そう書かれています。」

「6というのはそもそも人間を表している・・・・・何故なら主は6日目に人間を作られたからです。曜日が7日で区切られているのも主が7日で世界を作られたから、それは知っていますね。」

「聖書にはそう書かれています・・・・・・・・・」

「人間をケモノと捉えるのは何故でしょうか?」

「人間は愚かで罪深い存在だから?」

「可であり否であると言えるでしょう。人間はあなたが思っている程愚かではありません。人間をケモノと捉え、神と一番違う点はどこでしょうか?」

「なんでしょうか・・・・・?」

「不滅性・・・・・つまり不死であるかどうかという問題です。ようするに寿命の問題です。その問題がクリアされれば、人間はまた別の道を歩みます。それを可能にするのは知性であり、本能ではない。それをよく覚えておかれた方がよいと思います。」

「本能に負けず、知性を持てと・・・・・・・・・・」

「本能をも知性で凌駕する時、あなたには別の可能性が用意されています。覇欲、性欲、食欲、それらは常にあなたの周りで蠢いています。しかし、それら全てを抑制する事は出来ても失くす事は不可能です。」

「では、どうすれば・・・・・・・・・」

「本能は全て悪でしょうか?」

「いえ、生きる為に必要な物とも私は考えますが。」

「失ってはならない。しかし溺れてもならない。それがあなたに要求される事です。そして・・・・・・あなたに訪れるその運命の日・・・・・・・・どちらを選ぶかで、この世界の命運は大きく変わる。その時に、あなたは「愛」という形のない物を選ばなければなりません・・・・・・・・その時あなたが、そうしない事を選ぶ事は決まっています・・・・・・それをあなたは変えなければならないのです。それが出来ますか?」

「何の事だか・・・・・・・・」

「先の話なのです・・・・・・・・ほうっておけばあなたは「愛」を選ばない。」

「「愛」とは・・・・・・なんなのですか・・・・・・・」

「抱きしめ受け止める事・・・・・・それが愛の原型なのです。「愛」がある事、それを信じて下さい。私に言える事はこれだけです。それ以上の事を言う事を私は許されていない・・・・・・」

「分りました・・・・・・・・・・」

 男はそう言って、紫炎の前を去り、出入り口へと向かった。白面の美青年はリューヤに礼をして講堂を後にした。

「いいのか?あれで・・・・・・」

リューヤは紫炎に向かって、そう言い放った。

「どうでしょうか?彼の運命は大きく変わってしまいました。その辿る結末は・・・・・・どちらにしろ悲惨な物なのです・・・・・・彼に同情を禁じえない・・・・・ですが、あなたが関与するならば、もしかすると・・・・・・・」

「俺はリーンを救えなかった・・・・・・・運命だかなんだか知らないが、そんな物にこの世界を好きにはさせない・・・・・・・」

「どのような結末であろうと・・・・・・あなたはあなたの信じる道を行ってください。あなたに言える事も私には僅かしかない・・・・・私は私をこのように作った創造の主を恨みます・・・・・・・私には関与は出来ても変える事を許されていない・・・・・・・私は・・・只の助言者なのでしょうか・・・・」

「あんたのおかげで救われる者もいる。諦めるのはまだ早い・・・・・・・俺は・・・・・」

 リューヤはそこで言葉を区切った。紫炎がリューヤの横顔を見詰める。

リューヤは紫炎と目を合わせようとしない。

「俺は・・・・・・最後まで戦う!!」

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