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第11話「去就」

アレクシーナが会見の場に立った。絵空事のような事をラスア・エラーラは事実の様に発表した。政府関係者が軍事超能力などを公式に認めるのは初めての事でもあって、メディアは一挙に色めきたっていた。

「まず、最初に言っておかなければならない事がある。」

 アレクシーナは静かな面持ちで言った。

「ラスア・エラーラの言っている事の一部は本当だ。」

 色めき立った記者達がドヨドヨと声を上げる。

「あなたが、世界征服する為に、世界平和統一連合を立ち上げたというのは本当ですか!?」

 一人の記者が大声で言った。

「話は最期まで聞くものだ。」

 アレクシーナはそう言ってフと笑った。

「我々・・・・・いや、我が国は確かにかつて超能力者の研究を行っていた・・・・・そして、その成功例がラスアの上げた、リーンとリューヤ二人の人物だ・・・・・・・ただな・・・・・・その人体実験を私は快く思っていなかった。私が王位を継承してからは、それらの研究は破棄し、研究所はその実験の失敗者の回復に全力を注いでいるというのが現状だ。私が超能力者を利用し王位を得、世界征服を企んでいるなどという事はでっち上げに過ぎない。」

「超能力・・・・・・とやらを研究されていた事は認められるのですね?」

 アレクシーナが頷く。

「そして、私がやろうとしている事は世界征服に見えるやもしれない。だが、現状、地球上の問題を考えるには国家を超えたレベルでの真の意味での話し合いや規制が必要になってくるのも事実だ。私はそのシステムを構築したかっただけだ・・・・・・・・そのめどおしもついた今、私が世界平和統一連合の議長をやる意味もあまりない。」

「ちょ・・・・ちょっと待ってください・・・・・私が得た資料ではまだそこまで平和連合は機能出来ていないと思えるんですが・・・・」

「確かにな・・・・・・・だが・・・・・」

アレクシーナは一拍入れた。

「実は議会に提出する法案は既に作成してあるのだ。それは、平和連合のシステマティックな面に特化されていて、それが通ればアメリカ並みのまとまりを見せるはずだ。」

「既にシステムは出来ていると?」

「議会で承認されればそうだ。もちろん根を詰めて議論し改正はして貰わなければならないが・・・・・・・・・」

 記者団に笑みが戻った。アレクシーナのうまさであろうか?

「先にも言った通り、こうなった以上、私は議長の座を降りるつもりだ。

私に世界征服の野心などない事をそれをもって明白にしよう。世界の統合と世界の征服は同じように見えるかもしれない。だが、私の思いはこの世界の真の平和と発展だ。それをはっきりとさせておきたい。そして、辞任を表明して、なおやっておく最後の仕事がある。それをこの場で御説明したい。」

 記者達の注目が集まる。

「まず、大仰に振ったが、私の思いから説明せねばなるまい・・・・・」

 アレクシーナが一息つく。

「私は政治の仕事に携わって長いのだが、この世界にある今一番の問題はなんだと思う?・・・・・・・貧困?イエス、温暖化?イエス、戦争?イエス・・・・・様々な問題が私の中で駆け巡ってきた・・・・・・」

 アレクシーナは会見席に置かれたコップを口にあて、ゆっくりとした所作でコップを戻した。

「そして、おおよそ全ての問題は環境とエネルギーと食料の問題に纏められると理解した。それらの問題を平和的に解決する。それが平和連合を発起した元々の意味だった・・・・・・・・」

 アレクシーナが立ち上がり、声を大にした。

「これを聞いている世界平和統一連合の皆さん、どうか私の意志を継いでくれ。途中でドロップアウトせざるを得ない私の最期の望みだ・・・・・・私のなし得なかった理想と平和を・・・・・・・皆さんの手で・・・・・実現して欲しい・・・・・・」

 アレクシーナがそう訴えかけると拍手が起こった。記者達も馬鹿ではない。だが、今アレクシーナが語った言葉が真実である事は分った。嘘か真実か、それを見分けるのは簡単ではない。だが、アレクシーナの真摯な姿勢は確かに記者の胸を打ったのだ。疑い監視する事もまた、記者の仕事だ。書かねばならない記事は公平性を求められる。それでも、アレクシーナの思いは人としての記者の胸を打った。

 アレクシーナは立ち上がり、軽く手を挙げて去った。拍手は鳴り止まない。自らの去就を賭けたアレクシーナの思いは今だけは、確かに伝わっていた。

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